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成長

レミリアにとっては永遠とも思えたが、実際はそう長くはない時間、レミリアは痛みに耐えるため必死にうずくまっていた。そして、その痛みが治った。


「おしまい……ですか?」

「ふぉふぉふぉ。よく頑張ったのう。契約完了じゃ」

「よかった……」


レミリアは立ち上がろうとしてよろめいてしまう。ベオウルフが咄嗟に抱きとめたが、自分の身体の感覚がおかしく、ちゃんと立てる気がしない。


「魔族は2年程度ではそう変わらんじゃろうが、それでも慣れるまで暫くかかるじゃろう。だからここでいいか聞いたんじゃが」

「ちゃんと先に言ってくださいよ、もう。お洋服も人に見せれる状態じゃないし」


カミラから貰ったお気に入りのワンピースからは、手足がにょっきり出過ぎている。何より伸縮しない肌着がきつくて痛い。


レミリアはベオウルフの手を借りて、頑張って一人で立ってみた。横にいるベオウルフの顔に少し近づいている。クリスよりはまだ少し身長は低いくらいだが、頭半個分くらいは身長が伸びた気がする。

しかし、肝心の部分が触った感じ少ししか変わっていない。


「こんなはずじゃなかったんだけど!」

「ふぉふぉふぉ。それがお主の限界かもしれぬのう」

「し、失礼な。身長ももう少し伸びるからそんなことはないはずです」


レミリアはぶつぶつ言っているが、ベオウルフに手を借りていることを思い出した。慌てて離そうとするがやはりふらつく。ベオウルフが支えてくれた。


「無理をするな。アレイスター、マントの予備は無いか?」

「ああ、あるよ」


アイテムボックスからマントを投げてくれる。ベオウルフはレミリアにマントを掛けた。


「とりあえずこれを羽織ってリーベルに行こう。服はカロリーナに相談する」

「は、はい!」

「仕方ないね。急いで行こうか」


レミリアはオルトロスを呼んでしがみつく。掴まるだけならなんとかなりそうだ。

座天使がアドバイスをくれた。


「儂の加護を使うが良い。思った以上に早く着くじゃろう。周りにも影響を及ぼせるぞい」

「わかりました。座天使様、いろいろありがとうございました」

「ふぉふぉふぉ。長い付き合いになるじゃろう。今後ともよろしくのう」


座天使はクリスの中に帰った。ほぼ消えていたクリスの輪郭がはっきりする。


「これで良かったんでしょうか。まあ私も戻りますね」


クリスもペンダントに戻る。


「さあ、先を急ごうか」


アレイスターの合図でレミリア達はリーベルに向かって飛び立った。




少し魔力消費がきついが座天使の加護はかなり効果的で、その日の晩にはリーベル子爵領に到着してしまった。

レミリアは少し飛行酔い気味だ。次からは慣れるまでゆっくり飛ぼうと誓った。


南門に着くと完全に閉門されていたので、当直の兵士にベオウルフが身分を明かして取り次ぎを頼んだ。


少し待つと、アレックスが自ら迎えに来てくれた。


「義兄さん! 心配していたんだ。無事で良かったよ」

「アレックス、また急に来てしまって申し訳ない。レミリアのことでカロリーナに相談したいんだ」


マントで巻かれてオルトロスにしがみついているレミリアを見る。

暗くてアレックスには様子がわからなかった。


「わかったよ。カロリーナも待っているから早速行こう」


アレックスは快く領城まで案内してくれた。




リーベルの館ではリーベル子爵とカロリーナが待っていた。皆、無事を喜んでくれた。

リーベル子爵には軽く報告をすませておく。


「非常に難しい案件だけに心配しておったぞ。ベオウルフ君、無事で何よりだ」

「リーベル卿から教会の話を聞いておいて良かったですよ。直後に襲撃されまして」

「ほう。そうなると少し心配だな。我が街の教会は教皇庁の急進派の影響が強いということか」


レミリアが疲れた顔をしているのを見て、カロリーナがアレックスの袖を引く。速度酔いがまだ少し続いているだけだが。


「移動で疲れただろうから、部屋で休むといい。夕食の準備ができたら案内するよ」

「おお、すまんすまん。立ち話になってしまった」


アレックスが言うと召使いが部屋に案内してくれる。

ベオウルフがカロリーナに声をかけた。


「カロリーナ、今のレミリアに合いそうな服はないか?」

「流石に子供服は持ち合わせが無いですが……あれ?」


カロリーナはレミリアを改めて見ると、目を丸くした。レミリアとしてはマントで巻かれてみすぼらしいことこの上ないので、あまり見ないで欲しいのだが。


「なんだが先日お会いした時と感じが違うような。私が若い時に着ていたもので良ければ、残している服がいくつかございますわ。レミリアさんを私の衣装部屋に案内しましょうか」

「本当か? 助かる。カロリーナに任せていいか?」

「大丈夫ですよ。逆にお兄様がついてきたら困ります」

「そりゃそうだ」


カロリーナはレミリアの方に向き直る。


「レミリアさんもお疲れでしょうけど、もう少しお付き合いいただいても大丈夫ですか?」

「ありがとうございますカロリーナ様。流石にこの格好では出歩けないのでお言葉に甘えます」


レミリアはカロリーナと召使いについていくことになった。しかし、移動しっぱなしだったのと先程の成長騒ぎでかなり汗をかいている。

レミリアはカロリーナが自分の服を貸してくれるのなら先に身体を清めないと申し訳ない気がした。


「カロリーナ様、申し訳ないのですが先に汗を落としたいです」

「あ、気付きませんでしたわ。あなた、すぐに用意して頂戴」


ベオウルフの妹らしいといえばらしいのだが、カロリーナはそのままレミリアに服を貸すことを特に気にしていなかったようだ。カロリーナは召使いに指示を出す。


「かしこまりました」

「私は部屋におりますわ。用意できたら衣装部屋で落ち合いましょう」


カロリーナは部屋に帰っていった。


レミリアは館に来るまではオルトロスに乗っていたので良かったが、さっきから一人で歩くのが大変だ。何度かよろよろしながら、使用人について行った。


「上がられましたら、声をおかけください」


使用人が去ったので、早速風呂場にある鏡で自分の身体を見る。


手足は結構伸びていた。さっきは気になった身体つきも、肌着に潰されていただけで相応には変化した気もする。顔も幼さが薄れて少し大人びた感じがする。


(ベオウルフさまが、よく手を貸してくれたりマントを羽織らせてくれたり、なんだかもっと優しくなった気がするんだよね)


ベオウルフは割と露骨に手を貸していた。少し恥ずかしいが、なんとなく嬉しい気持ちになった。

しかし、カロリーナを待たせても申し訳ないので、さっさと風呂に入ることにした。


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