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「宙航管制局から? 通行規制が解除されたのか?」
もしも解除の連絡ならば、エスネムはもったい付けたりせずにそのことを真っ先に言うだろう、と大地は思った。
それが大地とランスの待っている事項なのだから。漠然とした神経のささくれを感じながら、それが期待とは真逆の連絡だからかもしれないことを想定しつつ大地は訊ねた。
<残念です。数日延長になりました>
エスネムの“残念”は社交辞令ではないかと勘繰りたくなる。
「分かった。また変化があれば教えてくれ」
ランスは特に詳細を聞くでもなくエスネムに告げた。
<了解しました>
「公爵令嬢の私兵たちだけじゃなく、こっちまで足止め、か」
他人ごとに巻き込まれるのは御免こうむりたかったはずだ。
それなのに特別に今すぐ宇宙の旅に戻りたい、という思いにとらわれないのは、何となく自分たちが巻き込まれそうになっている現実に対する、根っからの好奇心だろうか。
あの女性が異星人である、ということも関係しているかもしれない。セルクク星に対する干渉が禁じられているからには、自分たちと同じ環境下にあるあの女性には、規範を破る立場でいてもらいたくはないと思う。たとえそれが見ず知らず、通りがかりの人間でも、だ。そして、おそらくはセルクク星のために。
彼女が何を成そうとしているのかは定かではない。ただ助けることになった関係上、もうすでに乗りかかっているとも言える。
「よくあることさ」
ランスが淡々と言った。
本当にそうなのだろう。たまたまうまくいったケースを標準だと認識することは危険であると学習すべきだ。すべてが順調に立ち行くことを前提にしてはいけないのだ。トラブルやイレギュラーはつきものだと思っていた方が後々の対処もしやすい。もちろん、無ければ無いに越したことはないのだが。
「ならクアルニィグを満喫しようか。と言っても彼らの立ち位置を把握しないとな」
大地はまだ予感でしかないそのことについて、心の構えを整えることにした。
環境の変化に対する順応性は高い方だと自負している。それにいざとなればさっさとこの星を後にすればいい。急に姿を消したとしても、旅行人ならばたいした話題にもならない。
「じゃあ、少し整理してみようか」
ランスを見るとまるで余裕の態度だ。なかなかに心強い。
「令嬢の私兵が逃げ出したなら、何かひと悶着あるかもしれない」
大地はもう一度モタルドクを注視した。
小さな人々は、どうやら国軍を撒いたらしい。
「令嬢が捕まったときのイリアは自分の身を隠すように出て行ったよな」
ランスの言葉にあの状況を思い出す。
「確かに制服組の注意を惹いてはいなかったが、イリアはそこに自分がいたことを隠すような行動だったと思う。ということは、国王側にとってはイリアは反逆者と目される令嬢側に属するのだろう」
「異星人女性は国王側から逃げていた。そしてイリアと落ち合った。イリアは異星人女性を信用するに足るのかどうかを訊ねてきた」
大地はランスと互いにうなずき合った。




