第63話 麿海龍拳
大波に乗ってユータたちの漁船を襲撃しようとしたマロウータン。彼はどうやら波を操ることができるらしい。
イソマルの妻ナミエがマロウータンの暴走を食い止めようとするも、マロウータンの攻撃を食らい海に沈められてしまった。尚イソマル曰く、ナミエに関しては心配無用とのこと。
あのクラフト三姉妹と肩を並べる存在であるから、この程度では彼女はやられはしない。
その事は理解したが、今はナミエの心配よりも自分たちの心配をせねばならない。マロウータンが乗ったビル程の高さとなった大波は、ユータたちの乗った漁船を飲み込もうとしていた。
万事休すかと思われたその時である。
マロウータンの真横にヨネシゲが突然出現する。彼もナミエと共に海へ飛び込んだ一人だ。
するとヨネシゲはマロウータンの顔面へ強烈な拳をお見舞いした。それを食らったマロウータンは海へ落下する。それと同時に漁船を飲み込もうとしていた大波は消滅し、いつもの静かな海へと戻ったのだ。
「あのオヤジ、スゲーなっ!!」
ゴリキッドは興奮した様子で声をあげる。
しかし大波が消滅した静かな海を見渡すもヨネシゲの姿がない。心配になったユータやマッチャンが海に向かってヨネシゲの名を叫ぶ。
すると海の中からナミエと共にヨネシゲがひょこっと顔を出す。
「ユータ、見たか!?俺の正義の拳を!!」
そう言うとヨネシゲは右腕を誇らしげに掲げる。
「流石ヨネさんです!あのマロウータンを一撃で海に沈めるなんて!」
ユータが誉めるとヨネシゲはドヤ顔をしながら勝利の笑い声を轟かしていた。
「ヨネシゲ、喜ぶのはまだ早いぞ……」
マックスが険しい表情でそう言った次の瞬間であった。
突然海面から噴水の如く大量海水が吹き上がった。一同何事かと思いその噴水を見上げると、その頂上付近にマロウータンの姿があった。彼は鼻血を流しながら、こちらを鬼の形相で睨み付けていた。
「調子に乗るなよ……!!」
怒り心頭のマロウータン。あの様子では何を仕出かすかわからない。
するとヨネシゲがマロウータンを怒鳴り散らす。
「調子に乗ってるのはお前だろ!!いい加減にしろよ!!罪もない人々を傷付けやがって!!」
睨み合うヨネシゲとマロウータン。するとその隙にユータがマロウータンに攻撃をお見舞いする。
ユータは特殊能力で発生させた木の矢放つ。
「ウオタミさんの仇だっ!!」
「ウホッ!?」
ユータの放った木の矢はマロウータンの頬をかすめる。彼の頬にできた傷からは血が滲み出してきた。
マロウータンはユータを睨み付ける。
「あの時のガキか……懲りずにまた殺されに来たか!?」
マロウータンはそう言いながらユータに向かって右手を構え始める。すると気迫ある声で叫び始めた。
「麿海龍拳っ!!」
その瞬間、大量の海水がマロウータンの腕を纏ったと思うと、物凄い勢いでその大量の海水がユータ目掛けて放たれる。まるで海水でできた龍のようだ。
このままではマズイ!
ユータは攻撃に備えて身構えた。すると背後から突然青白い強烈な光が放たれる。そして青白い光は強烈な光線となってマロウータンの放った攻撃を消滅させる。
ユータは後ろを振り返る。こんな事ができるのは彼しか居ない。
「マックスさん!?」
ユータの背後で右腕を構えて立っていたのは、マックスであった。元保安局の敏腕捜査官だった彼の実力は、クラフト三姉妹以上とも言われている。
そんなマックスの攻撃を見たマロウータンは険しい表情を見せたと思うと、不適な笑みを浮かべ始める。
「お見事……噂は聞いているぞ、鬼のマックス。流石の俺も一人では分が悪い。続きは後程、無人島で待ってるぞよ……ウッホッハッハッハッ!」
そう言うとマロウータンが乗っている噴水が高速でユータたちから遠ざかっていく。逃走するつもりか!?
「逃がすかっ!!」
そう言うとユータは、特殊能力で大量の木の矢を放つ。しかし、突然出現した海水の壁によってユータの攻撃は防がれてしまう。
「くそっ!!」
ユータは悔しさのあまり声をあげる。
その直後、ヨネシゲとナミエが漁船に戻ってきた。ヨネシゲは漁船に上がるなり、あることをマックスに確認する。
「無人島って、南ヨネフト島の事だよな?」
「ああ、この辺りで無人島と言ったらあそこしかないだろう……」
二人の会話を聞いていたユータであったが、また聞きなれない場所の名前が出てきた。
南ヨネフト島とは……?
つづく…
豊田楽太郎です。
投稿遅くなり申し訳ありません。
しばらくの間、仕事等の都合で投稿かなり遅くなります。
概ね2週間おきのペースになりそうです…
お待たせしますが、次回も宜しくお願い致します。