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アルミダの教会

炎が収まると、レミリア達がいた建物だけが瓦礫の山と化していた。地面が四角形に抉れたようになっている。


その底に4人の人影があった。


「はあ……またエリキシル剤を使わされるとは」

「びっくりしました」

「まあ想定すべきではあったがな」


アレイスターが咄嗟に使った『絶対防御(アイギス)』で爆炎を防いだのだ。レミリアやクリスもシールドを張りはしたが。


綺麗にこの建物だけ抉れている様子から、魔術の罠だとわかる。自領を見境なく破壊するつもりはなかったのだろうが、派手な置き土産だった。


「神殿騎士はエテメンアンキに帰ったかな? 完全臨戦態勢で迎え撃たれそうだね」

「フィールフィルに報告するか? ギルベルトが来てくれるかもしれない」

「知らせつつ、すぐにエテメンアンキを強襲した方が良いだろうね。援軍はまず間に合わないだろうけど」


すぐにレミリアのダイブイーグルで王都に手紙を送った。

それから、アレイスターは証拠集めのためにアルミダの神殿長の記憶を覗く、と言ってリリと出かけて行った。


レミリア達は少し時間が空いた。落ち着くと空腹を感じてきた。


「なんだかお腹空きました」

「どこか店で食うか。何が食いたい?」

「肉どーんでお願いします。でもお風呂も入りたいです。さっきので粉まみれだし」


ベオウルフは、風呂好きな奴だと半ば呆れ気味で適当に返した。


「アイテムボックスに風呂釜を入れておいたらどうだ? 湯は出せるんだろ?」

「え? ナイスアイデアです。また遠出する時のために買っておこうかな。露天風呂かあ、いいなあ」


レミリアはノリノリで本当にやりそうだ。

とりあえず今は食事に向かった。




食事が終わるとアレイスター達が合流してきた。レミリア達はアレイスターがこの短時間で教会の情報収集を済ませたことにびっくりしたが、アルミダの教会は神殿騎士団がかなり入り込んでいたらしく、人員の多くがカイエンと一緒にエテメンアンキに引き上げてしまったので手薄だったそうだ。


そして、アルミダの神殿長は割と白寄りのグレーと言える程度しか加担していなかった。むしろ加担しないと自分の身が危ういので仕方なく手を貸していたようだ。


手を貸したといっても、カイエン達に資金や場所を提供していたくらいで、特に何かしたわけではない。

僅かだが、気を失ったレミリアが教会に持ち込まれた記憶があった。レミリアを持ち込んだのは、ベルと一緒にいたゲイルという戦士だった。神殿長の前でカイエンに引き渡されていた。


つまり、あまり収穫はなかったようだ。


「神殿長にカイエンが逃げたことを伝えたら、少しホッとした様子だったよ。恐らく襲撃も無いだろうし、今日はアルミダに一泊しよう」

「お風呂がある宿でお願いします!」

「ベオウルフ、甲斐性の見せ所だね」


風呂付きの宿なんて大商人や羽振りの良い冒険者くらいしか使わない、比較的高級な宿だ。そうとは知らずレミリアは目をキラキラさせながらベオウルフを見る。


「爆風で埃まみれだからな。しかたないか……」

「やったー!」


ベオウルフは観念した。世間知らずは何にいくらかかるのか知らないのだ。少しは勉強になるだろう。


前回止まった宿屋より明らかに高級な宿屋に入って受け付けする。ノリノリだったレミリアも宿泊費について気になり始めた。リリとぶつぶつ話していた。


「確か前回アレイスターさんと泊まったのが相部屋で1人金貨1枚くらいだったような」

「そんなお金じゃ泊まれない」

「えー? 倍くらい?」

「それでも無理」


横で聴きながら、恥ずかしいからやめて欲しいとアレイスターは思った。

店員は愛想良くニコニコしながら対応している。


「お食事はどうされますか?」

「夜は2人分用意してくれないか?」

「朝はよろしいですか?」

「ああ、朝は全員頼む」

「では、5名様食事付きで金貨19枚になります」


ベオウルフが懐から金貨を取り出す。レミリアはあまりの金額に開いた口が塞がらない。身体を拭くか、森で湯あみすれば金貨10枚浮いたかもしれない。


青ざめているレミリアの横で、クリスも少し申し訳なさそうだ。


「私は首飾りの中にいても良かったですね」

「いや、クリスには迷惑かけてるから大丈夫だ。気にせずしっかり休んでくれ」

「あら、ベオウルフ様にそう言っていただけるなんて」


そんなレミリア達を尻目に係の人が部屋に案内してくれる。

部屋もそれなりに綺麗だった。流石にリーベルやアレイスターの貴族の屋敷には敵わないが、バリアントの部屋くらいは綺麗なのではないだろうか。

この分なら食事も期待できそうだ。


部屋に着くとレミリア達は真っ先に3人で共用風呂に向かった。

田舎育ちのくせに結果的に貴族の風呂しか知らないレミリアには少し狭く思えたが、たまたまレミリア達しかいなかったので気楽だ。


レミリアは湯船に浸かりながら、2人の身体を観察している。クリスが無駄に肉付きがいいのは知っているが、リリも細身で引き締まってる割に出るとこは出ていて、レミリアの一人負けだった。


「レミリアさん露骨に見過ぎですよ。おじさんみたいです」

「いいじゃないですか、減るもんじゃないし。少し分けてください」

「レミリアは肌がきれい」


リリもじっとレミリアを観察していた。レミリア的にはリリの方がきれいな気がする。


「リリも白くてきれいだよ。胸もあるし」

「ですよね、エルフらしい神秘的な美しさといいますか、甘えられたら男性もイチコロですよ」

「でも興味持ってもらえない」


誰にとは言わないが、前にアレイスターに気がある話は聞かせてもらっているし、レミリアもクリスも遠慮する必要は無いだろう。


「アレイスターさん堅そうだからなあ。クリスさんなんとかなりませんか?」

「え?? 私ですか? ベオウルフ様なら単純そうだけどアレイスター様は闇が深そうというか……」


レミリアとしてはベオウルフとのことに関してはクリスを師匠と崇めるレベルで世話になっている。

しかし買いかぶられてもクリスは生娘だった。

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