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お気に入り

すっかり話が脱線していたことに気づいた。


「材料のバッグはちゃんと買ってきたのかい?」

「はい、これです」

「女の子はこういうのを選ぶんだね。頑丈そうだし、この見た目ならアイテムボックスとは見られなくていいかもね」


アレイスターはバッグを細かくチェックしながら言った。


「では預かっていいかい? 明日にはアイテムボックスにして返すから」

「わかりました。よろしくお願いします」


アレイスターにバッグを渡す。


「結構大仕事になるから、僕は明日まで動けないと思う。君には課題を用意したから、片付けておいてくれるかい」


そう言いながら、アレイスターは羊皮紙をレミリアに渡した。


「魔導書から抜粋した魔術のレシピだよ。君の役に立つ魔術を選んだから、頑張って欲しい」

「魔術の練習ですか? いつもの原っぱに行ったらいいですか?」

「いや、君を一人で外に出すのはまだ早いかな。気をつければ君の部屋でも出来なくはないと思うけれど……ベオウルフ、誰も使ってない広い部屋は無いかい?」

「そうだな。もう爆破の心配は無いんだよな? 前にノイマンが慌てていたが」


レミリアの頬がピクッと動いた。ベオウルフの顔を見れない。


「今回のは大丈夫だよ。それに、もうレミリアは魔力の操作ができるし」


ベオウルフは少し考える。


「だだっ広いといえば1階のサロンだな。親父が死んでからは使ってないから、埃っぽいかもしれんが。レミリア、昼飯でも食っててくれないか。その間に開錠させておく」

「私が入っていいんですか?」

「構わないが、物は絶対壊すな。俺がノイマンに怒られる」

「え、ちょっと不安なんだけど」

「まあ、心配せずに行っておいで」

「わかりました。では失礼しますね、ベオウルフさま、アレイスターさん」


レミリアは羊皮紙を持って出て行った。

少し間を開けてベオウルフが口を開いた。


「アレイスター、お前のアイテムボックスは遺物級の魔道具(アーティファクト)ではなかったか。作るってことは()()を使うのか」

「まあね、彼女が欲しがったから何とかするまでさ」

「お前、随分レミリアを買っているな」

「うん、非常に面白い娘だからね。一緒にいると退屈しないから気に入っているよ」


ベオウルフは黙ってしまった。


「でも君ほどじゃない。君自ら買い物に付き合っていたんだろう? なんとなくレミリアはエレオノーレに少し似ているね」

「いくらお前でも怒るぞ」

「ごめんごめん。まあ心配しないでよ。前にも言ったけど、僕は親友の大切なものを奪ったりしないさ」

「やめろ。あいつはそんなんじゃない」

「そうかい? じゃあ、ちょっと時間がかかる作業なんだ。君も出て行ってくれるかい」

「ああ、邪魔したな」

「あと……」


アレイスターはベオウルフを見て言った。


「僕の権能のことは、レミリアには絶対内緒だよ。今は知られたくないんだ」

「わかった。だがお前は有名人だろう。そのうちどこかで知ると思うがな」

「その時は仕方ないよ」


ベオウルフも部屋を出て行った。




レミリアは言われた通り、遅めのお昼にすることにした。


「ホノさん、ご飯まだ大丈夫です?」

「大丈夫だよ。温め直すからちょっと待ってな」


ホノが厨房に入って行く。

隣のメイドの控え室からノーラの元気な声がしている。

内容はわからないが。


(ノーラは元気だなあ)


その時、メイド控え室ではノーラとアンナが一緒にお昼を食べていた。

昼食の配膳を終えたアンナと、帰ってきたノーラのタイミングが合ったのだ。

ノーラが元気良くアンナに話しかけていた。


「領主様が大人っぽく、ささっとレミリアの会計を自分が支払うって言ってさ、ついでに私の分も買ってくれたの」

「へえ、領主様やるじゃん」

「私が慌ててたら、女に金を出させるなんて俺の面子が許さないとか言ってくれて」

「なにそれ、かっこいいじゃん」

「そう、領主様かっこいいの!」


ノーラはハイテンション、アンナは引き気味だ。


「でも、レミリアは領主様のこと、気になってるみたいなんだよね」

「なんでわかるの?」

「元気無かった日に、領主様がレミリアのためにいろいろしてること教えてあげたら、嬉しそうにしてたから」

「ああ、あの時ね」


レミリアがアレイスターと話して心折れていた時。レミリアが惣菜を残していたのを見て眉をひそめてしまった。アンナの実家は肉屋だ。肉を残す奴は許さない。


「レミリアと領主様を奪い合う気はないの」

「あんた何いってるの」

「私は領主様の2番目を狙うよ!」


アンナはスプーンを落としてしまった。


王国では一夫多妻は別に珍しいことではない。モラルとして全く問題ない。

逆にエルフや魔族は契約を重んじるので、一夫一妻の者が多い。


(男に何か貰ったの初めてだったんだろな。まあ色男ではあるから生娘のノーラがこうなるのも無理はないか)


ちなみに、アンナは下町に彼氏がいる。

ノーラが大火傷しないように願うばかりであった。




ホノが食事の乗ったトレイを運んできてくれた。

きのことソーセージがたくさん入ったポトフとパンだった。

カウンターで食べさせてもらっていると、

ノーラとアンナがトレイを返しに来た。


「あ、レミリア、用事終わったんだね」

「うん、やっとご飯なの。あ、アンナさんもこんにちは」

「私もアンナでいいよ、レミリア」

「わかりました!」


そういえば、ホノにスイートポテトの作り方を聞くつもりだった。


「ホノさん、スイートポテトの作り方知ってます?」

「ああ、わかるよ。また作っといたげようか?」

「できたら作り方も教わりたい!」


ノーラも乗ってきた。


「そうだねえ、普段はそこまで余裕ないからさ、また作るときに呼んであげるよ」


厨房はホノひとりだから時間が無さそうだ。

まあ作ってくれた方が、楽でいい。


「プレゼントを渡したい男でも現れたら、ちゃんと厨房貸してあげるから言いな」


ノーラが真面目な顔をして聞いていた。

重症だとアンナは思った。

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