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4話後編 ユイレ・アルバロン






なぜ寝ている。

汝にいつ寝ていいと申した。

仕事は終わったのか?



もういいだろ。

この世界に必要とされていないんだろうしさ。俺は。

また、どっかに転生させてくれよ。こんどはちゃんとした世界にさ。



いや、汝はここでやるべきことがある。

ここで世界を改変すれば汝の存在すら消滅するだろう。



意味がわかんねぇよ…。



汝がここでその選択をすれば2度、魂を無くしたことになる。

3度目に至る資格を汝は持っていない。



資格?



そうだ、資格だ。

我々が提唱している条件をクリアした者だけが次元を超える資格を持てるのだ。



条件は?



そんなもの教えるわけないだろう。

世界の探索者である全ての生を受けた者は等しくなければならないのに、汝、1人に答えを教えれば、秩序は崩壊する。

汝はまだ、恵まれた方だろう。答えさえ見つけれず、死にゆく者の数を数えてみよ。



はぁ……。




はっきりとしないようだな。

もう、戻るといい。汝を世界に固定しておきたい者が来ている。そいつに答えを授けるのだ。


今日は死ぬにいい日でない。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






真っ暗だ。目を動かしても何にも情報が入ってこない。


しかし、よくよく目を凝らしてみると遠くで線香花火が光っているのが見える。


そして線香花火の火球が落下した。それはどこまでも、どこまでも下へ落ちていく。

火球は落下しながらも花をさき続けた。


俺は地面に落ちずに消えない線香花火を初めて見た。


いや、違う。俺と線香花火が落ちているのだ。

どこへ向かっている?

どこへ終着するというのだ。



落下しだして、20秒ほど…。真下に人間が見えた。

その人間は酷く損傷していて目の光を失っている。




我々が人間のそばに訪れた時、もう1人の人間がフラフラとした千鳥足でやってくる。その黒い人間が、倒れている人間に赤い、赤い宝石を入れ込む。


その瞬間、線香花火と俺は倒れている人間に吸い込まれた。







「ノワール…さん…。ノワールさん…。お願い、お願い、帰ってきて…。」



揺らされた人間の体がゴキゴキと骨を鳴らし、立ち上がる。

拡張兵装05はその役目を終え、バラバラに崩れていく。


「ノワールさぁぁぁん!!あぁぁぁぁ……」

俺が振り向くと、ユイレが大泣きしている。

足は擦り切れ、血が流れ、ドレスはビリビリに裂かれている。


そして俺の脳内にビデオを高速で巻き戻したような、ギュルギュルとした音が鳴り響く。






相対した兵士はこう語った。

少女は青と朱のオッドアイをしており、その両目から火を吹いていたように輝いていると。



シューミッドの最終兵器だと。







「あぁ、くそ…ちっ。」







無礼なる王国の兵士など消えてしまえば良いのだ。


もう、アナウンスは聞こえない。

自分の体を全て掌握したように自由に、宙を舞う。


もう、私に敵はいない。

今ならあのシリウス・アルバロンさえも圧倒できるだろう。




俺は考える、なぜ彼女が助けてくれたのか。

自身の家を尊重するなら助ける必要などないのだ。


俺がスタスタとアルバロン担当領地へ向かっても。

彼女は足を引きずりながら着いてくる。

まるで捨てられた子犬のように。



俺は振り返り、彼女を睨む。



「ごめんなさい。ご、ごめんなさい…。ごめんなさい。」


彼女は再び目を湿らせ声を震わす。

ユイレが謝る必要はないのに。

悪いのはあの、脳の腐ったシリウスなのだ。奴を、奴だけは叩きのめさなければならない。



「ノワールさん!」

「もう、いいの…いいでしょう…これ以上、傷つけるのは止めましょう。」



俺はユイレに近づき胸ぐらを掴む。


「これは俺が成さなければいけないことだ!お前は大人しく兵士に保護してもらえ、これ以上、ユイレの、お前自身の状況を悪化させるな!」



ズルっと彼女のドレスがはだける。




俺は見てはいけないものを見てしまう。

彼女の胴には深く抉られでもしない限りつかないような巨大な傷跡があった。

それは彼女の過去に想像を絶するような悲痛な経験をした、と物語っているようだ。



「あっ、あ…あ。」


ユイレは口をパクパクして過呼吸になっている。

これはそれほどのトラウマのようだ。

俺は手を解き、下ろしたが、今度は右腕が彼女の腹に触れた。


「ひっ!」


その時、何故か右腕が言う事聞かなくなった。





咲き乱れるは赤花火…踊れや踊れ粒子の層

化けれや火緋色…夜に咲け…芽吹けや魂……




歌が聞こえる。



あぁ、そういうことだったのだな…神様。





もう、俺は彼の名を呼ぶことはできない。

忘れてしまったのだ。自身の名を捨てた時から。



右手が離れたあと、彼女の胴と右腕の間に拳銃が現れる。

その拳銃には引き金もスライドもない。

四角い長方形の、全ての面に赤のラインがたくさん掘られている。銃口も照準も無い。

そこにグリップが着いているだけ。




「の、ノワールさん…これはなに?」


俺の視界にはログが出現していてこの武器の名前を表示している。


〔���式��アンチキャノン〕



「ユイレ、これ。あげるよ。」


「え?」


彼女の手に乗った武器は意外と重く両手で持ったのに、グッと下に下がった。


それを手にしたユイレの目の瞳孔が一気に小さくなる。

そして、また涙を浮かべた。


「ぁぁ……わかったよ。全部。」



ユイレはどこらでも見ることが出来るあの城。

それに向かってアンチキャノンを向ける。


「俺の縛りを解く。消滅しろ。」




その言葉がトリガーとなり、赤い光線が城に向かって伸びる。全ての障壁を巻き込んで破壊しながら。


俺たちは崩壊する城を眺めていた。


巨大な城は雪崩のような土煙を起こして崩壊していき街の大部分をその影で覆い隠した。


2人の少女は飲み込まれ消えていった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




覚醒後

警備隊と対峙した時のノワール・シューミッド

挿絵(By みてみん)





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