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「身長、体形、骨格、かな」
「はは。俺とは見ているところが違うんだな」
大地は半ばランスの視点に関心を抱きながら、イリアの見た目にまんまと惑わされてしまった自分を反省した。
ランスは常に客観的視点で物事を見ている、とつくづく思う。大地は人を覚えるのに、相手の雰囲気を記憶してしまうことを自分自身やっかいに思っていた。服装が違ったり、場所が変わると分からないこともしばしばだ。一度見たら忘れない、という能力の持ち主が羨ましい。
「それにしても、どういう関係なんだろうな。商人と異星人と」
しかしそれはそれとして、大地が続けた。
イリアが大地たちにわざわざ異星人女性とのいきさつを訊ねてきたのには、それなりに理由があってのことだろう。もちろん、彼女が宇宙連合の憲章を遵守しているなら、自分の正体を明かしているはずはなく、もしそうなら、セルククの人間との間にどんな因果を成そうとしているのだろう。
「さあな。興味があるなら謎解きでもするか?」
ランスが笑い掛けた。
「いや、これから先関わらなくていいのなら別にいいんだ」
大地は肩をすくめてみせた。
「エスネムに映像を送らせて様子見しようか? 俺はちょっとフロントへ行ってくる」
「うん?」
「夕食は部屋へ運ばせよう。それまでは、無いとは思うが訪問者があっても通すなと」
「了解」
大地はランスを送り出し、誰が部屋の前を通るか分からないので、念のためランスが室内に戻ってくるまで窓の外を眺めていた。
明るい陽射しに川面がきらきらと輝いている。遠くの山々は緑濃い中にも葉色の変化が出始めて見える。何の情報もなく、ただこうしている分には何とのどかで美しい風景だろう。
ほどなくランスが戻ってきた。
「さて、エスネムに仕事をしてもらおうか」
部屋の鍵を掛け、ランスが言った。
大地は開いていたカーテンを閉めると、椅子を窓際から部屋の中ほどに寄せた。
「エスネム。例の座標をもう一度見せてくれ」
<了解>
ランスが自分のモタルドクを起動させるとすぐさま、透明なのにそこに何かが存在していることが明らかに感じ取れる領域に、宇宙からの映像が投影された。
まるで縮尺された人間がそこに存在しているかのように映る。ツェイン・マルギアナの兵士たちにはランスが昼に見た時と変化がないようで、一部が見回りを、一部が武術の訓練をしている。
モタルドクの表示領域は、こちら側から操作可能になっている。ランスが無作為にではなく、ある一つの意思を以て座標を移動させた。
「お!」
「ほほう」
二人とも同時に小さく声を上げた。
おそらく公爵令嬢の側だと思われる兵士たちが、今まさに包囲している側、国軍の監視をかいくぐり、足止めされている野営地から逃げ出そうとしてるところが映し出されていた。
「何かが起こりそうな予感がするなあ」
大地はランスの方に一度視線を投げ掛けてからつぶやいた。
セルクク星からは明日明後日には発つことになるはずだが、その間に大地たちへの予期せぬ訪問者がやってこないとも限らない。
「それは経験則か?」
ランスは、大地が何かにつけて捲き込まれ体質であることに対して、偶然やらでは収めたくないらしく、どうやら法則を見出したいと考えているようだ。
「まあね。どうしても、イリアと令嬢との関係が気になってしょうがない」
「そしてイリアと異星人との関係、曳いては令嬢と異星人との関係、か」
どうやら無関係ではなさそうだという大地の第六感を、ランスは代弁した。
その言葉に、大地はランスを正面から見つめてしっかりと頷いた。
<大地、ランス、たった今宙航管制局から連絡が入りました>
エスネムの音声が届いた。




