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12話 ランクと編成





「ねぇ、ノワール。私たちどうなるんだろうね。」


「うん。」


ノワールは久々に、しおらしいモードになっている。

こうなった場合、彼女のかっこよさはどこか遠くへ消え去っているのだ。


尋問を終えた2人はガルディア、スケイル支部の1階ロビーの長椅子に腰掛けている。



「お待たせ致しました。ユイレ様、ノワール様。次の測定の方へ行きましょう。」


やってきた受付が、次の、と言った時2人の目は輝いた。


「あなたがたの許可は仮でありますのでお間違いなく。」


2人はすぐさま釘を刺される。


場所が移って、1階の受付をすぎ進むと様々な部屋が用意されていた。


「1回のほとんどは技能測定になっております。ガルディアでは幅広い分野で活躍出来る人材を揃えるため、座学から実技までの部屋がありますよ。ユイレ様とノワール様はヘリオス様からの紹介と言うことで紹介者と同じく実技での測定となります。」


ほう、適材適所と言うやつか。


2人が案内された場所は中庭でそこには巨大な魔法石のようなものが置いてあった。


「こちらは、拡大機構によって魔法石の耐久度を倍増させた代物になります。お2人には非武装時と武装時で分けて測定しますので、何かしらのアクションをぶつけてください。どれだけ力を加えても怪我は致しませんので安心してください。」


そう言って受付は帰り、実技担当の測定チームと交代する。

非武装時、武装時共に好成績をたたき出したら一体どんな仕事を回して来るって言うんだ。


「えー、まずはユイレ様から始めてください。初めは非武装時からぁ〜。」


間延びする喋り方をする測定員の指示を受け、ユイレが魔法石の塊を殴る。


「はいー、怪我はしませんから思いっきりお願いします〜。」


ユイレは覚悟を決め、拳で殴る。


「武装時をお願いします〜。」


ユイレは対抗砲(アンチ・キャノン)を放つ。

ズゥーンと振動する重低音を鳴らし地面を削り測定器に直撃する。

これには測定チームも驚きを隠せないようだ。

とんでもねぇやつを見てしまったと。


「は、はい。結果は2名を一緒に発表しますので続いての方お願い致します。あ、それと非武装時測定は右腕を使用しないでください。」


まじかよ。やっぱ義手は武器に入るか〜。


俺は左腕で測定器をぺちっとたたく。


「武装時をお願いします〜。」


俺は魔障壁を殴った時と同じ姿勢をとる。

右肘と右足を引き、左手を前方へだして左足で踏みこみをつけた。義手から圧縮空気を排気して、チャージを開始。

内部の魔法石が青く輝くのを合図に一気に解放する。


体はまっすぐに飛び、測定器の前で右足を踏み込んで殴る。

大太鼓の音を何十倍に大きくした打音がなった。


「は…はぁ。お疲れ様です。武器種の得手不得手はこちらで調べますのでまた、1階ロビーでお待ちください。」


俺たちはやってやったぞと満足気な表情で中庭を後にした。

1階ロビーには会議室で後始末を行っていたヘリオスと暇つぶしでついて行ったフランが帰ってきていた。

時刻は昼前になっていて、ガルディアに採用された職員が仕事探しや休息のため訪れている。

そして、みんな分かりやすい所にガルディアで発行された階級を表すプレートを付けていた。


ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ウルツアイト。


その5段階中、ロビーにいるのはブロンズが多く、ちらほらとシルバーを見かけるくらいか。



「お疲れ様です。姉様。」


「お、それって…フラン。ゴールドになったのか。」


「はい、プラチナの紹介でも甘く見てこの位置だそうです。経験もないですから当然でしょう。」


「おかえり、泣き虫ノワール。」


「うるせぇぞおっさん。俺たちのフォローは上手くいったんだろうな?」


「そうだな。私の階級を強制的にウルツアイトにし、いやその前にウルツアイトの役目を話すか。ガルディアの職員において階級の1番上がウルツアイトだ。そしてウルツアイトにはガルディアで定められた決まりを破った者に対し、即時処罰可能、という権利が与えられる。 簡単に言えば歩く処刑台さ。」


