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 噴水のある広場まで出て、街道から王宮に向けて続く大きな通りを東へと向かう。色合いのせいだろうか、店先の灯が不思議に温かい。


 クアルニィグの季節は、大地の体感で判断するに晩夏から初秋にかけてといったところか。夜を迎え、外套がなければ少しばかり寒さが気になるかもしれない。目的の場所へ着くまでの間、シャルジュは特に真剣な返答を求めるでもない他愛もない話を投げかけてきては間をもたせ、それ以外はガイド役に徹していた。


 王宮をぐるりと取り囲む城壁が見えてきた。行き交う人の流れがすでに歓楽街のそれだ。今宵、すでに街は夜の顔へと変貌をとげつつある。賑やかで、華やかで、願望と期待との入り混じった刹那の始まりだ。


「お兄ぃさん方はしばらく滞在するのかい?」

 シャルジュが、これからのガイドプランをどう練るのかを算段するためらしく尋ねた。


「二、三日ってとこかな。決まってないけどな」

 大地が答えた。


 ワープ航路の通行止めの解除についてはエスネムからの連絡待ちで、特殊な事情がない限りは連絡を受けた後の最も早い便で宙船ポートへ戻ることになる。もちろんそこいら辺の事情はシャルジュには話すことはできないのだが。


「そっか。じゃあゆっくり楽しんでもらうとするか」

 シャルジュがまだ十代後半になったばかりか、いや、見た目で判断はできはしないけれど、そのくらいの若さで自分の仕事に対してこうも真摯であることが大地の心に強く響いた。


「ああ、任せるよ。なんなら滞在中の専属ガイドになるか?」

 ランスが言った。まるで大地の心の動きを察知したとでもいうかのタイミングだ。


「えっ? マジっすか? うん! はい! ぜひ!」

 仕事を得たことに対してだろうか、それとも自分というものが評価されたらしいことに対してだろうか、シャルジュが周囲のすべての灯りを反射させたかと思うほどのきらきらした目で答えた。


「俺はランス、こっちが大地、とりあえず明後日まで頼むぜ。食事つきでどうだ?」

「かしこまり! 毎度あり!」

 この素直さが実にいい。シャルジュを見て大地が口元で笑う。


 そんなやり取りをしているうちに目的の場所に着いたらしい。


 そこは、大地の語彙でいうならショッピングモールのフードコートエリアと、縁日の露店と、観光地の屋台村、それらすべてがごちゃ混ぜになったような区画だった。かなりの広さを確保した自由席はベンチだったりテーブルだったり、小上がりのようだったりと実に多彩な座席を備えている。小さなまとまりごとに、カーポートのようなと言って悪ければ、吾妻屋やアーケード状の屋根を持つ。


 おそらくだが、それらの什器は各国からの輸入品であろうと思われる。もちろん、クアルニィグ産のものもあるだろう。見事なまでにありとあらゆる系統、センス、主張、感性にあふれている。まるで万博の什器見本市のようだ。


 クアルニィグらしさ、とはこういう意味なのか、と大地は思った。


 交易が主軸である、豊かで自由な国、クアルニィグ。ここから先は海路となるらしいのだが、交易範囲のおよそ中間点に位置するこの国は、あまたの文化の集積地であるらしかった。


「ここではいろんな国の料理が食べられる。お酒もね。アッシルの火酒はやめといた方がいいかもだけど」

「クアルニィグの名物料理はなんなんだ?」

「地元なら海の幸だね。生でも煮るでも、焼くでもなんでもありだ」

 海の幸。大地はふと懐かしさを覚えた。


「よし、じゃあ、魚料理でいこう」

 ランスにたずねたところで結局いつも大地が決めることになる。思いついたまま答えた。


「了解! メニューを持ってくるから、好きなとこに席を取ってて!」

 そう言ってシャルジュは調理場のある方へと駆けて行った。


 すぐ近くに空きのあったテーブル席に陣取る。天板は美しい木目がそのまま生かされているが、どのくらいの時を経ればこのような模様の取り方ができるのだろうという巨木が使われている。


「シャルジュにいつもいてもらった方が、目立たなそうな気がしてな」

 向かい合って座るとすぐに、ランスが大地に言った。

「ああ、俺もそう思う」

 大地はうなずいた。



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