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3話後編 人権キャラ 対 黒ノ手




夢を見た。

とても小さい頃の夢を。地元の夏祭りでタカと一緒に縁日を回っている。笛に太鼓に三味線の音と喧騒。目に映るもの全部がキラキラ光っていて、それは普段味わえない世界で毎年参加しては興奮していたな。

いつからだったか、なんとも思わなくなったのは…。


夢の中の世界はコロコロと変わっていく、今度は神社の境内へ場面が移る。ふたりは社へ続く長い階段に座って夜空を眺めていた。そろそろだなって、タカが言う。

確か、最後の花火を見るために山を登ったんだ。

俺の視点は第三者目線で2人を捉えており、後ろから俺たちを見ている感じだ。あのとき神社には2人以外誰もいなかったような。

だが社の階段からの視点だ。なんでここに来て変わったんだ。いや、夢だからかもしれない。


まぁ、いいか。あの時の花火をもう一度見ることに集中しよう。

未だに視点は変わらないが花火が上がり始めた。この地区の習わしで花火の初弾は大玉の赤と決まっている。

それから次々に色鮮やかな花火が打ち上がり、今年で最後もあって20分間止まらずに咲き続けた。

最後の花火が上がったあと、視点が動く。

そして、動いた直後に篁浩輔の目線へもどった。


俺は自分の手がピクリと動いた感触を覚える。

夢じゃない!?じゃあ、後ろのあれ…。

俺が振り向くより先に声が聞こえた。


「坊や、綺麗だったね。締めくくるに素晴らしいものだったよ。」


俺は声の主の方を見る。


「ノワール!?」


「ノワール?誰だいその名前は、君は忘れてしまったのかな、この地の土地神を、悲しいね。まるで今日の花火のよう。」


神社には明かりがなく、暗くて分からないが赤く光る瞳が2つ人玉のように浮かんでいる。


「こ、こっちに来るな!!止まれ!」

俺は立ち上がり階段を後ろ向きで降りた。

が、踏み外して足を滑らせる。

前頭部を石の角にぶつけそうになった時、誰かが俺を抱き寄せた。


「何をしておる!危ないじゃろぉうぉっ!?」


ズルっと草履が地面を擦った音の後、ドシンと大きな振動が

24段に渡って鳴った。

俺に外傷はないが声の主はだいぶ悶えている。


「はぁ、はぁ。腰が…妾の腰。砕けた…。」

「坊や、大丈夫かえ? ん、坊や?やけに大きく。」


バチッと電撃音がする。

それに反応して思い出した。夢を見ている場合ではないことに。


声の主を避けて立ち上がると、姿はノワールになっていた。

右腕はあの鬼のままだ。

瞬間、恐怖がなくなった。


「汝、名をなんと言う?可愛らしい童はどこへ行った。」


「彼…。浩輔か。そいつはもういない。私はノワール・シューミッド。お前は?」


「お前!失礼な…。んぅ。異人なら仕方ない…。」

「妾は火緋色の尊美夜…この地の土地神である。」


「土地神?そんな事聞いたこと無かったぞ。」


「異人さん、なのだから当然であろう。おかしな娘よの。」


俺は放電を起こして周囲を軽く照らす。

自称土地神は桜の花びらの絵が入った純白の着物を着ていて、腰まで至る黒い髪の毛先は淡いピンクに染まっている。落下ではだけた着物の奥から玉肌が眩しい。


「なんじゃ、その腕はまるで黒皮の着いた鉄じゃな。どれどれ…。」

自称土地神はポンポンと埃を払はらい立つ。

そして俺の腕を見るや渋い顔をした。

「仕方ないの、最後の仕事だと思ってやってやるわ。」


自称土地神は右手をぐるりと回しどこからともなく火造槌(ひづくりづち)を取り出した。


「咲き乱れるは赤花火…踊れや踊れ粒子の層。」

「化けれや火緋色…夜に咲け…芽吹けや魂!!」


俺が避けるより早く火造槌が動き拡張兵装を叩く。


「な、何をした!?」


「焼きを入れただけじゃ。ほれ、美夜の印が入っただろう。」


俺が腕の肩を見ると装甲の隅に小さく美夜と印があるのがわかる。なんだ、こいつ鍛冶の神か?

