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ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
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第65話 暗躍者

 ここはグレート王国内のとある屋敷。その屋敷一室で二人の男が、テーブルに置かれている水晶玉を眺めていた。


 二人居る男のうち、身長が低い方の男は全身黒色の衣装を身に纏っており、頭に被られた黒頭巾からは鋭い目だけを除かせていた。


 一方、長身の男は黒タキシードに赤紫色のマントを羽織り、長く伸びた金色の髪で顔の左半分が隠れていた。おまけに仮面を付けているため、顔の上半分が見えない状態だ。


 そんな怪しげなオーラを醸し出す二人が眺めている水晶玉……

 水晶玉をよく見てみるとある映像が写し出されていた。その映像とは漁船に乗ってマロウータンの後を追うユータとヨネシゲたち、そして南ヨネフト島でヨネシゲたちを迎え撃とうとするマロウータン海賊団、はたまた北アライバへ避難中のヨネフトの人々の姿であった。まるでテレビの字幕映像を見ているかの様だ。


 水晶玉に映し出される映像を見て仮面男が口を開く。


「思ったほど打撃を与えれてないようだが、これからが本番と言うところか?」


 仮面男は黒頭巾男に問い掛けるように呟くと、それに黒頭巾の男が答える。


「いいや……今回は失敗かもしれん。まったく、悪運の強い男だ……」


 黒頭巾男はため息をつきながらそうぼやく。そして水晶玉にヨネシゲの姿が映し出されると彼は拳を強く握りしめる。その様子を見て仮面男が黒頭巾男に言葉を掛ける。


「旦那、まだ終わってはいない。海の悪魔とやらの活躍に期待使用ではないか。」


 仮面男がそう言うと黒頭巾男は静かに頷いた。その直後一人の男が二人の居る部屋に入ってくる。その男に黒頭巾男と仮面男はゆっくりと視線を送る。


 男は顔以外を全身黒い布で覆っており、顔は異常なほど白く、血走った鋭い瞳。その容姿はまるで死神のようだ。


 彼は狂気じみた笑み見せながら黒頭巾男に話しかける。


「旦那、今戻ったぜ……」


「キラー、不始末だな。ガソリンごときに手こずるとは。」


 黒頭巾男は彼の名を口にした。この死神の様な男の名はキラー。数時間前に秘密の空間にてヨネシゲとガソリンを襲撃したあの男だ。


 当初、ヨネシゲとガソリンの息の根を止めるつもりで襲撃したが、結果としてヨネシゲたちの返り討ちに遭ってしまった。

 

 目的を果たせなかったキラーは黒頭巾男に頭を下げる。


「すまないな。言い訳をするつもりはないが、奴は腐ってもヨネシゲだ。」


 キラーの言葉に黒頭巾男は笑い声を上げる。


「そうか……流石この世界を作り出しただけある。奴は主役だからな。」


 黒頭巾男は何やら意味深な言葉を口にすると再び水晶玉に目を向ける。


「まあ、ゆっくり楽しもうではないか……この世界の改革をな!」


 水晶玉に映し出されたヨネシゲを見て一同静かに笑うのであった。








 南ヨネフト島へ向かう漁船の船団。船団の先頭を航行しているのはイソマルの漁船である。


 イソマル漁船の船首にはヨネシゲ、ユータ、ゴリキッド、マッチャン、ジョーソン、更にその後ろにはマッチャン一家四人衆や漁師たちが武器を持って迫り来る南ヨネフト島を見つめていた。


「もう少しで到着ですね…」


 ユータがそう言うとヨネシゲは静かに頷く。その直後、ユータの隣に居たゴリキッドが静かに口を開く。


「ウオタミさんの仇は絶対にとってやる。一矢報いてやるさ!」


 ゴリキッドはそう言い終えると懐から一丁の拳銃を取り出す。この拳銃、つい先程マッチャン一家の中堅であるチャールズから護身用の武器として貰った。


 ゴリキッドと言えば約1ヶ月前にマッチャン一家相手に盗みを働いた男。当然マッチャン一家の男たちを激怒させる結果となった。


 ここへ来てゴリキッドはマッチャン一家と同じ船に乗り合わすなど思ってもみなかっただろう。ゴリキッドはマッチャン一家に何らかの制裁を受かるものだとビクビクしていたが、案外彼らは武器やら防具などをゴリキッドに貸してくれたりして優しかった。


