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 ツィー、チッ、チッ、チッ、ツィー、チッ。


 この星に降り立って最初に聞いた鳥の声がする。


 大地の朝は、高く響くさえずりによってもたらされた。横たわったまま大きく伸びをして、それからくるりと身体を回転させ、部屋の中央を向く。ランスはもう起きていた。


「おはよう」

「おはよう。早いな」

 それから大地は身体を起こし、両の手で髪の毛をかき上げた。すううっと息を吸い、静かに吐く。そして、自分自身に活を入れるかのように、大地は上掛けをさっと除けると、トンっとベッドを降りた。


「いい天気だ」

「うん」

 ──エスネムの言ったとおりだ。


 ランスは、椅子を窓際に寄せ外を眺めている。彼もまたあまり物言わぬタイプだが、大地にとってそれは全く苦にならない。お互いに、お互いが黙っていても居心地の悪さを覚えることなく過ごせるのは、相性がいい、という言葉だけで十分に理解が得られるだろうか。一緒にいても不必要に気を配らなくてもいいのは、気分的にものすごく楽だ。


 大地は、座標も知らぬ宇宙で助けてもらったことへの感謝と同時に、行動を共にする伴侶としてランスを遣わしてくれた()()に、深く感謝した。


 身支度を整え終わった頃にタイミングを計っていたとでもいうようにドアの向こうでシャルジュがノックと共に声を上げた。


「おはよう! ランスさん、ダイチさん」

「入れよ」

 ランスがシャルジュを招き入れる。


 昨日と違って、シャルジュは少しばかりおしゃれに気を配ったようだ。てかてかになった髪の毛が綺麗になでつけられている。


「朝食はがっつり派? 軽く派?」

 先ずは慣習のチェックが入った。ランスではなく、大地に向かって訊ねる。


「そうだな、手軽に済まそうか」

 日常──地球での──とは違い、旅行の時というのは妙に食事と食事の間隔が短く思える。シヴァン・アルレットでの生活が始まってからこっち、どうしても朝は食欲がわかない。いかにトレーニングを日課として欠かさないとしても、大地に課せられた仕事は航海日誌をつけることだけだ。対人関係という点も含め、消費カロリーは各段に減っている。かつては朝食はしっかり派だった大地も、今ではすっかり軽く済ませることが多くなった。


「了解。さくっといこう。ツェインの一座の興行が始まるまでは近場で観覧だ。準備はできてるかい?」

「いつでも」

 ランスは支度のできたばかりの大地ににやりと笑みを向けてからシャルジュに返答した。


 もらった鑑賞券の公演は正午頃に終わるような時間帯らしい。午前と午後の二回だけで、夜に開催しないのは、それなりの理由があるのだろうか。


「よっしゃ、ではお兄ぃさんがた、どうぞ」

 シャルジュはずいぶんと機嫌良さそうだ。先に立つ足取りが軽い。


 フランスパンのように細長い、といってももっとずっと細くて堅くない、どちらかというとロールパンの生地を何十枚もの層にしたものに、数種類の具材を並べて包み込んで焼き上げたようなパンと、ほろ苦さと後味の爽快感が残るソフトドリンクとで朝食にする。


 周囲を見回すと、若い世代と思われる人々が同じものを歩きながら食している。


「お味はどう?」

 どうやらシャルジュもそういった感覚を受け入れている世代なのだろう。気に入って欲しいという思いがシャルジュの顔に滲んでいる。


「いけてる」

 大地は答えた。ファストフード系は嫌いじゃないし、なんなら時々無性に食べたくなることもある。


「良かった」

 シャルジュは嬉しそうに、ソフトドリンクを飲んだ。


 食べ終えて、公園のような場所で手を洗い、大地たちはシャルジュにお任せで、劇場へ向けて一筆書きをするようにコースを取り、あちらこちらを見て回った。


 クアルニィグの街並みはとても活気にあふれている。世界中のあちらこちらから集められた美しいもの、珍しいものたちが、そこここに存在感たっぷりにある。日がな一日見ていたって飽きることを知らないはずだし、一日どころか何日もかかりそうだ。


 何もかもが興味の対象ではあったけれど、大地がもし本当の旅行をしていて、誰かや自分にお土産を買うとしたら、などという視点で眺めるのも面白かった。そして、本当にそうならこれは買いだ、と思うようなものもいくつかあった。



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