何度も手を開いて閉じてを繰り返す。明らかに以前より速度が上がっておりスムーズだ。拡張兵装に不満はなかったが確実にアップグレードされている。


「はぁ、花火も終わって仕事も終えた。あとは静かに去るのみじゃな。」


「ちょ、ちょちょっと待て…。土地神と言ったよな、しかもこれで最後と。その任期があるのか?」


「任期ではない、信仰心があるかどうかじゃな。さきの花火、あれは妾への奉納だったのじゃよ。変化とは寂しいものじゃ、今や鍛冶屋は衰退し祭事も遊戯事に意味が変わった。もう、いいかの。」


「いや、いい案件があるのだが聞いていかないか?」


「ほぉ?神に頼みか。」


「シューミッド家に永久就職してください。お願いします。」

俺は深深と礼した。これが夢だとしても現状、何かが変わる可能性があればその全てにぶち当たっていきたい。


「あぁ?社もない異人の国へいけと申すか。よくて付喪神じゃな。」


「そこを何とかお願いします!神様!」


「汝はボールのようにコロコロ変わるな。」

自称土地神は視線を落とす。

「ん!まてお主!その傷は…新しい巫女か?いかんぞ、これはよろしくない…神具を与えてしまったではないか!?」


自称土地神は、契約がどうこう仕事がどうだとブツブツ独り言を言っては頭を抱えている。


「ええい!辞めるに辞められんなったわ!しかもお主、魂の場所がとんでもないとこにおるではないか…。老人を少しは労れい。」

自称土地神は地団駄を踏んでバタバタしている。


「もう、仕方ないの……はよう花火を奉納せんかぁ。」


「花火を奉納?」


「はぁ、巫女を指名できる最後の爺さんがいないからこれも仕方ないのぉ…。とりあえず妾に炎を見せたらいいんじゃ、はようせい。でないとこのまま消えてしまう…妾もお主も。」


「消える!それまたどうして?」


「質問しない!はよやれぇー!!」

土地神がでかい声で叫んだ。


でかい火?炎?えっ、えっ!

いやあれしかねぇ!