「ウチの奴らは共に戦う同士には酷いことはせん。」


 拳銃を眺めていたゴリキッドにマッチャンが呟いた。


「すまない……この借りは必ず返す。」


 ゴリキッドが申し訳なさそうにそう言うと、マッチャンはその必要はないと言う。ゴリキッドがマッチャンの顔を見上げると、普段無表情のマッチャンが満面の笑みを浮かべながら言葉を放つ。


「この一件が終わったら……話はゆっくりと聞かせてもらうからな!余計な心配はしなくていいぞ。」


 マッチャンの言葉にゴリキッドの顔は引きつる。同時にゴリキッドの背筋が凍り付いたのは言うまでもない。



 南ヨネフト島を見つめるヨネシゲたちの所にヨネシゲとイソマルがやって来た。マックスはヨネシゲたちに南ヨネフト島に到着するまでの目安時間を伝える。


「あと10分もすれば島に到着する。今のうちに身支度を整えろ。」


 マックスの言葉を聞いたマッチャン一家四人衆と漁師たちは最終準備のため各々散らばった。


「お前たちは準備しなくて大丈夫なのか?」


 イソマルはその場に残ったヨネシゲ、ユータ、ゴリキッド、マッチャン、ジョーソンに準備は平気なのかと問い掛ける。イソマルの問いにヨネシゲが答える。


「俺達は準備完了だ。……あとはテツを助け出してマロウータンをぶっ潰す!」


 ヨネシゲは拳を強く握りしめ南ヨネフト島を睨み付ける。南ヨネフト島の周りには無数の海賊船が停泊しているのが見えた。


「ヨネさん、あくまでテツさんの救出が最優先です。」


 ユータはヨネシゲに忠告する。ユータたち本来の目的はテツの救出であり、マロウータン海賊団に一矢報いる為ではない。


「ああ、わかっている。」


ヨネシゲもその事は十分理解している様子だ。


けれど……


「いずれにせよ奴等との戦闘は避けられない。本気でやらなければ俺達は殺されてしまう。だから俺達も奴等を殺すつもりで戦うぞ。ユータ、その覚悟はできているか?」


 突然のヨネシゲの問い掛けにユータは一瞬迷いを見せるも……


「覚悟はできています。アイツらが常識が通用しない連中なのは身にしみて理解しました。今は綺麗事など言ってられません……!」


 ユータの覚悟はできていた。そもそも覚悟を決めていなかったらヨネシゲたちに同行してこの漁船には乗っていなかっただろう。


 ヨネシゲはユータの覚悟を確認すると、漁船に乗っている全てのメンバーを船首に集合させる。


「皆、南ヨネフト島まであと少しで到着する。相手はマロウータン海賊団、ちょっとした気の迷いが命取りになる。少しで迷いがある者は船に残ってもらう。皆、覚悟はできているか!!」


 ヨネシゲの言葉に一同力強い雄叫びを上げる。


 その力強い雄叫び声はいつまで、いつまでも、辺り一帯に響き渡っていた。



 その雄叫び声は南ヨネフト島にも届いていた。


「ウッホッハッハッハッ……。犬の遠吠えとは、まさしくこのことだな。」


 マロウータンはバナナを頬張りながら、遠くから届いてくる雄叫び声を聞いていた。


「お前たち!奴らに恐怖の雄叫びを聞かせてやれ!」


 マロウータンの命令を受けた海賊たちは不気味な雄叫び声を上げる。


「ウッホッ!ウッホッ!ウッホッ!……」


 一定の音程で発せられる低音ボイスの雄叫びは、まるで合唱を聞いているようである。その規律の良さも相まって不気味さが倍増している。



 マロウータン海賊団の雄叫びはヨネシゲたちの耳にも届いていた。


「なんて不気味な雄叫び声なんだ……。だけど、怯むんじゃダメだぞ!!俺達も負けてられねぇ!」


 ヨネシゲがそう言うと一同更に力強い雄叫びを上げるのであった。


 こうして双方の雄叫び合戦はヨネシゲ達が南ヨネフト島に到着するまで繰り広げられるのであった。



 いよいよ決戦の時……!



つづく…

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