表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
51/76

第48話 毒のドーム

ユータたちの行く手を阻むマロウータン海賊団幹部のカワシン。

彼は毒を操ることのできる特殊能力の使い手。

そして、カワシンは自身の能力で毒の霧でできたドームを発生させる。

その中には逃げ遅れたユータと、毒のドームを作り出したカワシン本人が残っていた。


「ユータ!俺も加勢するぞ!」


「ダメです!ヨネさん!」


ヨネシゲは毒のドームの中に入り込んでユータと一緒に戦おうとするが、そのユータによって制止される。


「やめろぅ…この猛毒のドームは俺にしか解除できない。少しでもドームに触れてみろ。お前の腕は溶け…そして毒で苦しみながら息絶えることとなる。」


猛毒の霧でできたドームである。

触れれば命はないとカワシンは警告する。


直に触れるのがダメなら間接的にはどうだ…!?

ユータがそう考えていると、カワシンがその事についても説明を始める。


「まあ、このドームを破壊しようと思えば誰でもできる。但し、破壊によって飛散した毒の霧が広範囲に広がりありとあらゆるものに付着する。その意味がわかるよな?」


毒の霧でできたドームである。

今ドームを破壊すれば衝撃により飛散した毒が自分やヨネシゲたちに降り掛かる。

すなわちそれは死を意味している。

下手な真似はできないと言うことだ。


「ちっ…俺としたことが。危うくあのドームに一発お見舞いするところだったぜ…」


マックスはドームを特殊能力で破壊しようとしていたが、構えていた右手を下ろした。


「俺たちの鉄拳と鉄腕なら毒に耐えらると思ってたんだが…!」


どうやらマッチャンとジョーソンもマックスと同じ事を考えていたらしいが、周囲に危険が及ぶと言うならこれ以上のことはできない。


ドーム外に居るヨネシゲたちはユータの戦いを見守ることしかできないのだ。


「俺の息の根を止めることができればドームは消滅する。まあ、無理な話だがな…」


どうやらカワシンを倒せばこのドームは消滅するらしい。

しかし、息の根を止めると言うことはカワシンを殺せと言うことなのか?

人を殺すなんて俺には無理だ…!

ユータがそう思っていると、その事をカワシンに見抜かれ指摘される。


「僕には人殺しはできません…と言いたそうな顔だな?甘いんだよ!この世は殺るか…殺られるか…生き残るためには殺るしかねぇ!だから俺たちゃ相手が誰であろうと容赦はしねえ…」


カワシンは続ける。

確かに交渉に応じることもあるが、基本敵と見なしたものは全員殺害する。

それが例え小さな子供であってもだ。

もしかしたら、その子供が物凄く力を付け自分たちに復讐してくるかもしれない。

恨みの芽は早いうちに摘むのが得策。

有ったものを無いものにしてしまえば良いのだ。

マロウータン海賊団が国や街を根絶やしにする理由の一つだ。

もっとも、理由があってもなくても残忍な行動を好む海賊団なのだが。


「今ここで中途半端な事をすれば、お前は俺たちマロウータン海賊団の恨みを買うことになる。それは俺も同じ事だ。だからお前もその仲間たちもこの毒で抹殺してやるよ!」


そう言うとカワシンの腕から猛毒の液体が滴り落ちる。

その落ちた毒はジュワ~という音と共に地面を溶かしていく。

ユータとの間合いを詰めていくカワシン。

ユータにはまだ迷いがある。

まだ相手を殺せる程の実力はないかもしれないが、戦いが始まればカワシンとは殺し合いになる。

相手を殺めることなど自分にできるのか…?

そんな事を考えていると、ふとある人物たちの言葉が脳裏に浮かぶ。


“敵に情けをかけるな!”


“戦場ではな!その一瞬の隙が命取りなのよ!”


特訓中にクラフト三姉妹から言われた言葉だ。

そう、敵に情けをかけてはならない。

ましてや相手は残虐非道な海賊だ。

カワシンが言った通り殺らなきゃ殺られてしまう。

それに迷っている場合ではないし、もはや選択肢などない。

覚悟を決めるときだ!

さもなければ相手に隙を与えて命とりになってしまう。

死んでしまったら意味がない!

そして何のためにここへ来たのか思い出せ!


何のために…


ユータはあの言葉を思い出す。


“もっと多くの人を守ってあげてくれ…!”


ウオタミが最期に残した言葉…

ユータたちに託した望みである…!


その瞬間、ユータの目付きが変わる。

それを見たカワシンはユータとの間合いを詰めるのを止める。


「フッ…覚悟はできたようだな?」


「俺は、ある人から望みを託された。ここで死ぬ訳にはいかない…お前にはここで消えてもらう!」


ユータは覚悟を決めた。

ここでカワシンの息の根を止める…!


