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飛行訓練

「いやです!」


フィーンフィルへ行くことが決まった翌日、レミリアが大声を上げてアレイスターと向き合っている。


クリスがあわあわしている。クリスも経験がないので、アドバイスもできない。というか、光の魔力しか持たないクリスにはできない。


飛行魔術。


風の神の眷属である精霊シルフの力を借りて空を飛ぶ魔術だ。シルフは気前がいいのか魔法陣を媒介するだけで使用できる。


非常に便利なのだが、高い所や早い乗り物が苦手な人には過酷な魔術になる。現在進行形で騒いでいる女のように。


「いきなり飛べなんて僕も言わないからさ。まずは少し浮くところから始めよう」


散々騒いでいたレミリアだが、なんだかんだで膂力の強いアレイスターに首根っこ引っ掴まれて魔法陣を複写するところから始めさせられる。


「横暴です。断固抗議しまーす」

「君の為に教えているはずなんだけどね。書き写したら魔法陣に魔力を流してね」


恐る恐る、書いた魔法陣に魔力を込めると、地面に魔法陣が浮かび上がる。身体が少しずつ軽くなっていく。


「うう、クリス、手を握っててください」

「あらあら」


身体が浮かび上がったが、バランスを崩して尻餅をついてしまった。クリスが手を引いてくれるので、お尻を摩りながら立ち上がる。


「いたたた……」

「出来ないと最初から思っていたら無理だよ?」


そうは言われてもアレイスターのせいで苦手な魔術なのだ。


「何かに掴まっていたら安心できるかも?」


バランスは崩したけどクリスに手を握ってもらったら少し気が楽だったし。


「オルちゃんに掴まりながらやってみようかな?」

「いや、オルトロスを持ち上げる魔力がもったいないじゃないか」

「もう、人がやる気になってんのに」


レミリアはぷんすかしながら、オルトロスを召喚する。

オストロスの背中にしがみつきながら魔法陣を起動させる。


「オルちゃんバランス頑張って」


オルトロスはよくわからなさそうにじっとしている。

レミリアを乗せたオルトロスが浮かび始める。

そのままアレイスターの頭くらいの高さまでまで浮遊した。


「いけそうな予感」

「まったく、無駄な魔力を使うね。そのまま後ろを蹴って前に出る感覚で操作してごらん」


すすっと前に進み始める。上半身を上げて騎乗スタイルになった。バランスも取れていい感じだ。


「アレイスターさん、もうこれでいいですか?」

「魔力消費的にどうだい? まあ君なら問題ないから、やり易いようにしたらいいよ」


アレイスターは諦めモードだ。しばらく練習しているように言ってアレイスターは部屋に戻っていった。


レミリアがふよふよ練習している。オルトロスは足をバタバタさせて落ち着かないようだが。レミリアが下を見るとクリスと目が合った。


「クリスも乗りますか?」

「ご一緒しましょうか」


クリスも乗せて再びふよふよ飛び回る。ちょっと慣れてきて速くなってきた。


「風が気持ちいいですね。単独で飛べるのは便利ですね。私は天使に運んでもらうしかできないけど、魔力消費が酷いので」

「天使、1度使ってるの見ましたけど綺麗だったなあ」


2人で話しながら練習しているとアレイスターが戻ってきた。レミリアは着陸する。


「なかなか良い感じじゃないかな? 飛行でも魔力を消費するし、次はマジックポーションの作り方を教えたいんだけど、そのまま材料を買ってきてくれるかい? そのお金で買えるだけ買ってきてくれたらいいよ」


