2話後編 Blend Soul
シューミッド家の朝は遅い。
理由はやることがないからだ。茶会の成果はすぐに現れるものでもないし、第2王子からのお誘いはあれ以来一回もない。
領地に調理場がない貴族へは王宮から毎日3食届けられる仕組みとなっているため移動する必要だってない。
王宮へ支払うお金はシューミッド家の貯蓄から出ていくためあと数十年はここにいられる計算だ。
なら家を建て替えろって言いたいけどフラン曰く出費は抑えたいようだ。
だから俺はずっとニート生活を送っている。
普通なら世界のことが知りたいって思い、行動するはずだが俺は違った。退屈だと思いながらも動きたくないので寝室で寝るばっかり、転生初日以降まったくやる気が起きないのだ。
「姉様ぁ、今日こそ行動してください〜。警備隊の皆様も日夜働いてくれているのに主がだらけていては示しがつきませんよ!」
動かないでここでひっそりとしている方が要らぬ矛先を向けられなくて済むのだ。
そんなグダグダ生活は急に終止符を打つ。
警備隊が私たちに届けた一通の招待状には、差出人ユイレ・アルバロンの名と以前、自作のケーキをご馳走したいとの約束を果たしたいのでアルバロン家に招待する、という内容が書かれていた。
「ノワール姉様、出かける良い口実が出来ましたね。日付は明後日の土曜でございます。もちろん承諾致しますでしょう?」
「はーい。行かせていただきます〜。」
「はぁ…。それまで全力でゴロゴロする気ですか…。」
「この腕みたいな発明品があるならゲームとかないのー?」
「遊びですか。だったらそれこそ右手を調べてはどうですか、得体の知れないままだと怖くないですか?」
確かに…。
神経はないが、生身の腕と変わらないくらいしっくり来ている。肘部と側面のコンセントらしきもの以外、装甲板と持ち手がついてるだけで何か起きるなどと思えない。
中からビームが出るとかならまだ楽しめたかもだけど現状、ただの義手に見えるだけ。
俺はフランに義手の手を振って、大丈夫だと合図した。
「今後、体に異常があればすぐに教えてくださいね。その時は右腕ごと切断致しますので。」
「ひぇっ!?」
「仕方ないですよ…。」