「ライデン!」


「おおぅ!青白いビカビカじゃ!初めて見るのぉ、でも綺麗じゃな…って光りすぎじゃあ!」

「やめぇい、目がチカチカ!目がァァァァァあああ!!」


あたりは一瞬にして落雷が落ちたかのごとく真っ白になった。







そして俺は夢から覚めた。








〖肩部、防御隔壁システムを終了なさいますか?〗


アナウンスが俺に問いかける。

外の状況が安全なら動作を終了してくれ。


〖スキャン開始………結果、敵機は無力化されました。加えて2名の非戦闘員、装者の精神分析から保護を優先、丸型遠隔子機により消耗率20%〗


わかった、隔壁を開いてくれ。


〖隔壁開…周囲環境に注意してください〗



真っ暗だった視界に光が差し込む。どうやら隔壁システムとか言う機能が働いて俺が自壊するのを防いだらしい。


完全に隔壁が開いた時、客間から出てすぐの廊下の壁にシリウス・アルバロンは叩きつけられ気絶している。

そしてフランとユイレの前に俺の攻撃を防ぐために飛んで行ったドローンみたいな物体が浮かんでいる。

俺の黒いたまご型に見える隔壁が完全に肩部へ収納された後、追随するように2機の子機が肩部にある接続部に固定された。

俺の体から帯電した電気が小さな落雷となって放出され続けている。


子機が退いたあとフランとユイレは俺を心配そうに見ていた。



「ノワールさん…もう死んでしまったんじゃないかと思ってしまって…」

ユイレは涙ぐんで言葉が詰まる。


「姉様…ごめんなさい。なんにも役に立てなくて。」


俺は2人の無事を確認し、廊下で突っ伏しているシリウス・アルバロンに近づいた。


「おい、生きてるか?」


「生きてるとも…かろうじてな。魔法石がなければ即死だった。」


即死だった?嘘つくなよ、近づいた途端ムクリと起き上がりやがって。


「改心したかどうか、認めればいいと言ったが…撤回する。」


シリウス・アルバロンは頭をかいて立ち上がり、バルコニーの方へ歩いていった。

客間は半壊し、支柱の鉄骨が露出していた。

そして彼は外を指さす。


「シューミッドよ。近衛兵が来てしまったようだなぁ。王宮内でここまで大きな争いが起きて、それが第二王子お気に入りの我が娘の領地で起こったのだ。」



「シリウス!貴様それが狙いか!」


俺は慌ててバルコニーに走り外を見る。アルバロン家の庭には厳戒態勢の兵士が所狭しと並んでいる。

その中で隊長と思わしき兵がこちらを見て合図した。

アルバロン一行をお守りせよと。


その一声で、隊列を組んでいた前方列から順に突撃を開始した。



「お父様!なんで!シューミッド家にこれ以上関わらないと決めたではないですか!」


「ユイレよ、こやつはエルドレッド王国に必要ない!ここで捕え死刑にした方が良いのだ!王様もそう願っている。シューミッドは全て排除すべきだったのだ!」


「なんてことを!?」



シリウス・アルバロンは兵士に目線を奪われていた俺を持ち上げ外に放り投げた。客間は2階の高さにあって落ちても重症で死ぬことはないだろうが、この腕を持っていれば話は変わってくる。打ちどころが悪いと即死。


