表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
59/76

第56話 海賊船を追って

ヨネシゲたちは港で唯一無傷だった一隻の漁船に乗ってマロウータン海賊団の後を追っていた。

南側の方角にはマロウータン海賊団の船団が航行しているのがまだ肉眼で確認できる。


ユータがこの世界に降り立ってから馬車や自転車などの乗り物は確認できたが、電車や自動車などの近代的な乗り物の存在はまだ確認できていない。

そのため、どのくらいの技術が発展しているか不明だが、少なくともエンジン機関というものは存在しているようだ。

その証拠にこの漁船の動力源はエンジンである。

燃料は何を使っているかはわからないが、現実世界で見たことがある小型船と大差ないように思われる。

そんなエンジンを積んだ漁船は、それなりの速さでマロウータン海賊団の船団との距離を縮めていく。

一方のマロウータン海賊団の海賊船はモクモクと黒煙や白煙を上げて進んでいた。

恐らく蒸気機関が動力源だと思われる。


当初、この漁船を乗ることをマックスやマッチャンたちは躊躇っていた。

他の漁船はマロウータン海賊団によって焼き払われて全滅していたが、何故かこの漁船だけは無傷で港に停泊していた。

マロウータン海賊団は襲った街に火を放つのは有名な話。

全てを灰にして無かったことにする…

そんな彼らの手口は世界各国の人々に恐怖を植え付けている。

だが、今回港と船に火を放ったのは別の理由があるはずだ。

特に船を燃やしたのは後を追ってほしくないため。

マックス程の実力者と本格的に戦闘すれば流石のマロウータン海賊団もただでは済まさない。

そう考えると船を燃やして敵を海へ出さないのは得策であろう。

しかし、港には一隻だけ無傷な船が残っていた。

火を放ち忘れたにしてはお粗末すぎる。

両脇の船にはしっかりと火が放たれていたと言うのに。

となるとマロウータン海賊団はわざと船を残したというのか?

ヨネシゲたちを誘き寄せるために。

しかし、この漁船には罠ならしき物が仕掛けられていないようだ。

港を出てから少し経つが漁船に何の異常も見られない。

やはり、火の放ち忘れだったのか?

