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16話:三人で楽しくお散歩です


 第二階層【孤立無援の死戦場】――十階。


「なんだか、拍子抜けですわ。塔とはこの程度なのでしょうか」


 そんな事を言いながら、サレーナがのんびりと暗い荒野を歩いていく。腰には細いメイスが差してあるが、使う機会はここまでほぼなかった。


「まあ、基本的に私とルーケが組んだらそうなるよ。この二階層って物理的な肉弾戦メインな魔物が多いし」


 そう言いながらヘカティが自身を中心とした広い範囲に【レビテーション】の魔術を掛けていた。


「あたしの頑張りのおかげだろ! ってまた来やがった!」


 雷となり、ヘカティの魔術範囲内を駆け巡っていたのはルーケだった。


 ルーケの魔術は、既存の魔術とは全く違う物だった。彼女の魔術の本質は――雷への形態変化であった。身体――身に付けている物を含めて――全てを雷にして、自由に動く事が出来る。


 これによって彼女は半ば重力を無視して、雷撃の速度で縦横無尽に駆け巡る事ができる。そしてその速度を乗せた、曲剣による斬撃を見切れる者も、耐えられる者も少ない。


 そんな規格外の能力を持つ二人が考案した、【楽々ダンジョン散歩フォーメーション】によって、ここまで難なくこれたのだ。

 

 【レビテーション】によって範囲内に入ってきた魔物の重力をなくし、そこを重力の影響を受けづらいルーケが素早く狩っていく。


 この無敵のコンビネーションを破れる魔物はおらず、今もまた哀れなブラックオーガが宙でもがいているところにルーケが接近。雷撃の如き速度で放たれる曲剣で身体が切断される。


 ヘカティはちゃっかり魔石だけ、重力の中心を自分に定めて、勝手に飛んでくるようにしていた。


 こうして魔石だけがどんどん集まっていく。


「便利な魔術ですわね」

「まあね。色々と出来る事が分かって来て楽しいよ」

「羨ましいですわ。私は魔術が使えないんですの」

「そうなんだ。珍しいねえ。女性ならみんな何かしら魔術を使えるはずなのに」

「魔術は淑女の嗜みですものね。まあうちの家は少々特殊なので、学院にも通いませんでした」


 迷宮内で交わされている会話とは思えない内容にルーケが溜息がついた。


「なんか……あたしだけ戦ってるみたいで釈然としねえ」

「だって、〝雑魚狩りはあたしがやる!〟 って言いだしたのはルーケだよ。全部私がやってもいいけど」

「……それは……まあ」


 そんなヘカティとルーケの様子を見て、サレーナが小さく笑う。


「ふふふ……羨ましいですわ。お二人は仲良しで」

「そうかな? それにもうサレーナとも仲良しだよ!」

「同じ年頃の同性が集まったらこんなもんだろ」


 それぞれの答えに、サレーナが笑顔を浮かべた。


「そう言ってくれる人が、今まで居ませんでしたから。それに私を同級生扱いしてくれる人も」

「だって、そう言いだしたのはサレーナだろ? 冒険者に上も下もないって。今は王女じゃなくて駆け出し冒険者だと思っているからな、あたしは」

「私もだよ~。というかサレーナがお姫様って聞いてびっくり!」

「なんでヘカティは自分の国の王族を知らないんだよ……そっちの方がびっくりだよ」

「だって私この国に来てからはずっと学院にいたし」


 なんて会話しているうちに――前方に、巨大な建造物が見え始めた。


「あれがそうだろ」

「第三階層への転送装置があり……そして階層主――【竜鉄兵】がそれを守っている場所ですわ」


 サレーナは塔について、事前にかなりの知識を頭に叩き込んできた。


「まあ、どんなのか知らないけど、余裕でしょ。あ、階層主は私がやるからね!」

「へいへい。流石にちょっと疲れたよ。この階層の魔物は好戦的すぎるんだよ。どうせ勝てねえんだから近付いてくんなっつーのに」


 そう言いながら、近付いてきたレックスベアの頭をルーケが斬り飛ばす。


「……えっと。階層主の情報とか、ご存知ないのですか?」

「ん? うん、知らない」

「あたしも知らん」


 そんな二人の言葉を聞いて、サレーナが目をまん丸にした。兄から聞いた話によると、その階層の魔物と比べ物にならないほど強いので、挑むときは入念な下調べと準備が必須……らしい。


 なのに、この二人は行き当たりばったりにもほどがある。


 実力があるからこそなのだろうか? 冒険者も中々に豪毅なものだと、勝手に感心していたサレーナだった。しかし、彼女はゆくゆく分かる事になる。この二人が異常なだけだと。


 徐々に近付いてくるその建造物は円形であり、サレーナは遠い砂漠の国にあると言われている、コロシアムと呼ばれる闘技場によく似ているな、と思った。


 そしてその壁面には、まるで猛獣の口のような門が開け放たれていた。


 何の疑問もなく、三人がそこを通っていく。


 そして暗い通路を進んだ先に出口があり――その先には、やはりサレーナの予想通り闘技場があった。


「おおー、なんかすげえな。観客がいねえのはちと寂しいが」


 そんな闘技場の真ん中に、鈍色の巨大な騎士が跪いていた。竜を模した全身鎧に、兜もまるで竜の顔のような形をしている。右手に巨大な大剣。連装式の巨大なボーガンと一体化している左手は上へと向けられていた。

 

「あれが階層主かな? あっ! 二人とも手出し無用だからね!」


 嬉しそうにそう言って、ヘカティが前へと歩み出た。


「さて……グラビトンの魔女の力……存分に見させてもらいますわ」


 サレーナがそう言って、目を細めた。


 しかし彼女はすぐに知る事になる――規格外という言葉の本当の意味を。


次話はVS竜鉄兵さんです。

今からお焼香の準備をしておきましょう……、ヘカティの新技があれこれ出てきます!

お楽しみに~


【作者からのお願い】

現在、ランキング一桁を目指して頑張っております。

1章が完結しました。この先の主人公達の活躍を書くモチベーションアップの為にも、是非ともブクマや評価をいただければ幸いです。


ブクマは画面上部、評価は広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にするだけなのでどうかよろしくお願いいたします。

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ハイファン新作です! 冒険者のパーティに潜入してランクを決める潜入調査官のお話です!たっぷりざまあがあるので、お楽しみください!

冒険者嫌いのS級潜入調査官 ~冴えないおっさんなんて要らねえんだよ、と追放されたので査定は終了だ。ん? 元Sランク冒険者でギルド側の人間だって知らなかった? 今さら遅え、Eランクからやり直しな~



興味ある方は是非読んでみてください
― 新着の感想 ―
[気になる点] んー、1話のヘカティの独り言を読んだ時に「あ、この子は常時敬語口調なんだな」と思っていたのですが、ルーケと出会って以来、普通にタメ語で喋ってますね。 相手によって口調を使い分ける(つ…
[一言] 縮退で一発! かなw
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