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リリの決意

「私もクリスのアドバイスが欲しい」


リリにまで言われると、クリスも何も言わないわけにはいかない。レミリアとベオウルフの時に悪ノリしすぎたなと少し後悔しながらも、とりあえず思ったことを言ってみた。


「え、うーん……今からリリさんとアレイスターさんだけでお食事ですし、少し飲んで勢いで告っちゃうとか?」

「いいですね、それ。ぶっちゃけアレイスターさんの指示のせいで死にかけた訳ですし、気が弱ってる感じで責めてみましょうよ」


リリは2人とも他人事と楽しんでいるなと思った。でもアレイスターに引き取られて10年、もう年齢も外見も成人を越えた。


聡いアレイスターのことだ。リリの気持ちなんてわかっているかもしれない。いつまでも保護者面しているが、特に成人したリリの将来に口を挟むことはない。


真正面からぶつかってみて、進むか別の道を探すか考える良い機会かもしれない。とはいってもアレイスターからは離れられないだろうし、アレイスターもリリの気持ちに応えなくてもリリを悪いようにはしないのは間違いない。応えてもらえなかったらなんて、考えただけで辛いが。


「やる」

「「ええっ!?」」


2人の声が唱和する。言った割には無理だと思っているのだろうか。


「やっぱ無理かな……?」

「ううん、いつか言わなきゃいけないことだし、言わないと後悔するだろうし、いいんじゃないかな」


成功者レミリアは饒舌だ。クリスも考えは同じだが。


「応援してますね!」

「リリ、頑張って!」


リリは脱衣所に戻ってからも念入りに髪を梳かして意気揚々と出て行った。


レミリア達は外で済ませていたので、アレイスターとリリだけで宿屋で夕食をしていた。食事はなかなか美味しいはずなのだが、先のことを考えるとリリは緊張して味が良くわからなかった。


おまけに計画どおりアレイスターの真似をして慣れないワインなど口にしたものだから、酔うというより気分が悪くなってきた。


「リリ、顔色が悪いよ。やはり昼のダメージが残っているんじゃないかな。今日は早く寝たほうがいいよ」

「だ、大丈夫です」


はあ、とリリはため息をついてしまった。アレイスターはいつも優しくしてくれるし、守ってくれるし今のまま何の不満もないのだけれど。


結局、あまりお酒は進まないまま食事を終えてしまった。リリは疲れもあって少しだけフラフラする。


「今日は本当にすまなかったね。送るからゆっくり休んでくれるかい」


アレイスターが手を引いて歩いてくれる。どうせ子供扱いしているだけだとリリは思ってしまうし、実際そうだった。


部屋に着いてリリがベッドに座ると、アレイスターは優しく「おやすみリリ」と声を掛けて自分の部屋に帰ろうとする。

リリは勇気を出して声を上げた。


「アレイスター様!」


アレイスターはリリを振り返ると、なんだか思い詰めたような顔をしているリリをじっと見た。


「リリ、どうしたんだい。眠れないなら暫く見ててあげるよ」


父を失って沈んでいた時も、そんな様子で見守ってくれた気がする。結局子供扱いしかされていないのかと悲しくなってリリは黙ってしまった。


リリが疲れて調子が悪いようにも見えるし、機嫌が悪いようにも見えるし、アレイスターは困った。

リリの手を取って横に座った。


「どうしたんだい? 不安や悩みがあるなら聞くから話してみないかい?」


リリはそうされると緊張して仕方ない。容易くリリの手を取ってくる。リリはこんなにも意識してしまうのに。

不満と希望ならあるので、もうぶちまけてしまうことにした。


「アレイスター様は私のことをどう思われますか」


アレイスターとしては思わぬ質問に固まってしまった。質問の意味がわからない程馬鹿ではないので、リリの様子がおかしい理由はわかった。


即答されるのは怖いのか、リリは普段からは考えられないほど饒舌に話し始めた。


「アレイスター様に拾っていただいて10年になりました。あの時はまだ小娘でしたが、もう充分に成長できたと自分では思っています」


リリはクォーターエルフなので、エルフよりは寿命は短く成長が早い。人族に比べたら長く生きるが。引き取られた時、人族の12歳くらいの外見だったが、今は18歳のクリスと同年代に見える。


アレイスターは難しそうな顔をしている。何を考えているのかわからなくて、リリは思い詰めて涙が流れてきた。


「私はアレイスター様をお慕いしています。アレイスター様は私を子供としか見てくれませんか?」


リリは言い切った。つい、握ってくれているアレイスターの手を振りほどいて、膝の上で拳を握りしめる。怖くて強く瞑った目から涙が止まらない。


「リリ。君は僕にとって大切な人だ。君をこんなに悩ませていたなんて、僕が君に甘えていた証拠だ」


アレイスターは優しく諭すように語り出す。


「君は僕の友人の忘形見であって、僕の娘じゃないんだ。僕は君を預かったが保護者としては失格さ。保護者として君の先のことを考えずに、僕の為に君をずっと側に置いてきた」


リリはじっと聞いている。遠回しだなーと思う。今のところ何が言いたいのかよくわからない。でも、リリの為に言葉を選んでくれているのはわかった。


「君は立派に大人の女性になった。僕は君を子供などと侮っていないよ。とても魅力的な女性だと思う。今まで当たり前のように過ごしてきたけど、僕はこれからもずっと君に一緒にいて欲しいと思う。その君が僕を慕ってくれるなら、共に伴侶として過ごすのは僕にとって最善だ」


告白したら求婚されている。リリは突然の流れに涙がとまっている。この人真面目すぎる。


「リリ、これで答えになるかい?」


どうだろう。何か足りない気がする、とリリは思う。

涙の跡を残したまま、リリはじっとアレイスターを見つめた。


「君には敵わないなあ……」


アレイスターは照れ臭そうにリリを見つめ返す。


「リリ、愛している。伴侶としてこれからもずっと側にいてくれないか」

「はい、喜んで」


リリは泣き笑いの表情でアレイスターに応えた。

アレイスターがリリを抱き寄せると、リリは身体を預け、2人は抱き合った。

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