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ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
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第50話 各々の状況

西ヨネフトの港を出港していくマロウータン海賊団の船団。

そのうちの一隻から無線で交信する一人の女が居た。


「こちら、キャロル…マロウータンさん、とれるかい?」


無線で交信していた女とはマロウータン海賊団最高幹部のキャロルであった。

キャロルはマロウータンと連絡をとるため無線を飛ばしていたのだ。

すると、マロウータンの低い笑い声が受信機から聞こえてきた。

そしてキャロルはマロウータンに状況を報告する。


「ウッホッハッハッハッ!ご苦労、そっちの状況はどうだ?」


「クラフト三姉妹に出会すことは無かったが、代わり鬼のマックスが現れた。」


「噂のあの男か…その後は?」


「ああ、その場はカワシンに任せてある。それと内陸にはダンベルの部隊を送り込んでいる。アタシらは餌を連れて西ヨネフトを出港したところだよ。」


「ウッホッホッ…餌で猛獣を誘き寄せ海の上で狩る!これくらいやらないと気が済まないからな。では、例の無人島で合流だ。」


「了解…」


何やら不穏なやり取りをするマロウータンとキャロル。

彼らは一体何を企んでいるのだろうか?






ここはアライバ村から少々南下した南コーケン街道の道中。

もう少しアライバ村方面へ北上するとヨネフト街道との合流地点があり、今も尚ヨネフト村からの避難者たちが通過している最中だ。

その合流ポイントの手前で仁王立ちしているのは、クラフト家民兵軍の西ヨネフト地区方面隊長であるジェツェモンである。

その彼の足元には愛猫のチャッピーが寄り添っていた。

彼らは西ヨネフトから上陸した海賊たちの囮役として南コーケン街道を移動していた。

先程は海賊たちを軽くお仕置きをして北上してきたが、海賊たちも馬鹿ではない。

恐らく次は激戦になる可能性がある。

しかし、老兵一人と猫で一匹で海賊の軍勢を抑えるのは荷が重い。


「のう、チャッピーや。そろそろ奴らが来る頃じゃ。奴らは本気で来るぞ。ワシの予想だが恐らく幹部の一人や二人は一緒に同行しているはずだ。そうなると長期戦は避けたいところじゃな…」


愛猫のチャッピーに話しかけているようだが、ほぼ独り言状態である。

ジェツェモンは自分の顎髭を撫でながら独り言を続けていると、案の定海賊の軍勢が怒号を上げながらこちらに迫ってきた。


「おぉ、来おったか…!ん?あれは…なんじゃ?」


ジェツェモンは目を凝らす。

海賊の軍勢の先頭には人間ではない何かが一緒になって走っていた。


「これはおったまげた!なんじゃ、あの巨大な狼は!?」


その人間ではない何かとは、とてつもなく巨大な一匹の狼であった。


「ガルァァァァァッ!!!」







ここはヨネフト港。

つい先程までマロウータン海賊団の船団が上陸していた。

今は代わりに別の船団がこの港を埋め尽くしていた。

その船団は色々なパターンの旗を掲げていた。

共通点はどの旗にもドクロ印が描かれていた。

そう、この船団は全て海賊船である。

それも色々な海賊団が混ざっているようだ。

通常なら別の海賊団同士が顔を合わせば殺し合いなるパターンが多い。

しかし、そのような様子は一切なさそうだ。

何故なら彼らは共通の仲間である。

彼らは各々の海賊旗とは別に共通する海賊旗を掲げていた。

その海賊旗とは、あのバナナ印のドクロ…

この海賊たちの正体はマロウータン海賊団傘下の海賊たちであった。


「野郎共!どんどん進め!村人共を蜂の巣にしてやるぞ!」


雄叫びを上げる海賊たちの数は三千以上!

