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勇者の謝罪

フルングニルが沈黙し、教皇庁側の敗北という形で戦闘は終わった。


レミリアは疲れたので正直宿にでも寄って休みたいが、首謀者にフィーンフィルの代表として文句を言って帰る必要がある。


しかし黒幕のルカリオが死んだのに教皇をはじめ他の司教も現れない。誰も関わりたくないのだろう。


仕方ないので教皇の部屋に押しかけようかとアレイスターが言い始めたところで、カイエンが提案をしてきた。


「また数日後に会談の場を用意するから、とりあえず今日は休んてはいかがかな。宿はこちらで用意するが」

「毒とか変な魔術とか仕込むんじゃないですか?」

「俺は無駄なことはしないし、お前たちにそんなもの仕掛けても効果あるまい」


まだアルミダから王都に送った報告の回答も無いし、少し待ってフィーンフィル側の体裁を整えるのは正解だろう。アレイスターが承諾する。


フェンリルは丸まって大人しくしていたが、見計らったように起き上がった。


「ならば我らは帰るとしよう。なかなか楽しき出会いであった。レミリアよ、この依代を通じてお前の魔力を喰らうのを楽しみにしておるぞ」

「フェンリル様ありがとうございました。でも嫌な言い方しないで欲しいです」


ヘラも続いてレミリアに挨拶する。


「兄上は美味い魔力に目がないのじゃ。では妾も帰るのじゃ。レミリアよ、今回も試練を無事に乗り越えてくれて嬉しいのじゃ」

「ヘラ様もありがとうございました。今回もヘラ様がいないと無理でした」

「ふむ。また困ったら呼ぶが良い。力になるのじゃ」


神々はすっと消えた。

フェンリルがいた場所には元の姿のオルトロスが残された。

心なしか多少禍々しさが増したように見えるが異常は無いようで、大型犬サイズに姿を変えてレミリアにすり寄ってきた。


「オルちゃんもありがとう。毎回無理させてごめんね」


レミリアは思いっきりもふもふしてあげた。オルトロスは嬉しそうに尻尾を振っている。


「レミリア、少し良いかな。ベルが話があるみたいなんだ」


アレイスターが手招きしている。

ベルはまだ立ち上がれないようだ。座り込んで神妙な顔をしている。


ベルはレミリアに言わなければならないことがあった。


精神操作されていた状態だったとはいえ、ベルの心の弱さにつけ込まれて魔王復活を防ぐために魔族を殺して回るなどという、とんでもないことをしでかしたのだ。


「レミリア、君達と剣を交えた日から考えたんだ。ボクは君たち魔族に贖罪しなくてはならないと。だからボクは決めたんだ。この後、準備が出来たらボクはガラリア帝國領に渡り、魔族の生き残りがいたら助けて回る旅に出るつもりだ」


ガラリアは弾圧が厳しく魔族はもう住んでいないと言われている土地だ。

しかし、そんなことをしてもらってもレミリアの気が晴れるわけではない。

レミリアが難しそうな顔をしていると、アレイスターが苦笑いしている。


「まあレミリアも難しく考えないで。それで水を流してって話じゃなくて、ベルは間違いを認めただけなんだよ。ベルは素直じゃないから」

「おいおいアレイスター。ボクを判ったように言うな」


ベルが膨れっ面になる。レミリアは吹き出してしまった。

ベルがそういう活動をするなら、実は気になることがあるのでベルにお願いしようと思った。


「ベルさん、わかりました。もし、ベルさんが旅先でマイラ村の人達の移転先を見つけたら教えて欲しいです」

「うん、見つけたら君に報告するね」

「転移術式を保存している集団。僕も気になるね」

「ベルさんが見つけてくれてもアレイスターさんには教えません」

「え!? そんな後生な」


アレイスターは戯けていたが、少し真面目な顔をして闇の魔導書を取り出した。


「これはヘラ様やフェンリル様のページが追記された特別なものになった。僕より君が持つに相応しい。レミリア、受け取ってくれないかい」

「え? 欲しかったから全然嬉しいですけど、こんな大事なものを貰っていいんですか?」

「闇の魔導書自体は紙と僕の権能を使えば作れるから。君なら大丈夫だろうから魔術もしっかり覚えて実践したらいい」


アレイスターの権能。レミリアにも話の断片から大体わかってはきたが、意図的に隠されていた気がする。


「アレイスターさん、賢者の石のことを私に隠してませんでした?」

「あはは。ばれた? 僕がリスク無しに蘇生術を使えることが知れたら、ベオウルフを生き返らせるように言われるかもと考えてさ」

「まあお願いしたかもしれませんけど……生き返らせて問題ありました?」

「せっかく神の死霊魔術がかかっているのに、それじゃ面白くないじゃないか」

「……最低ですね。リリ、今からでも考え直した方がいいよ」


リリは座り込んだベルを支えながら、珍しく微笑んでいた。いや、わかりにくいが微笑んでいるはずだ。


「今日に始まったことじゃない」

「おいおい、リリまで」


アレイスターは再び襟を正した。


「僕とリリは一旦王都に帰るよ。バリアントには出張していただけだからね」

「あ、そうか。エレオノーレさんの件も解決しちゃったし。少し寂しいなあ」


割とレミリアの本音だ。よく喋る説明好きの魔導馬鹿がいないと少し静かになるだろう。


「リリとは正式に夫婦になりたいと考えているんだ。またお披露目する時は君たちも呼ぶよ。バリアントは近いからまた遊びに行くし」

「え、結婚ですか? リリいいなあ……」


リリは真っ赤になってオロオロしている。アレイスターは決めたら急性で真っ直ぐだ。


「レミリアもあそこのアレにして貰えばいいじゃないか」

「まだ出会って一月も経ってないんで……」

「したい時にするものさ。出会って3ヶ月で結婚とかよくある話だから、一月だって余裕だよ」

「まああちらさん次第なので」


レミリアはベオウルフを見た。ベオウルフも丁度レミリアを見ていたようで目があった。

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