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6話前編 街へ行こう






森の奥の奥。小川の続くその先に小さな湖がある。

その水は含まれる魔素によって、魚はおろか微生物さえいないとされる。まさに純水が溜まっているそうだ。


今や、だれも踏み入れないその地にお客がやってくる。

落ちた木々を踏み鳴らし、ズシン、ズシンと音を鳴らしてやってくる。音を察した動物が一目散と逃げていく。


来訪したお客は湖の近くへ腰を下ろし休憩を始めた。



「ふぅ~。生き返るわぁ~。」


〖姉様、目的を忘れないでください。ユイレさんの傷を癒すために来てるんですからね。 ユイレさん、ここの水は人体に害のない程度に魔素が混ざっているので傷を洗い流すのに適しているんです。なぜなら魔素のおかげで無菌になっております!どうぞ、どうぞ、ざぷんと行ってください。〗


ユイレはボロッボロになった服を脱ぎ、湖の中に入っていく。傷だらけになった足の裏がすごく痛いが身体中の疲れが湖に吸い取られるような感じがしてくる。


「フランちゃんも、アーマーを外して入らないの?」


〖ユイレさん、申し訳ないのですが私の生身の肉体はもう機能もしておらず神経もないのです。〗


「はぁ?そんなのやってみないと分からんじゃん。」


〖あ、姉様!?勝手に外さないでくださぁぁあああ――〗


フランはノワールに運ばれ湖の中に連れていかれる。


〖ほら、何にも感じないじゃないですかぁ。外部バッテリーの無駄遣いですから戻してください。〗



ノワールはフランを乗せて背泳ぎし湖の奥まで連れていく。



〖姉様、落としたら承知しませんよ?〗


「はぁ、何馬鹿なこと言ってんだよ。んなことするかよ。」


ノワールはそう言ってフランをギュッと抱き寄せる。


〖あ、姉ひゃま!? あわわ…。〗


そして、2人で水の中に潜ってクルクル回った。


「ぷはっ、どう? なにか感じた?」


〖なんでしょう……。どういったらいいのかわかりませんが…このままずっとこうしていたいです。〗


「それは無理かなぁ。俺、行きたい国あるし。」



そんな2人の所へユイレがクロールで突撃してくる。



「ちょっと、私を置いて2人で何してるのよ~。ほんと隙あらばフランにくっ付いてるんだから。」


「いや、だってほらお前、あれだし。」


「あれって何よ。」


「もー、いいだろ〜?わかってるくせに…。」




しばし沈黙が訪れる。

3人はゆっくりと湖の流れに沿って漂う。

こんな場面に旅人が出くわせば、天使でもいるのかと思えてしまうほど綺麗な光景に見えるだろう。

木々の間からさす光芒がより幻想さをかもし出す。






咲く。夜の花よ。

どこぞへ、流れ()き着くか。

標もなき、跡もなく。

放浪の先、最後に見るには白の次。








「なんの歌?」


「てきとーな歌。」


〖そろそろあげてくれますか? 後はお2人でゆっくりしてもらって、私は朝ごはんの用意をしますから。〗



フランを岸に連れて行って、俺たちは岩の上で座った。

フランはデュエリストを装着し森に入っていく。


妹が言うにはオリジナルのデュエリストにはサバイバル機能がついてあり使用者の食料調達などを支援するそうだ。

量産された実戦配備型はコスト削減のため導入されなかった。



「ノワール!問題が!?」


「なに。」


「服、どうすればいいかな?」


ユイレが持っているものは最早、雑巾としても使用出来そうにない具合にボロだ。

まいったな。王宮から何も持ってこなかったのは失敗だった。


「はぁ、しょうがない。これやるよ。」


俺はネクタイを外して、黒色のカッターシャツを渡す。


「え!?じゃあノワール下着じゃ。それはまずいよ!」


「いいんだよ、人だって通らないし、ほら…これ。真っ黒だから案外下着っぽくないだろ?」


「確かに、遠目から見ると…。んぅ、とりあえず借りておくわ。」


ユイレは不安そうな顔をして服を着た。

実際、あなたが下着を見せている方が目に良くないのだ。ここが街道なら明らかに野盗が襲っていただろう。

捕まったら最後……いや、考えるのはやめておこう。この世界じゃ俺もその対象だ。

はぁ、ため息を着く。

俺が男のままだったらどんなに良かったことやら。



ズシン、ズシン、ズシンズシンズシン

ガサガサ


〖姉様!エビです!エビとってきました!〗


大声をあげるとデュエリストのスピーカーがハウンリングしたような高い音を発する。

それに耳を塞ぎながら返事をした。


どうやらフランが食料をとってきたらしい。


早速、俺は近くの落ちた枝をかき集め、簡易的な焚き火の準備をする。前世では親父がキャンプ好きだったから小さい頃からやっていた。親友もたまには参加していた気がする。



くしゅん。


ユイレが寒そうに手を擦り合わせている。

フランが言うには、今は10月上旬のようだ。

そりゃ、冷えるわ。しかし、この湖の水温は低くなかった。魔法石は不思議だ。外気にによる影響を受けないそうだ。



デュエリストの右手がガスバーナーのように火を噴く。

何でも出来んなデュエリスト…。



〖しっかりと焼きましょうね。お腹でも壊したら一大事ですから。〗


頭とヘタをとった、エビに表面を削った枝を突き刺す。

まるでマシュマロを焼いている感じだ。



「ふーらーんー。甘いもの欲しい〜。」


〖姉様、だいぶ戦いましたから脳が疲れてるんでしょう。 なので行き先を決めました。このまま太陽の方に進んでエルドレッド王国の港町、ホップス港に行きます。一応、シューミッド家の別荘もあるので生きていれば収穫あり、かもしれません。〗



「はふはふ、あっつ。でもよ、空き巣とかやられてない?」



「シューミッドの別荘でしょ?普通に立ってる訳ないじゃない。」



「ふぇ〜、すごいなぁ地下にでもたってるのかなー。」



〖大当たりです。別荘は地下にあります。〗


うわぁー、すっげぇさすがシューミッド。



〖ささ、皆さん。エビさんに感謝して出立しましょう。今回は飛んでいきますからね!善は急げ、状況が悪化する前に到着しなければ。〗


「「エビさん。ありがとうございました。」」


挨拶を終えるとデュエリストに捕まれそのまま空へと持ち上げられる。

ロケットエンジンで高度をあげ、100mくらい上がってから太陽、南の方角へ旋回しジェットエンジンを吹かして空を飛ぶ。


ゴーグルが欲しい。そう切に思うほど馬鹿みたいな速度だ。


〖えーえー、ご搭乗の皆さん聞こえていますでしょうか、本機は約30分後に目的地へ到着する予定です。ごゆっくりお過ごしください。〗



ごゆっくりできるか!と物申したいとこだが今口を開ければ、次に閉じれるのは着陸時になるだろうから止めた。


体感で時速100km/hは出ているだろう。

航空機にしては遅い方か。


目を細めて見える景色には前方に広がる大きな海を映している。それは遠くから見ても美しいエメラルドグリーンをしていた。













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