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18話:とりあえず蟹狩りです!


「これじゃあ、どっちが護衛か分かりません……ほんとお二人はもう少し塔について勉強した方が良いですわ……」


 サレーナが今しがた砕き、地面に散らばった巨大蟹の甲殻を拾いながら、説明する。


「良いですか、三階層のここ【冥海の砂底】は、特殊な効果が階層全体に及んでいます。それは――【魔術阻害】」

「まじゅつ……そがい?」

「なんだよそれ」


 ピンとこないヘカティとルーケがサレーナを手伝い、甲殻を拾ってはヘカティのポーチへと入れていく。


「名前の通り、魔術の阻害をする効果です。この階層の別名は、魔術師の墓場、ですわ。魔術は一切使い物にならない……と考えてください」

「まじかよ……どうするんだよ」

「困ったねえ」


 サレーナがそんな二人の言葉を聞いて、溜息をついた。


「一応、方法はありますよ。この巨大蟹――【タイラントクラブ】の甲殻には、【魔術阻害】の効果を弱める効果があります」

「おお! だからこうやって拾っているんだね!」

「このままでは使えません。これを一度街に持って帰り、武器にします。その武器を魔術触媒として使えば……多少はマシになるそうです。ただし……お二人の魔術は強力な分、かなり大規模な魔術だと推測できます。そういった魔術ほど阻害の力は強まるので……これまで通りには使えないと思った方が良いですわ」

