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 宇宙を股にかける旅は大地にとってこれが初めてとなる。宇宙連合やワープ航路、干渉を禁じられた惑星などといった様々な款目をランス、あるいはエスネムもしくは大地の左手首に装着されたマルチデバイス・オグヌイからの情報に頼るしかない。


「ワープ航路は言ってみれば地上での高速道路のようなものだ。その航路上や近い場所をまだ整備の対象になっていないものすごく長い楕円軌道を持つ小惑星なんかが通過することがある。ほかにも突発的なさまざまな要因によって磁場の乱れが危惧されるときは、一時的に航行が規制されるのさ」

 ランスはそう言うと、コントロールルームの立体映像の表示領域であるモタルドクを起動させた。


 透明なのにゆらゆらとしていて何かの存在を感じさせるその領域の中に、宇宙空間に浮かぶ巨大な仮想のゲートが現れた。宙航管制局から送られてきた映像だろう。


 今そのゲートは淡く赤くぼんやりと光る反射を見せている。地球の高速道路で言うならジャンクションやインターチェンジの役割を担うそのゲートは、ここから先の航行を一時禁止する告知をしていた。


 現在シヴァン・アルレットはワープ航路内を航行中だが、次のゲートでいったんこの航路を降りる必要に迫られたということだ。


「そうか。どのくらい足止めされる?」

 大地はエスネムに尋ねた。


<今回の予測では2、3日といったところです。どうしますか?>

「どうする?」

 大地はエスネムに訊ねられた意味をランスに訊ねた。


「近くの駐船ポートに係留して停泊している間船内で時間をつぶすか、星に降りるか、どっちがいい?」

 シヴァン・アルレットの正面窓遠くに、赤くぼんやりと灯る点が見え始め、インターチェンジの役割を果たすゲートが次第にその姿を大きくしていく。自動運転中の船はゆるやかに速度を落としていく。


「任せるよ。俺にはどっちがいいかなんてまだわからない」

 大地は決定権をランスに譲り、目の前に迫りくる、正確には自分たちがそちらへ向かっているのだが、実体のない仮想ゲートの巨大な姿を興味深げに見つめた。


「滞在できそうな星はあるのか?」

 ランスはエスネムに訊ねた。


<一番近いところで、セルクク星です。ここはラメイクの監視対象の星です>

「なるほど。序盤で早くも足止めとはついてないが、まあ観光も兼ねてセルクク星に降りようか」

「観光ね。『ラメイクの監視対象』とは?」

「宇宙連合の社会経済評議会が今後の動向をチェックしている星のことさ。セルクク星はまだ人類を宇宙に送り出してはいないんだが、近いうちに進出を果たすだろうという発展的位置にあるんだ。特別に許可された者以外は星への干渉が規制されているのさ」


 ランスの説明から推測するに、星に降りることは可能だが、異星人であることを知られてはならないということなのだろうか。それはそれで興味深い。大地は、ついこの間まで自分こそがセルクク星の人々の立場に近いのであったのだろうことを思うと、なんとも皮肉なことだと苦笑いするしかなかった。


 仮想ゲートの巨大なほの赤い円周はあっという間に近づき、そして視界のはるか外側へと消え去った。


<降路ゲート通過します>

 エスネムが状況を報告する。


「座って」

 ランスが大地に向かって、着座するようにと促した。


 すぐに大地にはその理由が解った。シヴァン・アルレットがワープ航路を降り、ゲートを通り抜ける間、なんとも言えない居心地の悪さが大地の全身に広がったからだ。もし立っていたら、ふらついてしまったかもしれない。なんというか、船全体の周囲の密度が変わったとでも言えばいいのだろうか。ゴム手袋をつけた手と、それを水の中に深く突っ込んだ時との違いのような感覚だ。しかし、ひどい船酔いよりはずいぶんとましなような気がした。いずれ慣れるだろうと思えた。そんなに長いことかからずに。



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