11話 ガルディア スケイル支部での攻防
ミネ市から西、スケイル国の中心部へ15km。
そこに首都、ハルゼン市がある。
スケイル国は国土的には小さい国だがエルドレッド王国とレンディミオン連合国の橋渡し的存在で文化の流入が激しく交易の面で言えば大きな国であった。
まさに商業都市。
トラックの運転手が言っていた車も大量に走っていて、首都へは舗装された大きな道路が各市へ伸びている。
我々は複数人が乗ることのできる運搬車両に乗って首都まで行くこととなる。
運賃は全部ヘリオス持ちですがね。
「どうだ、あれが首都ハルゼンだ! 30年前は戦地だったがあれほどまで復興するとは私も思ってなかった。」
「私は生まれていませんでしたが父上からよく聞かされていました。」
「そう、だろうな。エルドレッド王国の兵器のほとんどが……だったものなぁ。」
「ええ、現状それに助けられているのがまた皮肉ですけどね。」
2人は車窓を眺め、外の景色を見ていた。
窓から見えるハルゼン市は高層ビルとまでは言わないが少なくとも5階以上の建物が並んでいた。
もう、戦地とは言わせないという確固たる意思が読み取れるが郊外にはまだ手付かずの瓦礫が積まれている。
それから車で数分、運搬車両は停留所に止まっていく。
「ガルディア前、ガルディア前、お降りの方は停車ボタンを押してください。」
運転手のやる気のない声が聞こえ、ボタンに近いヘリオスがそれを押す。
運搬車両が停車し、出口にある運賃箱へ手馴れたように支払うヘリオスと、一瞬とまどう3人は無事に降車することが出来た。
「お解りの通り、目の前にある建物がガルディア、スケイル支部だ。」
一行の前にあるのは大きな敷地面積を持った建物というより公園に近かった。
ノワールはそれに見覚えがある。
そう、それは高校だった。いや、大学に近いかもしれない。
大きな開いた正門から見えるのは芝生で出来た庭とレンガが敷かれた道、その先は校舎。
ノワールは涙を浮かべ、がっくりと膝を落とす。
「ノワール?どうしたのそんなに泣いて……あれ、私もなんだか。」
ノワールに声をかけたユイレの右目から涙が落ちる。
「ユイレ…なんだろうね。すごい懐かしいんだ。」
ユイレは心がモヤモヤするような言いたくても言い出せないようなつっかえた感じがする。
そして、胸がヅキヅキと痛む。
「へへっ、おかしいな。ほんとに…どうしちゃったんだろう。」
「ま、無理もないな。ここはガルディアの支部の中で最も新しく出来た建物であるから王宮の屋敷に似ているかもしれない。」
ヘリオスは全くの見当違いを言うがノワールはその一言で立ち上がる。
「すまない、取り乱したな。行こうか。」
懐かしんでも変わらない。この世界で自分は生きていくのだから。
一行はガルディア、スケイル支部の入口を開け中へと入っていく。扉を通過するとカランカランとベルの音がした。
それを合図に中の人間がこちらを見る。
その誰もが目を輝かせた。
「ヘリオスのおっさん!」
「おっさん!」
「おかえりおっさん!」
子供たちが口々におっさんの言葉を混ぜた発言をして彼に集まっていく。
「おぅ、みんなのおっさんが帰ってきたぞぉぉ。」
ヘリオスは嬉しそうだ。
「おっさん!また美人さんを連れてきたのかぁ?今度は帰ったりしないよな!」
「よな!!」
「あぁ、今回はちゃんとな!」
その返事に子供たち、多分孤児だろう。がこちらをじっくりと覗き込んでくる。
俺は愛想笑いなど出来ずに真顔になってしまう。
ユイレとフランは完璧にこなしていたがな。
子供たちはワラワラとおっさんから離れ2人に近寄っていく。
1番人気はもちろんユイレだ。
フランは……デュエリストを装着しているから怖いもの知らずしか来ていない。
「ねぇたん、でっかい!でっかい!」
その言葉はフランに向けられた言葉ではない。
それにユイレはタジタジになる。
「ヘリオスさん。あなたはこの子達に何を吹き込んだのですか?」
フランが眉間に皺を寄せ問う。
「少々な。」
「少々?へぇ随分大層な嘘をつきますね。」
「まぁまぁ、本題に入ろうぜ。まずは受付だ。」