薬草の名前が書かれた紙とお金を手渡された。


「薬屋さんの位置がわからないですけど」

「リリに案内させよう」


アレイスターが魔法陣を出して魔力を込めると、少ししてリリが現れた。


「お呼びでしょうか」

「レミリアをいつもの薬屋に案内してくれるかい?」

「かしこまりました」


オルトロスに少しだけ大きくなってもらって、リリを載せて出発した。


少し飛んだらすぐに商業区が見えてきた。低空飛行気味なので道ゆく人の視線が痛い。子供に指をさされたりしている。クリスはどこ吹く風だがリリは嫌そうだ。


「これ、恥ずかしい」

「あはは」


もう少しで着きそうなので、レミリアはさっきのアレイスターがリリを呼び出した魔法陣のことを聞いてみた。リリは身につけているペンダントを見せてくれる。


「アレイスター様に呼ばれたらこれが光る」

「あら、可愛らしいペンダントですね。やっぱりリリさんはアレイスター様の特別な方なのですか?」

「リリは使用人」


事情をあまり知らないクリスが言うと、表情が読めないが少しリリが嬉しそうに見えた。機嫌が良くなったのかリリが少し身の上話をしてくれた。


「リリのお父さんはハーフエルフの戦士だったけど、10年前の魔人との戦いから帰って来なかった。人族のお母さんはリリが小さい時に亡くなっていたから、アレイスター様が引き取ってくれた」

「アレイスターさんはお父さんみたいなもの?」

「そこまで離れていないつもり」


リリにとってアレイスターは大切な人のようだ。


そんな話を聞いていたら薬屋についた。

薬屋に入ると、様々な薬草の匂いで溢れかえっていた。ハーブのような物も多いので、嫌な匂いではない。


レミリアがメモに記載された薬草を、渡された金額だけ欲しいと伝えたところ、店のお婆さんに驚かれた。


「本当にこんなに買うのかい? 在庫はあるから大丈夫だけど」

「え? どのくらいの量になるんでしょうか」

「ついておいでよ」


倉庫に案内された。ひと抱えはある正方形に整形された薬草の束が積み上げられている。


「これ2つ分だね。持って帰れるのかい?」

「あー……大丈夫です。お使いなんで言われた量は買って帰りたいので」

「そんじゃあ店の裏に出しとくから、先に勘定しようかね」


支払いを終えて店の裏にいくと、正方形の約束束が2つ用意されていた。周りを見てからアイテムボックスに収納した。


帰りもふよふよとオルトロスで帰る。


「薬草はいつもあんなに買うの?」

「何度も行くのは面倒」

「アレイスター様は繊細な容姿とは裏腹に、大胆な方ですよね」


屋敷に戻ってリリと別れてからアレイスターの部屋に行くと、小さめの鍋が1つと小瓶がたくさん用意されていた。珍しく本が片付けられている。


「早かったね。早速、この鍋に水を入れてくれるかい? 水を入れたら、買ってきた薬草を一掴み入れるんだ」


言われた通りにすると、混ぜ棒を渡される。そして、今度は混ぜながら魔力を注ぐように言われた。

ぐるぐるとかき混ぜ続ける。


「結構かかりますね」

「君の魔力を封じ込めて作るんだ。込めただけ良いポーションになる。あまり入れすぎると酔うけど」


気付いたら薬草が全て溶け込んでいた。飛行も含めて随分と魔力を消費した気がする。


「そろそろいいだろう。少し飲んでみるといいよ」


言われるがまま少しすくって飲んでみた。


「甘くて美味しい……」

「自分の魔力で作るのがやはり相性が良いんだ。僕のを飲んだ時より効果があると思うよ。そこの小瓶に分けてアイテムボックスに保管しておくといい」


全て小分けして収納した。鍋も水洗いしておいた。


「余ったというか山のようにある薬草はどうしたらいいですか」

「薬草とその鍋はあげるから、魔力をあまり使わなかった日にマジックポーションを必ず作るようにしておくんだ」


高度な魔術は消費が激しい。戦闘中の魔力切れは死につながるのでマジックポーションはいくつあっても無駄にはならない。

無属性魔法だと2発も撃てば、それを習得できるほどの素養がある者ですら魔力が枯渇する。


次は、フィーンフィルに向かうことを優先するため、その無属性魔法の習得を移動しながら教わることになった。

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