「上は俺たちを首輪付きにしたってことか。」


「そーだなー。あとは私が10年以上放置していた昇格承諾書を処理したかったんだろう。 はぁ、やりたくない……。」


彼の左肩には外装と保護色になって見にくいが黒く光ったプレートがつけられている。そこには白い文字が彫られていてNo.6 と刻まれていた。


「今更ながら仕事について聞くが、実務って何をするんだ?」


「色々だな。悪徳業者の本部に突入したり、凶悪犯罪者を調査したり。たまには紛争や戦争の仲裁も行う。後は魔大陸の探査。」


「魔大陸?聞いたことないな。」


「北海を挟んで反対側、そこに極寒の地がある。そこは魔法石だけで形成された大陸なんだ。だから魔大陸って呼ばれてる。その大陸は未だ全貌が明らかになってないし、調査隊が何度も行方不明になってる。」


「なら解明しなきゃいいじゃない。魔法石だってエルドレッド王国からの輸出で十分賄えてるわ。」


「ユイレ嬢、そのエルドレッド王国から魔法石を購入しなきゃいけない資金がいくらかかってると思う?」


「エルドラ貨幣、5枚かしら。」


「5000金貨か、足りないな。それの倍はある。国はその高い魔法石を分割して使用することで国民に分け与えている。国民が増えれば追加注文もするからエルドレッド王国用の資金を毎年予算に組み込む必要がある。」


「30年前の戦争で勝った国はいいでしょうが敗戦国は賠償金も請求されて、国土も奪われています。レンディミオン連合とエルドレッド王国、ロイツ連邦以外の国は辛い状況でしょうね。」


「フラン嬢の言うとうり。だからこその魔大陸攻略だ。目的は安全圏を確保し採掘チームを派遣できるようにすること。スケイル支部も自国の政府から応援要請が度々出されている。」



4人が議論をしていると、受付が申し訳なそうに声をかけてくる。


「ユイレ様、ノワール様のプレートが出来ましたのでお持ちしました。」


受付が2人に渡したのはシルバーの階級章だった。


「はははっ。そうだろうと思っていたよ。」


「笑うなぁ〜。」


「本部の決定ですので。」


受付が不平不満を言い出しそうな2人に釘を刺して立ち去っていく。


「よーし、用も済んだな。今は12時前か……食堂でも行くかな。」


「腹ごしらえ、と言っていましたし仕事探しは後からにしましょうか。」


「その前に荷物だろ…。気が早いぞ。」


ヘリオスは今、3人分のバックパックを背負っている。

フランも測定に行っていたし彼に預けたのだろう。


「はぁ…そうだな。運び屋でも雇うかぁ。」


「運び屋?」


ユイレ、ノワール、フランの頭の上に?マークが浮かぶ。


「使用人みたいなもんだ。ガルディアには荷物持ち専門の職員がいるんだよ。我々4人全員が戦闘になったとき、荷物番が必要になるから今契約しといていいだろう。ただし人気の運び屋には専属の隊が着いてるから…」


