表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
62/76

第59話 猫 対 狼〔前編〕

ユータたちが乗るイソマルの漁船。

その漁船の前に突然現れたビル程の高さになる巨大な波。

波は物凄い勢いで漁船に迫っていた。

そして、波の頂上に立っていたのはマロウータン海賊団頭領“マロウータン”

マロウータンは巨大な波と共にユータたちに襲いかかろうとしていた。

ユータたちとマロウータン海賊団の本格戦闘が始まろうとしていたのだ。


その一方…


ユータたちと同じく、マロウータン海賊団との戦闘を開始しようとする者たちが居たのだ。

その者たちとは、西ヨネフトから上陸した海賊たちを引き付ける囮役を買って出たクラフト家民兵軍西ヨネフト方面隊長“ジェッツェモン”

そして、ヨネフト村からの避難者の最後尾をゆくヨネフト地区の領主家であるクラフト家の使用人たちだ。

いずれも海賊たちに後を追い付かれたといった状況であるが、ジェツェモンは海賊たちの進軍を食い止めるため、クラフト家の使用人たちはソフィアとルイスを死守するため武器を持った。


今回のお話は、ジェッエモンとその愛猫であるチャッピーに焦点を当てることにしよう。






ここは南コーケン街道の道中。

あと少し北側に進めばヨネフト街道と合流してアライバ村に到達する。

その合流地点から少し離れた道上で上陸してきたマロウータン海賊団を待ち構えるのは、クラフト家民兵軍西ヨネフト方面隊長のジェツェモン及び愛猫のチャッピーだ。

御年75歳のジェツェモンであるが兵士として現役。

おまけに特殊能力も使うことができるパワフル爺さんである。

彼は特殊能力で発生させた人が一人乗れるくらいの小さな雲の上に乗り、少し高い位置から海賊たちの到着を待っていた。

チャッピーは猫であるが、人間同様に特殊能力を使うことができる。

その能力とは身長3メートルを超える巨大な化け物へと姿を変えること。

所々猫の特徴を残し変身するため、その姿は化け猫と言ったところだろうか。

と言うよりかは、そのまま体を大きくしただけでは?と思う人も多く居ると思うが、一応化け物へと変身したと言うことになっている。

チャッピーはプライドがかなり高いメス猫。

チャッピーに対して悪口や失言した人物は、後に彼女の手によって制裁が加えられることとなる。

一体どのような制裁が加えられるかは…今回は割愛しよう。

そんなチャッピーは化け物の姿へと変身した状態でジェツェモンと共に海賊を待ち構えていた。


しばらくすると、南側の方角から怒号が聞こえてきた。

ジェツェモンが目を凝らして見てみると、先程少々お灸を据えてやった海賊たちが鬼の形相でこちらに向かって来るのが見えた。


「怒っておるのう…」


怒り狂った海賊たちは歯止めの効かないモンスターと同じだ。

元々話し合いの通用しない相手であるが、怒り狂った彼らは間違いなく自分たちを殺害するために攻撃を仕掛けてくる。

彼らに殺られるつもりはないが、本腰を入れて戦わないと流石のジェツェモンやチャッピーとはいえ命取りとなる。

油断大敵と言うやつだ。

特にジェツェモンに関してはもう若くはない。

兵士としてバリバリ現役で働いてるのが奇跡である。

実際ジェツェモンは体力がどこまで持つか心配であった。

先程の海賊との小競り合いでも、それなりに体力を消費してしまったように思えた。

長期戦は避けたいところ。

できるだけ短い攻撃で海賊たちを仕留めねば…!

ジェツェモンの杖を握る手にも力が入る。


しかし、想定外の来客がジェツェモンたちの前に現れた。


「なんじゃ…あれは?」


ジェツェモンの目に映ったのは、海賊の軍勢の先頭を走る一匹の狼。

それもただの狼ではない!

変身したチャッピーの倍ほどある大きさの化け狼であった。

あんな狼に噛み付かれたら命はない…。

ジェツェモンは狼との距離をとるため乗っていた小さな雲を上空へと上昇させる。


その様子を確認した化け狼は…


「ガルアァァァッ!!」


化け狼はジェツェモン目掛けてジャンプする。

ジェツェモンの乗った雲は、普通の狼ならジャンプしても到底届かない高さまで上昇していた。

だが、化け狼となれば話は変わってくる。

ジャンプした化け狼は勢いが衰えないままジェツェモン目掛けて一直線に進んでくる。

焦ったジェツェモンは乗っていた雲から雷撃を発生させ化け狼にお見舞いする。

ところが、化け狼に雷撃は効いていない模様。

化け狼は大きな口を開けながらジェツェモンとの距離をみるみる縮めていく。


(まずい…!)