そう思っていた矢先の事である。

突然船のエンジンが停止してしまったのだ。


「おい!一体どうしたんだ!?」


ヨネシゲは慌てて船を操縦していたマックスの元へ駆け寄る。


「どうやら、ガス欠のようだ…」


マックスは苦笑いしながらヨネシゲに答えた。


「ど、どうするんだよ!?」


ヨネシゲは焦った様子でマックスに詰め寄る。

するとマックスは予備の燃料がないか周りのメンバーに探すよう頼む。


「もしかして、これが奴らの罠か?」


「ああ、俺もそう思うぜ…」


マックスは煙草を吹かしながら落ち着いた様子でそう口にすると、マッチャンも彼の言葉に同調する。


「おい!あれを見ろ!」


ゴリキッドが南側の方角を指先ながら大声を上げる。


「海賊船がこっちに向かってくる…。もしかして、マックスさん!?」


ユータはこちらに向かってくる海賊船を見て勘付いた。

マロウータン海賊団との狙いとは、海の真ん中で身動きできなくなった自分達を一網打尽にするということだ。

案の定、近づいてくる海賊船から大砲が撃たれる。

撃たれた砲弾はユータたちが乗っている漁船のすぐ側の海上に着弾する。

次第に海賊船からの砲撃の回数が増えていく。

最終的には大砲の嵐と言った具合に無数の砲弾がユータたちの漁船を襲う。


ユータは特殊能力で発生させたツルで巨大なネットを作り空中へ解き放つと、砲撃を受け止めたり軌道を変えたりしていた。

しかし、ツルでできたネットは砲撃を数回受けただけで破れてしまう。

その都度、ユータはツルのネットを作り直す。

また、ヨネシゲ、マッチャン、ジョーソンは自慢の拳や腕で砲弾を跳ね返していた。

マックスは手から光線を放ち防弾を粉々に粉砕していた。

ゴリキッドとノア、ジョン、チャールズ、ムラマサのマッチャン一家四人衆はその様子を呆然と眺めていた。


「こいつら本当に人間かよ…」


人間離れした彼らの動きを見てゴリキッドは思わず言葉を漏らす。


「流石、マッチャンさんたち!!」


「この人たちがが居ればあの海賊に勝てる…!」


ノアとムラマサはガッツポーズを決めながら勝利を確信していた。


しかし、その時である。

突然、漁船の船底から大きな衝撃が走る。


「な、何が起きた!?」


ヨネシゲたちは辺りを見回す。


「あ、あれを見ろ!!」


チャールズが指を差した先を見ると、漁船の床から水しぶきを上げていた。

先程の衝撃で漁船は損傷したようで、海水がみるみるうちに船内へと浸水していく。


「まずいぞ!このままじゃ沈んでしまう!」


ジョンはあわてて近くにあったバケツを手に取ると、入り込んでいる海水を船の外へ捨てていた。

その様子を見てゴリキッドたちも海水を船外へ捨て始める。


「これは魚雷だな…」


マックスは先程の衝撃の正体は魚雷だと説明する。

どうやら、直撃はせず少し的を外したようだが同じミスを二度するような相手ではない。

次魚雷を放たれたらこの船は沈没するだろうと話す。


「じゃあ、海に飛び込もう!」


「ヨネさん、それじゃあ奴等の思う壺ですよ!」


「でもこのままじゃ俺たちもお陀仏だぜ!」


ヨネシゲは海に飛び込んで難を逃れようと提案するが、海に飛び込んで泳ぎ回る自分たちは奴らにとって格好の標的であろう。

ユータは他の方法がないか考えを巡らす。


「よし!俺が海に潜ってこの拳で魚雷を受け止めてやるよ!」


「俺も行こう…」


「待て、流石に危険すぎる!」


マッチャンは海中で魚雷を受け止めるべく海へ飛び込もうとする。

ジョーソンもマッチャンの後を付いていく。

そんな二人をマックスが制止する。

地上で戦うのと海中で戦うのでは話が変わってくる。

砲撃を何発も受け止めた二人だが、海中戦では素人同然だ。

海上専門で訓練された軍人や保安官とは訳が違う。

それに相手は魚雷と言う名の爆弾であり、先ほどの砲弾と同じ鉄の塊ではない。

流石の鉄拳、鉄腕でも被雷すればただでは済まない。


「俺が行こう…」


「マックス!?」


すると今度はマッチャンたちを止めたマックス本人が海へ飛び込もうとする。

そんな彼をヨネシゲが止める。


「今自分でマッチャンたちを止めたばかりだろ!?」


「俺も海中戦は素人だが、この中で魚雷とまともに張り合えるのは俺くらいだろう…」


「そうかもしれんが…!」


海中での戦いは皆無に等しいマックスであるが、確かに彼の言うとおり魚雷攻撃とまともに張り合える人物に彼の他居ないだろう。


ここは百戦錬磨のマックスに任せよう…

一同、そう思ったその時である!

こちらに向かってくる一隻の海賊船から突然大きな爆発音がすると、海賊船は煙を上げながらゆっくりと海へ沈み始める。

一体、何が起きたんだ!?

そう思いながら沈んでいく海賊船を眺めていると、今度は他の海賊船が次々と爆発音を上げ沈んでいく。

ユータは目を凝らして海賊船の周囲を見渡す。

すると突然海から一人の男が飛び出してきて、空中へ飛んで行ったかと思うと再び海の中に潜り始める。

その姿はまるで飛び魚の様だった。


「ひ、人が飛び出してした!」


ユータは驚いて声を上げた。


「あの男がやったのさ」


「あの人のこと知ってるんですか?」


マックスは海から飛び出してきた男について知っている様子だ。

マックスはユータに説明を始める。

そして、ユータは衝撃の事実を知る。


「あいつの名は、イソマル…」


「イソマル…?」


「ああ。奴は西ヨネフトの魚雷と呼ばれていて、昔ヨネシゲの姉貴たちと王国軍に所属していた。今は西ヨネフトの漁師長を務めている…」


「西ヨネフトの漁師長…もしかして、その人って!?」


「そう、ウオタミの兄だ…!」


海賊船を次々と沈めていた男の正体とはなんと、ユータの命の恩人であるウオタミの兄であった。



西ヨネフトの魚雷出現!



つづく…

豊田楽太郎です。

いつも読んでいただきありがとうございます。

次回は日曜日頃の投稿を予定してます。

次回もよろしくお願い致しますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