「格安なのは素人か。余程の馬鹿か。」


「そういうこと。ではでは、運び屋の待機室に行こうか。そこで声をかけて交渉して、互いの利害が一致すれば契約完了だ。」


ヘリオスは重い荷物を全部担いで1階ロビーから2階に移動する。どうやら2階のロビーが運び屋の待機所みたいだ。

さっきから2階に直行する人達はそういう事だったのか。


フランはデュエリストを構成する5つの拡張兵装を外して重ね合わせ、背中に背負った。

7mある全長が半分まで縮り担ぐことが出来る。その分幅は広くなるが。

一体、フランの総重量はいくつになるんだか…。




階段を登りきって、2階のロビーにつく。

1階ロビーには休憩所みたいに椅子とテーブルが並んでいたがここには一方向に揃えられた椅子がずらりと並び、そこに座っている方々の首には番号札がかけられていた。


ほとんどの運び屋はゴリッゴリのマッチョ。

そして、運べる最大重量順に並んでいる。

奥の方に写真だけで紹介されている運び屋は1000kgを超えて運べるようだ。1トン!?全くもって意味がわからん…。

よく見ると全員、機械だった。



「なぁ、ヘリオス。車買った方が良くないか?」


「車? 私のを使えばいい。」


「ならそれでいいじゃない。」


「ノワールもユイレ嬢もわかってない。車の入れない地域、装備の切り替え、緊急時のキャンプ。そんな時に一々車まで帰って物資を持って来れるか?」


確かにそうだ。日本ではどこも舗装されていて、駐車場も完備され、しかも安全だった。普通に生きてて襲われたりとか滅多にない。

ヘリオスに言い返す言葉がない。


なんて、雑談をしているなか2階ロビーに待機している運び屋たちはこちらをじっと見ていた。


ウルツアイトとゴールドが1名ずつにシルバーが2人。

後の3人は雑魚だがウルツアイトは大物だ。そんな隊の運び屋に選んでもらえれば一気に箔が付くだろう。

しかし、声をかけアピールする者はいない。

ガルディアに来るものは皆、何かしらの苦しみを背負っているのだ。しかも運び屋と言う職は、荷物を運ぶのが得意だ。悪くいえばそれしか能が無い者の集まりなのだ。

よって彼らは互いに支え合うため仲間意識が強い。


「なぁ、ヘリオス。今持ってる荷物の重量って体感、幾つくらいだ?」


「あー、大きく見積もって200って言ったとこか。」


200!?

条件にあった運び屋たちは心の中でガッツポーズし、合わないもの達の中では席を立つ者もいた。

まぁ、ノワールたち以外にも運び屋を選びに来ている人たちもいる。他にもチャンスはあるさ。


「なぁ、ヘリオス。ここにいるマッチョと機械の運び屋以外って確認できるか?」


「あー、一応ここに座ってるヤツらはすぐに出立可能な即応員だ。だからほら、そこにある検索機で調べたらいい。でも先約が入ってたり、任務中とかは出てこないぞ。選り好みしないなら即応から選ぶ方が早い。」


俺は端末があると聞いた時、急いでそっちに向かった。

だって、ゴリゴリマッチョは嫌だもん!


「奇遇ね!私も検索したかったのよ。」


「姉様!一緒に選びましょうか。」


てめぇらもかよ!