ジェツェモンは焦る。

これ程身の危険を感じたのはいつ以来であろうか?

それに自分の放った雷撃が効かない相手などそうそういない。

この狼は一体!?

ジェツェモンは持っていた杖を化け狼に向けると、次なる一手を講じるため杖を持っている右手に力を送り込もうとする。

しかし、すぐ目の前にまで化け狼の大きな口が迫っていた。


(ワシもここまでか…)


ジェツェモンが覚悟を決めたその時であった。

大きな打撃音がしたと思うと、彼のすぐ側まで迫っていた化け狼が突然地面へ向かって落下していく。


「チャッピーっ!!」


気付くとジェツェモンの目の前にはチャッピーの大きな背中が見えた。

化け狼はチャッピーの猫パンチにより地面へと叩き付けられた。


「チャッピー、助かったぞ…」


「ニャッハッ!!」


流石できる愛猫である。

ジェツェモンはほっと胸を撫で下ろした。



地面に叩き付けられて倒れている化け狼の側にチャッピーが着地する。

その後を追うようにジェツェモンもゆっくりと上空から降り立ってきた。

するとジェツェモンが倒れている化け狼に話しかける。


「狼よ…お主、ただの狼ではないな。いや…そもそも狼ではない。そうじゃろう?」


ジェツェモンの問い掛けに化け狼は突然大きな笑い声をあげると、体を起こし立ち上がる。


「そうさ!この狼の姿は能力によってのもの…」


そう言うと化け狼は眩しい光に包まれる。

光が収まったと思うとそこに居たのは一人の大男であった。


身長2メートルは超えているであろう屈強な肉体。

紫がかった白い長髪に、髪と同色の眉毛と長い顎髭。

分厚い唇をへの字に曲げ、鋭い目付きでジェツェモンとチャッピーを睨み付けていた。


「いや~参ったよ…。流石のワシもお手上げじゃった。お主のその実力…海賊の幹部さんとお見受けいたすが?」


ジェツェモンの言葉に険しい表情をしていた大男の口元が緩む。


「ふっ…爺さんごときが敵う相手じゃねぇぜ?俺はマロウータン海賊団幹部のダンベルだ!」


大男の正体は、マロウータン海賊団幹部“ダンベル”

どうやら化け狼に姿を変えることができる特殊能力の使い手のようだ。

その実力は確かなもの…

長年色々な敵を相手にしてきたジェツェモンが直感でそう感じた。

先ほど上空に上昇して距離をとろうとしたのはその為だ。

今までの対戦相手で間違いなく最強クラスの部類に入る男だ。

若かった頃ならまだしも、年老いた今のジェツェモンでは太刀打ちすらできない。


ダンベルを前にしてジェツェモンの額からは汗が流れ落ちる。

そんな立ち尽くしてるジェツェモンとチャッピーの周りを海賊の軍勢が取り囲む。


「爺さん、楽に死にたきゃ無駄な抵抗はその位にしておくんだな…」


これ以上悪足掻きをするようなら酷い殺し方をする。

一発で楽に死にたければ大人しく降参しろとダンベルはジェツェモンに降参を促す。

すると、ジェツェモンは軽く鼻で笑うと覚悟を決めた表情で言葉を返す。


「気遣ってくれてありがとう。だが、老いぼれとはいえワシも一応軍人じゃ。この村を守っているという誇りがある。敵に背を向け逃げるわけにはいかんのじゃ!」


ジェツェモンがそう言い終えるとダンベルは感心した様子で拍手を送る。


「良く言ったぜ爺さん!それでこそ殺しがいがある!」


ダンベルはそう言うと再び化け狼の姿に変身する。

ダンベルは鋭い牙を見せて笑みを浮かべる。

するとチャッピーはジェツェモンとダンベルの間に割って入ると、ダンベルに向かって鋭い爪を見せ不気味な笑みを浮かべる。


「そう来ると思ったぜ…」


ダンベルは予想はできていた。

ジェツェモンではなくチャッピーが自分に挑んでくることを。

それに、先程食らった猫パンチは中々のものであった。


「楽しませてくれよ、ニャンちゃん…!」


「ニャーハッハッハッハッ!!」



“猫”対“狼”



つづく…

豊田楽太郎です。

ヨネシゲの記憶を読んで頂きありがとうございます。

少し時間ができましたので、急遽最新話の投稿を致しました。

次回も早めの投稿は心掛けますが、1~2週間程お時間頂く場合がありますのでご承知おきください。

また物語の内容ですが、あと2~3話程はジェツェモン達とクラフト家の人々のお話となりますので、ユータとヨネシゲの活躍も今しばらくお待ちください。

次回も宜しくお願い致しますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