「なるほど! じゃあ、とりあえずは蟹狩りだね! いっぱい素材集めて武器を作ろう!」

「魔術が無くても戦えるところを見せてやるぜ!」


 意気込むヘカティとルーケだが、サレーナは正直大して二人に期待していなかった、のだが――


「とりゃあ!!」


 ヘカティが思いっきりハイキックをタイラントクラブに叩き付けると、流石にサレーナのように弾け飛ぶまではいかずとも、その巨大なハサミが凹む。


「なんで魔術無しでも戦えるのですか、あの人は……」


 タイラントクラブをボコボコにしているヘカティを見て、サレーナは思わず呟いてしまった。


「あー、なんかあいつ、常に加重魔術を自身に掛けているから、気付いたら身体能力が異常に高くなったらしい。魔術がなくても強いとか反則かよ」

「ですわね……。魔術使えない分、近接戦闘術を沢山練習した私が馬鹿みたいですわ」


 悲しい声を出すサレーナだったが、魔術がないと蟹一匹倒すのにも苦労するルーケからすれば、メイスの一撃でタイラントクラブを粉砕する彼女も十分化け物だった。


「そろそろ戻りましょうか。甲殻も十分集まりましたし」

「了解!」

「結局、後半はあたし全然役に立たなかった……」

「仕方ありませんわ。魔術触媒を変えればまた変わりますよ」


 こうして3人は何ごともなく、王都へと帰還したのであった。


☆☆☆


 王都――職人街。王家御用達の鍛冶屋【ラッセンの武具屋】


「おお!! 凄い!! 武器がいっぱい!」


 その狭い店内は、所狭しと武器や防具が置かれていた。


「ん? 冷やかしなら、帰れ。お嬢ちゃん用の武器も防具もうちにはねえ」


 入って来た三人の小娘を見て、店主であるラッセンがぶっきらぼうにそう告げた。


「そういう態度だから、いつまでも店が大きくならないのですわ――ラッセン」


 そう言って、サレーナが帽子をあげると、笑顔をラッセンへとむけた。


「……おお! 誰かと思えば、サレーナ王女じゃねえか。見ないうちにデカくなったな!」


 ラッセンに対し、偏屈爺……という印象を抱いていたヘカティとルーケだが、彼のサレーナを見る目は孫を見るそれだった。


 無愛想な顔には笑みが浮かんでいる。


「ご紹介しますわ。彼はラッセン。我が家御用達の鍛冶屋ですの。腕は超一流なのに本人にやる気がなくてこんな小さな店しかやっていないんですわ」

「良いんだよこれで。んで、護衛も連れずにどうした」

「あら、彼女達は立派な護衛ですわよ? たった二人で三階層まで私を無傷で連れて行ってくれましたから」

「二人で、三階層だあ?」


 疑いの目をヘカティとルーケに向けるラッセンだが、しばらくすると溜息をついた。


「俺の目も濁ったようだな。で、何が欲しいんだ」

()()――ですわ。三階層で通用する魔術師用の、武器」

「……なるほどな」


 ヘカティがポーチを開けると、タイラントクラブの甲殻の山を取り出した。


「材料は山ほどありますよ!」

「……そのポーチどうなってやがる」

「秘密です!」


 ニコニコと笑うヘカティを見て、ラッセンが再び溜息をついた。どうやら見た目はただの小娘でも、中身は違うようだ。


「良いだろう。作ってやる。どんな武器が良いんだ? 杖か? 短剣か?」

「あー、あたしは考えてた奴があってさ。これを――こうで――こうなんだ」

「……おいおい、この曲剣まさか――」

「だから、予めこれに魔術を込めてだな――」

「面白え」


 ルーケが何やらラッセンに説明している間、武器と言われても、イマイチピンとこないヘカティは無造作に置いてある武器を見ていた。


 短剣しか使ったことないので、短剣でも良いのだが、あのタイラントクラブを短剣で倒すのは苦労しそうだ。魔術阻害が緩和されるとはいえ、これまで通りに使えないと想定すると、魔術を使う事を目的とするよりも――単純な()()()を求めた方が良いかなあ、と漠然にヘカティは考えていた。


 そんな彼女の目に――とある物が映った。

 

 長い柄の先に巨大な鉄塊が取り付けられており、鉄塊の右側は斧になっているが、左側は平面になっていた。


「これは――なんですか」


 ヘカティがその武器を指差すと、ラッセンが怪訝そうに答えた。


「あん? ああ、そりゃあバトルハンマーだな。だけどそいつは人間用じゃねえ」

「人間用じゃない?」

「昔、巨人族ってのがいてな。そいつらが使っていた武器……らしい。俺が作ったわけじゃなくて、塔に発掘されたもので、処分に困ってそこに置いているだけだ。言っとくが、鍛えた戦士でも持つだけがやっとの武器とすら呼べない代物だぞ? お嬢ちゃんには無理だ」

「そうかな?」


 そう言って、ヘカティはそれをひょいと持ち上げた。


「おおー、結構ずっしりくるね」

「……まじかよ」


 ラッセンがあんぐりと口を開けて驚いていた。


「凄いですわ。でもヘカティ、魔術で軽くしたって、三階層ではそもそも使えない可能性があるので、意味ありませんわ」

「軽くしてないよ? 普通に素で持てる」

「……そうでした」


 サレーナは忘れていた。そもそも、ヘカティの身体能力が異常だったことを。


「ラッセンさん! これと同じ形で、それ以上の重さに出来ます!?」

「いや……形はともかく、それ以上の重さは材質的に難しいんだが」

「あ、じゃあ私が手伝いますよ。魔術で圧縮すれば多分、より高密度になって重くなりますし」


 ヘカティが嬉しそうにそう説明するのを見て、ラッセンが思わずサレーナへとこう呟いてしまった。


「……サレーナ王女。あんたの護衛は何者だ……?」


 それにサレーナはこう答えるしかなかった。


「……魔女、ですわ」

というわけで、ヘカハンマーの作成が始まります。ルーケの曲剣にも何やらギミックがあるようで……



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「10話:仮面の変な奴らです!」 「……そのポーチ、見た目より随分と容量があるね。もう二十個近く入れてない?」 「あー、ポーチの中に【重力】魔術で収納スペースをいっぱい作ってあるんで見…
[一言]  へカティちゃんは人外(再確信)
[一言]  バケモノ蟹を蹴りで凹ませ、巨人用のハンマーを軽々と 持ち上げる。  ・・・・魔術師って何だろ。
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