ヘリオスは一目散に検索機に行く3人を見て目を細めた。

やれやれ。私の貯金を下ろしておくかな。




検索機に着いた3人は早速、条件を入れ始める。


・最大重量200kg以上

・女性


ヒット数128件


しかし、出てくるのはこれまた体格のいい人達ばかり。

ページをめくる気すら起きなかった。


「くそっダメか…。」


「姉様、まだ諦めるのは早いですよ。」


フランは検索条件に性別を外し、年齢を入れた。


・最大重量200kg

・20歳以下


ヒット数24件


おぉ。これならいけそうだ。

でも人間を選んでいるなんてまるで奴隷を買っているようだ。なんだか心が苦しくなってきた。


「うーん。なんだかパッとしないわね。心にグッと来るような…。」


3人は検索を諦め、ヘリオスの元へ戻る。


「お早いおかえりだったな。良さそうなのはあったか?」


3人は首を横に振った。


「あー、そうか。なら先にご飯にしよう。ここの食堂のおすすめランチを教えてやる。」


俺は移動する3人の後に続いた。

そして、ゴリゴリマッチョの人々を横目に見る。

この人達は俺のように何らかの事情があってここにいる。彼らもお金が欲しくてここに座っているが運び屋の仕事を生きがいにしている人などいなさそうに思える。

いつかは膝や腰を壊してしまうのに検索機に出てくる人の中で70歳以上も見た。


俺の転生先が違えばこんな運命もあったのか…。

なんて考えると嫌な気持ちになる。

でも、俺の故郷日本ですら戦後、路頭に迷って餓死する子供たちだって大勢いた。今のスケイル国はそれと似ているのかもしれない。

歴史の先生が今の学生は恵まれているだの、実家のじいちゃんが戦時中体験したことを話してもそこまで理解してなかったし、それよりゲームしたいって考えてた。


でも、現代人は現代人の苦しみもある。

どう考えて…生きていけばいいんだろうか…。

考えれば考えるだけ……。



「ノワール!避けて!」



ユイレの警告が聞こえた時、階段を上がってくる子供が視界に入った。

俺はその子にぶつかってしまう。

俺の重量は義手で増加しているから軽い子供は宙へ浮く。


「やだっ!」


子供の叫びが聞こえた。

俺はすぐに右肘からエアを噴射して子供を抱え、階段を転げ落ち踊り場の壁に当たって、また跳ね返って落ちて1階ロビーまで行った。


俺はつくづく誰かを庇うことがあるなぁ…。

誰かに呪われてんのかな俺。


「おい…大丈夫か?」


「うん。怪我ないよ。どこも打ってないし。」


俺は子供を抱っこして地面に下ろす。

その子供は左腕に包帯を巻いていた。


「ん?これ? 任務中に骨折しちゃったの!」


子供は笑顔でそう答えた。


「骨折? 2階に上がってたって…まさか!運び屋じゃ」


「そうだよ。僕はこう見えて運び屋さんなんだよぉ。」


階段を駆け下りてきたフランとユイレもびっくりして声をあげた。


その子供は身長140程度で、まだ幼かった。


「お姉ちゃんたち、僕を侮ってるでしょ!こう見えて500kgの試験にも受かったんだよ!すごいでしょ。」


子供は腰に右手を当て偉ぶる。

ニコニコ笑顔が良く似合ういたって普通の子供。

その子にいったいどんな秘密があれば500kgなど運べるのか。


しかし、装備は整っている。

キャリアーと刺繍の入った帽子を被り、リュックと接続できるタイプのチェストプレート付きのパーカーを着て、手はタクティカルグローブをつけ、腰にはロープや登攀具の入ったツールバックがあり、足には腿にフィットしているランニングパンツと登山靴を履いていた。

そして、トレードマークは茶髪の長いポニーテール。

子供が動く度にぴょこぴょことそれが揺れて……。



「可愛い…。」


その言葉を発したのは以外にもフランだった。

俺はすぐさま、フランを見る。


「あ、いえ…。で、でも皆さんもそう思いませんか? お、思わない?あれ…。」


わかるぞフラン。

確かにこの子は可愛い。しかしだ。それを言ってしまえば俺らは完全に○リコンになってしまう!



「なんだよお前ら。お気に入りが見つかったじゃないか。 ほら喜べ、犯罪者予備軍共。」


その時のヘリオスの目は明らかに嘲笑っていた。


「ねぇ、君。名前はなんて言うの?」


「リュツって言います。僕もウルツアイトがいるチームからご指名とあれば断れませんね。よろしくお願いいたします。」



さっきまで考えていた事が馬鹿みたいに思えてきた。

気持ちを切り替えよう。深く考えるのは終いだ。

自分に素直な生きかたの方が楽しいに決まっている。


「まぁ、私からすればなんでもいいんだけどな。早く任務報告をしてきなさい。ウルツアイトは気が短いぞ? なんせ腹が減っているからな。」


「ヘリオスさん。ご飯いらないんじゃないですか?」


「食べないとは一言も言ってないぞ。」


「確かに…。ならなんで今朝の朝食食べなかったのよ。」


そこでヘリオスが無言になる。


「私の料理は食べれないって言いたい訳!?」


「まぁまぁ、俺が一緒に食べるからさ。作ってくれよ。」


「ありがとうノワールぅ〜。」


騒ぐ3人を置いてフランはリュツを連れて2階へ行き、任務報告と専属契約を結んでくる。

契約料は運び屋側が決めることができる。

リュツは別に幾らでもいいと行ったが、仕事をしている以上、見合った報酬が必要だとフランはいい金貨20枚に設定した。


金貨20枚を目にしたリュツは目を輝かせフランに抱きついた。


「フランお姉ちゃん、大好き!ありがとう!」


この子は将来、大金持ちになるだろうと思うフランであった。








前衛・アタッカー

EXR:炎の仕事人「ヘリオス」

装備:癒刀-蜉蝣、姉妹炎刀-不知火&陽炎


SSR:蒼き月夜「ノワール」

装備:義手(火緋色鋼)


前衛・タンク

SSR:白い夕陽「フラン」

装備:デュエリスト(複合兵装)、巨剣リヒテンベルク


後衛・スナイパー

SSR:暁の閃光「ユイレ」

装備:対抗砲(火緋色鋼)


後衛・キャリアー

SR:幼き怪獣「リュツ」

装備:みんなのもちもの



屈強な軍人でも40kg持てば行動が遅くなるので、戦闘時ただの的になります。

500kgとか化け物レベルですね。


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