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領主の妹

姿を消したニック達が何を企んでいるかわからない。善は急げということで、翌日には教皇庁を告発すべくフィーンフィルを目指すことになった。


領内なので、基本的には飛行魔術での移動になるが、まだ飛行魔術に慣れていないレミリアに合わせて3日で着く行程で行くことにした。途中、一泊はベオウルフの妹が嫁いでいるリーベル子爵領に寄ることになる。


出発の朝、渋々ではあったが留守を預かってくれるノイマンに挨拶したあと、飛行魔術を使えないベオウルフをどう運ぶかという話になった。


「僕はちょっと。ベオウルフを抱えながらとか手を握りながら飛ぶのは、あまり気が乗らないなあ」

「あらら、とても素敵なシチュエーションだと思うのですけれど」


クリスの目が怪しく光っている。美形な2人だから絵になる。ちなみに、彼女はレミリアが身につけているペンダントに入るだけだ。


「そうなると私しかいないじゃないですか」


言いながらレミリアはオルトロスにリリ達と3人で乗った時くらいの大きさになってもらい、後ろにベオウルフを乗せた。ベオウルフがレミリアの肩から前に手を回せるくらいの位置に肉薄している。近すぎる。


「迷惑をかける」

「い、いきます!」


浮き上がらない。


レミリアはベオウルフにくっつかれて全く魔術に集中できない。心臓バクバクである。


「ごめんなさい、全く集中出来ないから無理です!」

「いやいや、もう少し頑張ろうよ」


無理なものは無理だ。逆だと前が見えないだろうし。まだ習いたてだし、うん。


「ならオルトロスじゃなくてベオウルフに乗ったらどうだい?」

「アレイスターさん馬鹿ですか?」

「冗談です……」


アレイスターの冗談もレミリアの緊張を解せない。鬼の形相で睨まれた。


そこでやっとクリスが妙案を出す。


「天使を一体出しますよ。それでベオウルフ様を運びます」


レミリアはいきなりどっと疲れたが、なんとか出発することができた。


天使で運ぶと言っても、天使がベオウルフを抱えて飛ぶわけではなかった。ベオウルフが制御できるわけではないが、見た目は飛行魔術で飛んでいるかのようだった。


「天使はどこにいるんですか?」

「今はベオウルフ様に憑依させています」


レミリアが聞くとペンダントから声が返ってくる。


「へえ、君の天使召喚術は実に興味深いね」

「久しぶりに空を飛ぶぞ。なかなか気持ちが良いな」


途中、昼休憩を挟んでホノの弁当で腹ごしらえしつつ、夕方にはリーベル子爵の屋敷に到着することができた。

屋敷に入ろうとすると、中から教会の神官服を着た男がいそいそと出てきた。男は挨拶もそこそこに立ち去った。一瞬、クリスを見て驚いたような顔をしたのは気のせいだろうか。


屋敷の中では、リーベル子爵の長男でありベオウルフの義弟に当たるアレックスと、その妻でベオウルフの妹のカロリーナが出迎えてくれた。


「義兄さん、お待ちしていたました。お疲れでしょうからゆっくりしてください」


アレックスは人の良さそうな好青年だった。きっとベオウルフの妹は大事されているだろう。

カロリーナはベオウルフと同じ茶色の髪だが、ベオウルフのような精悍さは無く、綺麗で優しそうな人だ。華奢だが、ゆったりした服を着ている。


「お兄様、お久しぶりです。せっかくおもてなししたかったのに、突然来るって言うから何も準備できなかったんですよ」

「ああ、悪い。フィーンフィルに急用ができてな。ゆっくりもできないが、お前にもアレックスにも迷惑をかける」


ベオウルフとの兄妹仲は良いようで、カロリーナは兄に会えたのが嬉しそうだ。


「初めての顔もあるから、紹介しておく」


ベオウルフはアレックスとカロリーナを紹介してくれた。

向こうはアレイスターの事は知っているようで、こちらもレミリアとクリスを順に紹介される。


ベオウルフに紹介される前から、カロリーナがレミリアをじろじろ見ている。フードは被っているので魔族とはバレていないと思うが。


「あの、カロリーナ様、どうかされましたか?」

「あの、レミリアさん、ですよね? 失礼ですけどフードを取って見せていただけませんか?」

「えーと」


レミリアはベオウルフとアレイスターを交互に見た。ベオウルフが応えてくれた。


「まあこの2人なら大丈夫だ。後で食卓を囲むことになるし、先に見せておいて構わない」

「わかりました」


レミリアはフードを取った。ベオウルフがレミリアが魔族であることを説明してくれた。


「レミリアは魔族なんだ。理由あって行動を共にしているが、面倒を避けるためにフードをしているんだ」

「申し訳ありません、失礼とは思っているのですが」


2人でそんな言い訳をしてみたが、そんなことは気にしていなかったようだ。カロリーナは近くに来てレミリアをまじまじと見て言った。


「魔族なんですか? それより若い時のエレオノーレ様に似ているので、ちょっと驚いてしまって」


レミリアが固まった。


「カロリーナ、先程から初対面のお客様に失礼だよ」


アレックスが嗜めると、カロリーナは顔を赤くしてオロオロしだした。あまり考え無しなところはベオウルフにそっくりなようだ。


「大変失礼いたしました! 私としたことが、なんて恥ずかしいことをしたのかしら」


レミリアもベオウルフも何も言わないので、アレイスターがその場を収める。


「レミリアは慣れない飛行魔術で疲れているみたいなんだ。一旦、少し休ませてあげてくれるかい?」

「わかりました。皆さんをお部屋にご案内します」


いくらなんでも黙っているのは失礼なので、アレイスターはベオウルフを小突いた。


「ああ……すまないアレックス、カロリーナ。また積もる話は食事の時にでも」

「はい、楽しみにしていますね!」


「そういえば」


アレイスターが思い出したようにアレックスに尋ねた。


「屋敷に入る時に教会の方とすれ違ったんだけど、急いでいたようだったんだ。何があったのかい?」

「父上に用事だったみたいだよ。気になるなら夕食の時にでも父上に聞いてみるといい。では部屋に案内させるね」


アレックスの指示で召使いが部屋に案内してくれた。

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