エテメンアンキ突入
教皇庁領はそれほど広くなく、飛行して半日もせずエテメンアンキが見えてきた。
王都ほどの広さはないが、かなり広大な都市であることに変わりはない。外敵を想定していないのか外壁はそれほどの高さはなく真っ白で美しい。
遠目でも見える中央にそびえ立つ純白の神殿は歴史的な風格と芸術性を兼ね備えている。
その周囲は整った庭園が広がっており、居住区や商業区も理路整然と建ち並び綺麗に清められている。
中に巣食う連中からは想像がつかない、聖地と呼ぶに相応しい外観だった。
1泊したとはいえ、高速で移動したので逃げた神殿騎士団に追いつくかと思っていたが、強行軍で帰還したのか結局追いつかなかった。
結構魔力を消費してしまったので、レミリアたちはマジックポーションを飲んでおいた。
神殿騎士団は到着したばかりなのか特に警戒態勢にはなっておらず正門から普通に入ることができた。レミリアの頭の角付近に認識疎外魔術は必須だが。
「普通に入れるなんて拍子抜けですね」
「罠という可能性もあるけど、準備時間を与えると不利になるだけだし、このまま神殿に乗り込もう」
しばらく歩くと再び門が現れた。遠くから見た中庭の部分は全て壁に囲まれていたようだ。門番に用件を伝えなくてはならない。
「フィーンフィルから来たアレイスターといいます。ルカリオ猊下に取り次いでいただきたい」
「アポイントはございますか?」
「いえ、突然伺いました」
「少々お待ちください」
門番は確認するためだろうか、中に入って行った。
「アポイントときたか。普通に司教に会いにきた客を無碍にもできないって対応だな」
「何も聞いてない感じだったね。流石にルカリオまで素通りできるとは思えないけど」
しばらくすると門番ではなく、神官の男が迎えにきた。
「どうぞ、こちらにお越しください」
恭しい態度で案内され、更に拍子抜けしながら広場まであるくと、カイエンと神殿騎士団が待ち受けていた。いつの間にか案内していた神官はいなくなっている。
「ルカリオ猊下に用事があるんだけどね」
「ルカリオ司教はお会いにならない。貴様らはここで死ね」
「いきなりご挨拶だな」
レミリア達は臨戦態勢を取った。リリが顔合わせはしているが、それ以外は初対面だ。
「おっと、失礼した。私は教皇庁神殿騎士団団長のカイエンだ。これから君たちを異端者として処分する」
「僕達はフィーンフィル国王の命で調査に来たんだ。君達がバリアントで行った悪事は全て国王の御前で説明している。アルミダで全て裏が取れたし、君達の方こそ罪を認めたらどうだい?」
カイエンは無言で合図をする。神殿騎士団と聖女隊からレミリア達目掛けて様々な属性の魔法が飛んでくる。それをレミリアとアレイスターがシールドを展開して全て防ぐ。
「流石に効かんか。全員、かかれ!」
真っ先に突っ込んで来るカイエンをベオウルフが斬撃で止める。ベオウルフはいきなり2本とも剣を抜いているが、カイエンは金属の小手のようなものでベオウルフの剣を止めた。
「バリアント卿、相手に不足はない」
「こいつ、強い!」
そのまま拳撃と斬撃の応酬を始めてしまった。
レミリアはシールドを張りながらオルトロスを召喚して神殿騎士団に仕掛けた。オルトロスのブレスが神殿騎士団を吹き飛ばすかに見えたが、聖女隊のシールドがそれを防ぐ。
アレイスターもシールドを展開しながら、強力な単体魔法で神殿騎士団を少しずつ屠っている。
「リリ、聖女隊を崩してくれ」
「かしこまりました」
リリはアレイスターと目が合うと昨晩のことを少し思い出す。身体に力がみなぎってくる。
アレイスターは苦笑いだ。
「リリ、気をつけてくれよ」
リリが神殿騎士団をサポートしている聖女隊に斬りかかるが、そこでリリの短刀を弾く者が現れる。
「君の相手はボクがしよう」
「ベルさん!?」
リリは驚いた。まさかベルに剣を向けられようとは。
慌てて後退してアレイスターに指示を仰ごうとするが、ベルは追いすがって切りかかってくる。
「異端者め! 逃さないよ!」
「ベル! 何をしているんだい!? 相手はリリだよ!」
アレイスターが叫ぶがベルには届かない。奥からフェイがニヤニヤしながら様子を窺っている。
アレイスターはベルが何かされたことを悟った。
「リリ、仕方ない。なんとかベルを抑えてくれ。何か手を考える」
「ちょっと厳しいですが……」
リリはベルの剣を受けるが、ベオウルフと打ち合える程の剣技に敵うわけがない。防ぐだけで精一杯だ。
ベルはリリを軽くいなしながら、レミリアに魔法を放つ。レミリアのシールドが追いつかなくなる。
「ベルさん! まだこんな人達に手を貸すんですか!?」
「魔族がボクに話しかけるな」
ベルが無属性魔法を放つ。アレイスターが間一髪シールドを挟み込む。
「ちっ! 邪魔な奴らだな」
ベルは苛ついたように吐き捨てる。力任せに剣を振り、リリを吹き飛ばした。そのままレミリアに斬りかかる。
クリスが能天使を3体召喚し、ベルにぶつける。ベルは3体の能天使の剣撃を軽く受け流す。体勢を立て直したリリも加わり、4対1でなんとか拮抗した。
それを見たアドルフィナが能天使を睨みつける。
「お姉様! 生きていたのですね」
顔も声色も全く喜んでいるものではない。能天使に向けて強力な闇の魔法を放つ。能天使が1体消え去った。
「クリスティナ、いるのでしょう?」
「あらあら、お姉様と言わないのですね」
レミリアの懐からクリスが現れる。能天使を1体やられて魔力を大分ロスしたが、笑顔は崩さない。
聖女隊から声が上がる。
「クリスティナ様! 生きておられたのですか。良かった!」
「ふふふ、あなた方は良い子ですね」
クリスは聖女隊に大人気だった。全員、学院時代からクリスの子飼いなのだから仕方ない。アドルフィナが歯噛みする。
「あなた達、あれは敵ですよ。ちゃんとしないとあなた達も異端者になりますからね」
「もう、アドルフィナは頭が硬いですね」
クリスが悪気無く煽ってアドルフィナが無言で怒っている。この2人相性悪すぎるとレミリアは思った。




