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聖女飼います

レミリアはクレハが消え去ると、オルトロスに駆け寄って魔力を流し込んだ。


「オルちゃん!」


不死者は死ぬことはないので、それで充分だ。

オルトロスは起き上がり、大型犬のサイズに変身してレミリアに擦り寄った。


「ごめんねオルちゃん。助けてくれてありがとう」

「僕にありがとうはないのかね」


オルトロスは嬉しそうに尻尾を振っていた。不満を漏らすアレイスターを放置して、今度は倒れているクリスティナの様子を見に行く。


「事切れてるね。従者を一瞬で倒していたから、手を出すまでもないと油断したよ」

「シールドが効いていませんでしたけど」

「無属性の魔術は、他の属性の魔力を貫通するんだよ。消費が酷くてなかなか使えないけど。早めに君の属性を調べて、一応使えるようにしよう」


クリスティナは戦闘慣れしておらず、知らなかったようだ。


「クリスティナさん、村の恩人みたいなんです。なのに助けられなくて申し訳ないです」

「うーん、それなら使役してみたらどうかな。君の死霊魔術なら生き返るようなものだし」


アレイスターはレミリアに蘇生術を見せるつもりはないのだ。


「でも、使役したら苦しむみたいなことをクリスティナさんが言ってて、実際お父さんとお母さん苦しそうだったから」


レミリアが鼻を鳴らす。思い出してまた涙ぐんでしまったようだ。


「あれは遺体の状態が悪い中、無理やり使役した綻びだと思うよ」

「そうでしょうか。ベオウルフさまも苦しんでいたらどうしよう」

「大丈夫だよ。さあさあ」


アレイスターがやたらと急かしてきた。


「え、もしかして興味本位で言ってます?」


これはどうみても魔術を見たいだけだ。今日はどんどんこの人の評価が下がる。

しかし、このまま埋葬するのも気が引けるので使役することにした。


レミリアがクリスティナに魔力を流し込む。十分に流し込むと、クリスティナが起き上がって……


光に包まれて消滅してしまった。


「ええっ!?」

「これは……」


クリスティナがいた場所にはペンダントしか残されていなかった。


「彼女の光の魔力量が多すぎて、自分を浄化してしまったのかね。でも、体内に光の魔力があるってどういうことだろう」


体内の魔力は、どの属性にも染まっていない。だから、放出してイメージすることで様々な属性を発現できるのだ。

アレイスターはふと思いついた。もしかしたら、逆なんじゃないだろうか。体の中の魔力は適性のある全ての属性を持つからこそ、体外で変化させることができるのではないか。体内の魔力が持つ属性がその人の……


「アレイスターさんっっ!!」

「おや?」

「何度も呼んでるんですけど」


考察に没頭してレミリアの声が聞こえていなかったようだ。レミリアはむくれている。


「どうしたんだい?」

「もう。クリスティナさんの首飾りだけ残ってて」


クリスティナの首飾りが地面に落ちている。アレイスターは手に取ってみた。

なにかそこにいるような気がする。レミリアも何か感じているようだ。


「クリスティナさん?」


レミリアは自分で言っていて訳がわからないが、クリスティナがそこにいる気がするのだ。


「はい」


クリスティナの声がする。


「どこにいるんですか? 姿を見せてください」


アレイスターが持つペンダントの上がもやもやとして、クリスティナが現れた。身体がだいぶ透けているが。


「どうも、レミリアさん。せっかく肉体を再生していただいたのに申し訳ありません」

「ええっ? こちらこそ、助けられなくてごめんなさい。村のために追われていたんですよね?」

「はい、異端認定までされているとはびっくりしました」


クリスティナはよっと飛んで、ふわりと地面に降り立った。


「上から見下ろすなんて、主人であるレミリア様に失礼ですよね」

「主人とか様とかやめてください」

「ではレミリアさんで。私もクリスとお呼びください。あら? そちらの方はアレイスター様ではございませんか?」


足下でペンダントを持っていたので視界に入っていなかったのだろう。やっと見つかった。


「魔導学院で特別講師として講義していただいた記憶があります。何度か教皇様に会いにいらしてましたし」

「そうか。ごめんね、僕は今の教皇庁の内情は詳しくなくて、君のことも知らないんだクリスティナ」

「私は先日まで聖女を務めておりました」

「なるほど、さっきの戦いといい魔力量といい、只者ではない理由がわかったよ」


クリスティナは先程の戦いと言われて悔しそうにしている。意外と負けず嫌いなのだろうか。


「天使2体を、逃した魔族をアルフヘイムに送る護衛として使役していたので、1体しか使えなかったのです。確かに戦闘知識が足りなくて全属性の魔法に遅れを取りましたが」

「あっちの天使は大丈夫なのかな」

「彼らは非常に契約を重んじますので、契約内容が終わるまでは働いてくれるはずです」


送迎中に消えて放り出されては目も当てられない。

次にアレイスターは身体の消滅の話を振った。


「君は身体に光の魔力を持っているのかい?」

「特異体質なんです。産まれた時から光の魔力を蓄えているので他の魔法が使えない代わりに、他の人より魔力が多いらしいです」


初めて聞く特異体質だった。他の属性でもそういう体質の者が実はいるのかもしれない。


「天使3体を同時に召喚する為には、規格外の魔力量が必要だと思う。常人なら1体も召喚できないよ。その光の魔力でレミリアの闇の魔力が消滅してしまったんだね」


レミリアの魔力とクリスティナの身体で形成された不死者の身体は消滅し、豊富な光の魔力だけの精神体となってしまったようだ。アレイスターはレミリアを見て言った。


「君も君の屍術も大概規格外だよね」

「なんだかすみません」

「私は神に全てを捧げた身です。身体はあまり重要ではないので気にしないでください」

「なんだかよくわからないよ……」


身体と共に闇の魔力が消失し、屍術の影響下からは脱しているはずなのに、クリスティナはこのままレミリアについて行きたいと言い出した。普段はペンダントに潜んで祝福の限りを尽くすとのことだ。


またペット?が増えた。

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