ヘリオスは奥にある病院の窓口みたいになったとこを指す。
なんだが市役所みたいだ。
そこへ向かう間、ユイレはずっと付きまとわれていた。
わかるぞ少年少女たちよ。彼女の雰囲気はお姫様みたいだよな。ドレスを来ていなくてもあの頃と全く変わっていない。少なくとも俺はそう思う。
「はい、皆さん。あちらへ行きましょうね〜。」
受付に着いた時、担当の職員が子供たちを誘導していった。
「ようこそ、ガルディア、スケイル支部へ。ヘリオス様、今日はどうされました?」
「入職者だ。審査をして欲しい。」
「その3名ですか。分かりました。これはヘリオス様の紹介でしょうか?それとも個人で?」
「私の紹介だ。」
「では通行証の提示をお願いします。」
ヘリオスは受付に通行証を差し出す。それは銀でも透き通ったシルバーだった。
受付は通行証を受け取り書類を書いた。
「ヘリオス様ならお解りでしょうが、プラチナランク以上の者が行使できる紹介制度、それを用いて入った職員が不正や犯罪、ガルディアに不利益な行動をした場合、紹介者も同等に罪に問われ通行証とランクは剥奪されます。それでもよろしいでしょうか?」
「ああ、承知の上だ。」
「では順番にこの魔法板へ3人は手をかざしてください。」
かざせと言われ、緑に光る板へ俺は恐れずに手をかざした。
その後、ユイレ、フランと続く。
受付は渋い顔をして、魔法板をしまった。
「ユイレ・アルバロン様、フラン・シューミッド様はこのままこの場に残り発行手続きをお済ましください。 ノワール・シューミッド様は別室に同伴願います。」
やっぱりか、そんな気がしたんだ。
簡単に行くはずがない。
「ノワール、仕方ないな。これは君の試練だと考えた方がいい。」
「わかってるさ、ヘリオス。覚悟は昔からできてる。もしダメだった時は2人を頼む。」
「あぁ、見届けると言ったからな。約束は守るさ。」
俺は残った3人に手を振って受付人の案内に従う。
ユイレやフランが止めようとするがヘリオスが制止させる。
デュエリストを片手で抑えるとはやりおるな、おっさん。
階段を登って三階の一室に連れていかれる。そこは会社の会議室のようだった。
いくつもの黒い椅子が並び、俺の座る椅子と非対称になっている。
そして、俺が椅子に座った時に手錠をはめられた。
それも義手用に合わせた大きさのやつを。
それから数分がたったとき、奥のドアが開いて会議室にスーツを着た大人達が入ってくる。
面談か。はぁ……まじかよ。
反対側の椅子には5人の人間が座った。たぶんスケイル支部の幹部だろう。
「早速だが、始めさせてもらう。」
中央の髭面の男が喋る。
「まずは我々の紹介からだ。私たちはガルディア、スケイル支部の人事を担当している、オメガとだけ名乗っておく。今回はノワール・シューミッドを救済すべき人間かどうか判断するための場を設けた。この面談はガルディアの全支部、及び本部の人間も見ている。回答には真実だけを述べることだ。嘘を一言でも言えばノワール・シューミッドは拘束されエルドレッド王国へ送還する。よろしいか?」
だめだ、緊張して言葉が出ない……。
しかも胃も痛くなってきやがった…。
「10秒以内に返答がなかった場合――」
「は…………い。」
「では質疑を始める。ノワール・シューミッドがエルドレッド王国での政治的内容において不正を働き、間接的だが殺人に関与したのは事実か?」
「はい……。」
「次に、その罪の償いとしてノワール・シューミッドとフラン・シューミッド以外のシューミッドの血筋の者全てが処刑された事実を理解しているか?」
「はい、理解しています……。」
「よろしい。続いてその数日後、ユイレ・アルバロンを懐柔し王宮を破壊させたあと、エルドレッド王国戦術顧問、シリウス・アルバロンを殺害したのはノワール・シューミッドであっているか?」
俺はその質問に対し、様々な返事が浮かび上がった。
王宮を壊したのは俺自身のせいかもしれないがシリウス・アルバロンは殺したかったためじゃない。
だが、殺人には変わらない。奴がどんな悪人でも法を無視することは出来ないからだ。