ヨネフト村の人口に匹敵する数だ。

既に先発隊がヨネフト街道を北上してアライバ村方面へ進軍している。

避難中のクラフト家の人々や民たちに追い付くのは時間の問題だ。

これだけの大軍が現れたらメアリーやレイラたちだけでは民を守りきれないだろう…

刻々とヨネフト村の人々に危険が迫るのであった。






ここはアライバ村の北側にある出入口付近。

この先を北上するとアライバ峠がある。

ヨネフト地区の避難者はこのアライバ峠の先にある北アライバという街を目指して避難中だ。

アライバ村の人々は全員北アライバへ向けて避難を開始した。

ヨネフト村からの避難者も半数近くはこのアライバ村を通過して峠入りしている。

そんなアライバ峠へ続く道を守備しているのはクラフト三姉妹長女メアリーと数十人程のクラフト兵たちだ。

メアリーはこのアライバ村北側出入口を最後の砦と称して、敵を一人も通さないと言った構えだ。

百戦錬磨のメアリーであったが不安は沢山あった。

ヨネフト村からの避難者がまだ半分しかこの場所を通過していないことや、クラフト家の人々がまだ姿を見せていないというのも気がかりだ。

それに西ヨネフトと連絡がとれないのも心配だ。


(20年前、奴等を仕留めておけばこんなことには…)


メアリーは悔しさを滲ませる。


その時であった。

クラフト兵のがあることに気付く。


「メアリー様!あれはっ!?」


アライバ峠の方向からとある集団がこちらに向かって駆け寄ってくる。

その集団に混ざって現れた一人の男はメアリーも良く知る人物であった。


「あ、あなたはっ!?」


「ここから我々にお任せを…」


メアリーたちの前に現れたこの集団はヨネフト地区の救世主となるか!?







場面変わりここはアライバ村から少し南下したヨネフト街道の道中。

ヨネフト村からの避難者の後衛を務めるレイラはあともう少しでアライバ村と言うところまで到着していた。

遅れをとっている避難者の大半はお年寄りたちだ。

ヨネフト村からアライバ村までは若者の足で約一時間半から二時間程だ。

お年寄りなら三時間近くかかる道のりだ。

だが、お年寄りたちの奮闘もあり二時間半かからずにアライバ村を通過できそうだ。

とはいえ後方からいつ海賊が迫ってくるかわからない。

けれど、アライバ村さえ通過すれば民たちを守りきれる。

アライバ峠へ続く一本道さえ死守すれば海賊の侵入を防ぐことができるからだ。


「みんな!あともう少しだけ頑張って!」


レイラは村人たちを励ましながらヨネフト街道を北上していく。







そして、ここはヨネフト村からアライバ村へ続くヨネフト街道の中間付近。

レイラたちの後を追うかのようにクラフト家の人々が北上していた。

病弱なルイスと使用人の怪我が原因でクラフト家の人々は大幅な遅れをとっていたのだ。

それでも使用人たちの協力もあってペースを上げて北上していた。

一同駆け足で避難する中、執事のエリックはルイスを背負いながら皆を先導するように進んでいた。

そんなエリックをルイスの母であるソフィアが気遣う。


「エリック、大丈夫?本当にすみませんね…」


「奥様、私は大丈夫でございますよ!」


ソフィアとエリックがそんなやり取りをしてる中、ルイスは己の不甲斐なさを感じていた。

せめて、あともう少しだけ体か強ければ…

領主の息子らしいことは何一つできてはなく、皆に迷惑をかけてばかりだ…

そんな自分に腹が立つ。

やるせない気持ちでいっぱいになるルイスであった。

その時である。

後方に居た使用人から悲鳴が聞こえた。

一同立ち止まりその使用人に視線を向ける。


「どうしたってんだい!?」


料理人の男が悲鳴を上げた使用人に何があったか尋ねる。

するとその使用人は南の方向を指差すと、そこには目を疑う光景が飛び込んできた…


「あ、あれは、海賊ですか…?」


「ええ、あの野蛮な佇まいは間違いなく海賊ですね…」


ルイスの問にエリックが答えた。

南から雄叫びをあげ迫ってくるのはマロウータン海賊団傘下の海賊たちであった。


「おう、獲物が居たぞっ!やっちまえ!」



クラフト家の人々、危うし…!



つづく…

豊田楽太郎です。

時間がありましたので、本日2回目の投稿です。

短めの内容となっております。

今後は投稿頻度をあげるため1話の内容が短めとなりますので宜しくお願い致します。


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