「いやぁぁぁぁ!ノワール!?」

「姉様!」

「貴様ァァァァ!!」




「反乱分子が落下してくるぞ!場所を開けろ、落ちた所を一斉射撃!」


「隊長、捕縛では?」


「シリウス戦術顧問が投げたのだ!殺したも同然だ。王には不慮の事故と伝えよ。」


「りょ、了解。」


俺の落下ポイントにいた兵士が退いてそこにはノワール・シューミッド用にスペースが設けられた。


俺は少しでも衝撃を和らげるため足を下に向け少し曲げる。右手の拡張兵装も限界まで下に伸ばし先にそれが当たるよう向けた。



〖防御隔壁システム起動、展開完了まで0.5秒…〗


がしゃがしゃと音を立て肩の装甲が広がり眼下に向け広がる。広がった装甲の下に丸型遠隔子機が移動しエアを噴射、衝撃を緩和しようと試みる。


〖出力不足…出力不足…自重に抵抗できません。〗


俺は歯を食いしばり舌を噛まないようにした。





ゴツっという大きな音、地面がめくれ、地震が起きたみたいに地面が揺れた。

脳震盪が起きて現状を把握出来ないがアナウンスだけは状況を逐次報告していた。


〖衝撃により丸型遠隔子機が破損。肩部防御隔壁小破。拡張兵装の機能に支障無し。装者…脚部骨折…むち打ち…打撲多数。危険状態。〗


ほんとに痛い時って痛いって言えないんだな…。

体が震えて、痛みに耐えるため全身に力が入り硬直する。

耳から血が出ているみたいでよく聞こえない。



〖ロックオン警報、ロックオン警報、数多数、防御隔壁の再展開までディレイ有り。〗



ノワールの意識が言っていた予想がこんなに早く当たるなんて……。来世であった時は覚悟しとけよ…。






「Code:RED!フラン・シューミッドの名において全兵装の使用を許可、貴族にくれてやる兵器も構わず使用!装者をシューミッドに変更しろ!!」



虚ろな目で上を見ると、落下してくるフラン。


そこに俺と同じような拡張兵装が転送してくる。

その間0.02秒。




「拡張兵装05に命令!緊急段階解除、雷電!」



〖登録ナンバー02からの緊急指令受諾…雷電使用。〗


ライデンの発動と敵の射撃はほぼ同時だった。

放電した電撃は1部の弾丸を弾き飛ばす。防御隔壁を展開する時間はそれで十分稼げた。




白い閃光の後に現れたのはまさに鬼と言うのがふさわしい2つの角をもったメカであった。フランの体を起点とし右腕、左腕、右足、左足、と4つの拡張兵装が接続されている。

そして、フランの額から伸びる赤いツノ。

フランの目は発光し夕日に輝く。

全長は7m位か。




「デュエリスト……。」

「デュエリストだ…。」

周囲の近衛兵が口々にそう語る。


そう言われた巨人は体から空気をふきあげ排気する。


「怯むな!デュエリストなど我々が使用していた兵器だっただろう。弱点はわかるな!いけっいけぇ!」


近衛兵は雄叫びをあげワイヤーを取り出しデュエリストに近づいて行く。



「貴様らに渡した兵器など全て未完成品だ!オリジナルに勝てるわけないだろう!」


フランが乗ったデュエリストはジェットエンジンで宙に浮く、そして接近した兵士から抜け出しノワールを確保した。


そして、空に飛んだフランは思わぬ光景を目にする。

王宮内の警備隊、各担当領地の衛兵、そしてシューミッド警備隊までもがアルバロン担当領地へ向かっていたのだった。



「姉様……シューミッドは終わったようです。交渉も無駄だった。これは…これは。」


〖ロックオン警報、ロックオン警報。〗



「ちっ、ロングレンジか!作った兵器に攻撃されると思ってもみなかった!姉様揺れます!」


デュエリストは体をひねり弾丸を避ける。


「ははっ!兵器になっても良いことは有るんですね!姉様、行きますよ。」


フランは機体のエンジンをふかし空を自在に飛ぶ。

こうなっては仕方ない、どう足掻いても王宮に戻ることはできないだろう。


〖ロックオン警報、ロックオン警報。〗


またか…。

空を飛ぶって言っても跳躍したあと降下しているだけなのだ。

フランは飛び交う銃弾を避けながらできるだけ遠くへ遠くへと降下していく。


〖登録ナンバー01の心拍数低下…危険域に到達。〗


「姉様!?あともう少しで担当領地へ着きます。そこに行けば、きゃあ!!」



〖右腕被弾、被弾。〗


デュエリストは体制を崩しフラフラと揺れ自由落下する。

フランは両足を地上に向け、エアを2、3度噴射。

起動を修正し再度降下姿勢に戻す。






「隊長…今度は外しません。」


「風は西に吹いてるな。修正、距離+3。」


「よし、任意のタイミングで射撃しろ。」


「了解。」


アルバロンの屋敷の屋根に狙撃手が彼女を狙っている。それはシューミッド伯爵が制作した狙撃銃。脇に銃床を挟み、左腕でグリップを持ち屋根に押し付けるように持つ。

狙撃手は屋根の傾斜に寝転がるような姿勢で足を屋根の端にのせ落下しないように固定している。


その2m程度の狙撃銃が火を吹いた。


「直撃確認。」


「グッドキル…。」


「おい、待て!まだ殺られてない!あいつ、嘘だ!そんな」


「おい、どうした?」


隊長が双眼鏡で再度、目標を見ると貫かれた頭部から配線が飛び出ているではないか、そしてまだ飛行を続けている。



「シューミッドの負の遺産め!人造人間など作りおって、撃て、奴を逃がしてはならん!」


「りょ、了解!」






「あ、ああ、頭を、頭が…。あ、姉様…。」


フランの頭は半分が吹き飛んでいる。思考できる容量が低下し言語機能にも支障が来ている。

姿勢制御が生きているのがまだ奇跡だ。


彼女は最後の目標をただ達成するため前に進み続ける。

眼前には銃口が反射しキラキラと光るイルミネーションが街の至る所に飾られている。


は、っははっはは。

お父様、お母様、フランもそちらへ今、向かいます。



無数の銃弾がフランを貫く。

ノワールはフランの拡張兵装で守られている。


「ぐふっ…。ごめんなさい姉様、拡張兵装05、防御隔壁を起動して。」


ノワールを包んだ拡張兵装を離しその場で落下させた。


「オートモード起動…。搭乗者保護制限を解除。」


〖登録ナンバー02に負荷増加の恐れあり。〗


「私は死ぬのよ…。構わずやりなさい。姉様…最後までご一緒できなくてごめんなさい。」


フランは降下し、落下した拡張兵装05に口付けする。


「あなたにどうか御加護がありますように。」


フランの思考回路が焼けきって目から光が消える。

代わりに拡張兵装の青い血液が発光する。

ジェットエンジンで飛び上がり、近場にいる兵士に襲いかかる。兵士がいくら銃弾を当ててもデュエリストは止まらない全身の機能が完全に破壊されるまで動き続ける。

腕からは放電しており、あたった兵士を破裂させる。

拡張兵装05と同じタイプの武器でシリウス・アルバロンのように魔法石などで反射出来なければ掠っただけで焼け死ぬのだ。



シリウス・アルバロン戦術顧問には兵士のこれでもかというほど悲報が入ってくる。

フラン・シューミッドを乗せたデュエリストの暴走は長時間にわたり行われ、王族たちはこれを目覚めさせてはいけなかったのだと、シューミッドの遺産は危険だと、後に判断し兵器使用を凍結させたという。













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