「回答に困っているようだが、素直に話した方がいいぞ。黙っている方が辛いこともある。」
「俺は……俺は…」
だめだ、言葉がまとまらない。
しかもだんだん涙が浮かんでくる。今まで圧迫面接などされたことがない。
中央の人物以外は俺の所作ひとつひとつを記録している。
頭がぐるぐると回っていきめまいがする。
「落ち着きたまえ。答えにくい内容なのは承知の上だ。」
「シリウス……アルバロンは…俺を殺そうとしていた…」
俺は涙を流しながら言い切った。
「実際、フラン・シューミッドの一時的な死を我々は確認している。また、シリウス・アルバロンは権力を不当に行使し軍を操作した。そして、ノワール・シューミッドの罪状はエルドレッド王国の法の上で正しく裁かれている。代償は大きくともな。我々も情報がない訳では無い。シリウス・アルバロンに賛同した兵士の上級幹部たちは現在罪に問われているそうだ。しかし、問題は王宮を破壊したこと。」
俺はその言葉を聞き、返す返事がないことに気づく。
「なぜ、王宮を破壊せよとユイレ・アルバロンに促したのだ。この回答次第で面談を終了する。」
また、俺は詰まる。
正直に俺は転生者で、友人が彼女の中に入っていてそいつがやったというか?
そんなの、信じてくれるだろうか。
「答えられないか? 恨みつらみでという解釈もできる。」
俺の膝がガクガクと震え出す。
今、俺のポーカーフェイスは崩れ去り年相応の少女へと成り果てているだろう。
前世で怒られた時は何食わぬ顔ですぐに謝っていたが、謝って済む内容じゃない。
例えるなら俺の罪状は脅迫をして国会議事堂を爆破させた首謀者なのだ。
今すぐにでも逃げ出したい。
負の感情ばかりが募ってくる。
「ひっぐ、うぅ…うぐっ……」
「泣いていてもしょうがないぞ。答えなければ終わらない。」
誰でもいい、誰でもいいからここから助けてくれ。
バガンっ。
後ろの扉が強引に開けられる。
室内に入ってきた不届き者はユイレ・アルバロンであった。
「話は職員に聞いたわ。今の質問、当事者の私が答えるべきでしょう?違いますか!」
「ああ、君か。いいとも話したまえ。」
「王宮を破壊した経緯を説明出来ればいいのよね。 私は今までアルバロン家の令嬢として、次期、王妃候補として頑張ってきた。でも、その中で王宮の腐敗してきた現状も目の当たりにしていました。初めはノワール・シューミッドという令嬢を法において裁き罪を償わせる。ただそれだけだった。けれど、罪の矛先が一点に向けられた時に、王宮の人間たちは便乗し彼女と同じことをし始めようとした。」
「私は!二度と、同じ過ちを犯す人間が王宮から生まれないように全てを破壊したのよ!!」
並んで座っていた大人たちは彼女の傲慢な自分勝手な意見に目を丸くした。
何を言い出すのだこの娘はと。
「これが元罪人と新たな罪人が犯した事の全てよ!」
まだ言うのかこの娘は。
単純にバカなのか肝が座っているのか。
「そうか…。よくわかった。君は下がっていいぞ。ノワール・シューミッド、王宮破壊は彼女の仕業だとここに証明された。君は1階で手続きをしたまえ。」
中央の人間以外の大人が持ってきたノートのページをめくる。
「ユイレ・アルバロンよ。ノワール・シューミッドより調べるべきは君にあると判断した。よってここに残りなさい。」
「ふぇ?」
ユイレの腑抜けた返事が静まり返った会議室に響く。
おつかれさん。すまんなユイレ。
巻き込んでしまって。
俺は涙でぐちゃぐちゃになった顔で少しだけ笑った。
俺の手錠は外され室外にでたがユイレが心配で外の廊下の椅子で彼女が帰ってくるのを待っていた。
彼女の尋問は予想以上に長く続き、最終的には人事からやってきた審問官とユイレとの討論会になっていた。
それはもう、白熱してお互いに言い合う始末になった。
最後の最後には、待っていたヘリオスがその場にやってきてことを収める結果になったようだ。
俺はというと予想以上に疲弊し、廊下の椅子で寝ていた。
頑張れノワール。
彼女は大人ぶってる子供です。
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