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光の加護

国王から教皇庁の調査許可を得た翌日、レミリア達は王都からアルミダ手前の村までへの移動を開始した。

多少頑張っても4日はかかるので、王都でありったけの食料を買い込んでアイテムボックスに放り込んでおいた。


出かける前に騎士団長のギルベルトが謝罪を含めた挨拶に来てくれた。

無事に教会を制圧し、難を逃れようとしたのか外に伝えようとしたのか、脱出を図った者も捕縛した。

しかし、全ての旅人や商人を留めることはできないので、逆に王都のそのような様子が伝わるかもしれないし、冒険者に扮した教会関係者が脱出している可能性はある。


「つまり、急いだ方が良いということだ。本当は俺もついて行って力になりたかったのだがな」

「それは力強いですが、気持ちだけで充分ですよ」

「エテメンアンキには陛下に許可をいただいてから少数で討ち入りたいとは考えているんだが、難しいだろうな」


ギルベルトはお詫びのつもりか、しきりに協力を申し出てくれた。


ギルベルトとサラサに見送られながら、一行は王都を飛び立った。




昨晩よく休めたのと、レミリアの飛行魔術が上達したこともあり、移動は王都行きよりスムーズだ。

しかし、休憩の度にレミリアの無属性魔法の練習を予定していたのだが、問題が発生した。


「なんとなく予想してたけど、レミリアには光の属性の素質が無いね」

「えー? どうするんですか?」

「素質がないなら、光の神かその眷属の加護を得ないといけないね」


行き詰まってしまった。光の神は人族の神であり人族贔屓が酷い。相反する闇の神の子である魔族に加護など与えてくれるとは思えない。闇の神は忖度しないので、人族にも力を貸してくれるのに酷い話だ。


「それは天使様の加護でも大丈夫ですか?」


クリスが首飾りから出てきた。力を貸してくれる天使がいるのだろうか。


「もちろん大丈夫だよ。天使は光の神の眷属としては上位にいるから。力を貸してもらえるのかい?」

「力天使様は無理でしょうけど、貸していただけそうな方はいます。何を要求されるかわかりませんが」


即物的な大天使なのだろうか。天使のくせに欲深いことだとアレイスターは思ったが少し違うようだ。


「レミリアさんなら見目麗しいので、加護は大丈夫かとは思います」

「なんだか歯切れが悪いですね……」

「なんにせよ、呼んでみてもらえるかい?」

「わかりました」


クリスが手を合わせて天使を召喚する。クリスがどんどん薄くなってゆく。クリスが薄くなった分だけ徐々に天使が顕現してくる。

現れた天使は燃え盛る車輪の中に老人の顔を持つ姿だった。


座天使(ソロネ)様です。私が力を貸していただける天使様の中では最上位の存在になります」

「ふぉふぉふぉ。クリスティナに読んでもらえるのは久しぶりじゃわい。いったい何用かのう」


座天使は話し出した。呼び出すのに相当な魔力を消費するため、クリスの魔力では呼ぶのが限界で、戦闘行為が不可能になってしまうレベルなのだ。


「座天使様、こちらのレミリアに加護を与えていただきたいのです」

「ふぉ? 魔族の娘ではないか。どうしようかのう」


座天使は明らかに勿体ぶっている感じがするが、レミリアも頭を下げる。


「座天使様! どうしても必要なんです! よろしくお願いします」

「まあ可愛らしい女子に頼まれては断りにくいのう。別に構わんが、代償は高いぞ?」


クリスの言った通りだ。なんだが気色悪い言い草にレミリアは何を要求されるのか不安になってきた。


クリスが確認する。


「何を差し上げたらよいのですか?」

「儂に命を捧げるのじゃ」

「いや、無理です。帰ってください」


レミリアは即お断りした。このボケ天使は何を言い出すのか。


「早とちりするでない。いや儂の言い方が悪いのか。其方には寿命を捧げてもらう」

「寿命ですか? 同じことのような」

「わかりやすくいうと、2年歳を取ってもらう。儂に生命力を捧げるのじゃ」

「えっ?」


レミリアは考える。全くペナルティになってない気がするのだ。念の為聞いてみた。


「あの、予定していたより早く死ぬとかそういう話ではないのですか?」

「まあ早くに歳を取る分そのリスクは上がるが、時間を奪うという意味ではないのう。儂、そんなもんいらんし」

「私まだ成長段階なんですけど、歳を取ると成長しちゃいますよ?」

「まあ、そうなるじゃろうなあ。成長が止まったら老化する。何年後かには同じことじゃろう?」


レミリアの中では成長させてもらうことに決めた。

クリスとアレイスターが慌てて静止する。


「レミリアさん、まさかとは思いますけど受ける気ですか?」

「レミリアよく考え直した方がいいよ。ベオウルフも何か言ってやりなよ」

「ん? レミリアの好きにしたらいいじゃないか」


ベオウルフはよくわかっていないようだ。

ソロネとレミリアの利害が一致している。先のことを考えたら2人の言い分もわかるが、先に成長しておくメリットはいろいろあるはずだ。

フィジカルとか魔力量とか、ベオウルフとの歳の差が縮まるとか。


「私、加護を受けます!」

「ふぉふぉふぉ。良い決断力じゃ」


周りは諦めモードだ。もうレミリアの好きにしたらいいんじゃねといったところだ。


「では取引合意ということで。儂の加護を受けると、魔力を消費することによりあらゆる速度が増すじゃろう」


ソロネの根源を表す魔法陣がレミリアに刻まれる。レミリアはヘラの時も、気づかなかったがこんな感じだったのだろうか、と思った。


「さて、対価はここでいただいても大丈夫かのう? 少し待っても良いが」

「いえ、やっちゃってください!」


レミリアの中では、背が伸び、ちょっと劣等感を感じている部分も変わる算段である。


「うーむ、今せぬ方が良いと思うがのう。まあええわい」


ソロネはレミリアの左胸の方向に手を掲げる。車輪の端に小さな手があるのだ。


「くっ……」


レミリアは何かを吸い取られてゆく。魔力が抜かれる時より段違いに嫌な感じだ。

同時に手足が軋むように痛い。


「いたたたた! たいむたいむです!」

「ふぉふぉふぉ。もう止まらんぞい」


関節が特に痛い。首が肘が腰が膝が足首が、ありとあらゆるところが耐えられないくらい痛いのだ。


「あががが……無理、無理ぃぃぃぃぃ」

「レミリアさんっ!?」


意識が遠のけば良いのだが、絶妙に痛すぎて難しい。あと、服はゆったりしたワンピースだから大丈夫だが、肌着の胸と腰が締め付けられて痛い。関節に比べたらどうでもいいけど。


クリス達3人は蒼白になってドン引きしている。

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