「面白くなりそうだぜ!それじゃあ、たっぷりと俺の毒を味わってもらうぜ!」


そう言いながら余裕の笑みを浮かべていたカワシンだが、突然背後に何かの気配を感じて後ろを振り返る。


「!!」


カワシンのすぐ目の前まで、地中から現れた鋭い木の槍が物凄い勢いで迫っていた。

カワシンは間一髪のところで回避したように見えたが、頬には木の槍による傷ができ出血していた。


「なるほど、本気と言う訳か…」


先程まで余裕の笑み浮かべていたカワシンだが、その表情は険しいものへと変わっていた。


するとカワシンは毒の液体を纏った拳を握りしめユータの元へ急接近する。


ユータはカワシンの動きを止めるため、木の根やツルを発生させ彼の身体に巻き付ける。

しかし、この技はカワシンには無効のようだ。


「その技は俺には効かねぇというのがわからねぇのか!!」


そう言うとカワシンは毒を使い、一瞬で木の根とツルを枯らして破壊する。

再びカワシンはユータの元へ迫ると、毒を纏った拳でユータに殴り掛かる。


ユータは咄嗟に回避するも、カワシンの拳はどこまでも追従してくる。


「俺から逃げられると思ってるのか!!」


そうこうしてるうちに、ユータは毒でできたドームの壁際まで追い詰められてしまった。


そして、カワシン渾身の毒の拳がユータの顔面に迫る。

その時、カワシンの目の前に巨大な花が現れる。

ユータが発生させた花の大楯だ。

カワシンの放った毒の拳は、この花の大楯が受け止める。

しかし、カワシンの毒はやはり強烈。

花の大楯は一瞬で枯れ消滅してしまった。


「無駄だ!お前の能力では俺を倒せん!」


カワシンはそう言ったが、ユータのある異変を見て彼は後退りして距離を保つ。


その異変とはユータの全身を纏うように無数の花びらが舞い始めていた。

次第に舞っている花びらが物凄いスピードでユータの周りで渦巻いていく。

花びらの竜巻と言ったところであろうか。


「これで俺に攻撃を食らわすことはできない!」


ユータはカワシンに宣言した。

ユータの周りで渦を巻くこの無数の花びらがカワシンの攻撃を防ぐと言うのだ。


「だったら試してやろうじゃねぇか!」


カワシンはユータの元へ接近すると、再び毒の拳で殴りかかる。

しかし、カワシン渾身の拳は花の渦によって体ごと弾かれてしまう。

当然カワシンの毒に触れた小さな花びらは一瞬のうちに溶けて消滅するが、一発殴っただけでこの無数の花びらを全て消滅させることはできない。

弾き飛ばされたカワシンは直ぐ様起き上がりユータを睨み付ける。

そんなカワシンをユータは見下す。


「フッ…それで勝ったつもりか!?」


カワシンはユータに再度毒の拳をお見舞いしようとするが、また弾き飛ばされてしまう。


「くそっ!あんな花びらごときに…!」


悔しそうな表情を滲ませるカワシンであったが、ユータはカワシンの僅かな隙も逃さない。


「悔しがってる暇なんかない!」


ユータはそう言うと同時に、木の矢を発生させカワシン目掛けその矢を放つ。

するとカワシンの隙を突いたのであろう、木の矢はカワシンの左腕に刺さった。

あともう少しずれていれば心臓に刺さっていたことであろう。


カワシンは一瞬痛そうな表情を見せたが、無言で左腕に刺さった木の矢を引き抜くと、その矢を右手で強く握りしめへし折った。


「いい気になるなよ坊主…俺を本気で怒らすとどうなるか教えてやらないとな…!」


するとカワシンはズボンから2丁の拳銃を取り出す。

その拳銃を一丁づつ片手で握るとユータに照準を合わす。


「この拳銃には特殊能力が施してあってな、通常より遥かに高い威力だ。そして、この拳銃に仕込んである弾は俺の作った猛毒を纏わしている。さて、お前の花びらの竜巻と…俺の特性毒拳銃…どちらの方が上かな?」


ユータの頬から冷や汗が滴り落ちる。

この花びらの竜巻、幾度か訓練しているがまだ完成形ではない。

ヨネシゲと実戦形式の訓練で試した際も、時折ヨネシゲの攻撃を許してしまうことがある。

とはいえ、カワシンの拳の威力なら少なくとも無効化できるようだ。

彼の場合は拳の威力よりも毒の強さに重きを置いてるため、力で押すならこちらの方が有利であろう。

しかし、特殊能力が施され威力を増した拳銃相手なら訳が違う。

おまけに猛毒を纏った弾が仕込まれているそうだ。

流石に今のユータの実力では、カワシンの銃撃を防ぐ自信がない…


こんな時、どうすればいい!?


ユータは必死に考えを巡らしていたが、その僅かな時間が隙となってしまった。


「考えてる暇なんてないぜ…!」


「!!」


カワシンの言葉にハッとするユータ。

しかし、時既に遅し…

一発の銃声が辺りに鳴り響く。


その瞬間、ユータの左腕に強烈な痛みが走る。


「うわぁぁぁっ!」


ユータの叫び声がその痛みを物語っていた。


「ユータ!大丈夫かっ!?」


ヨネシゲは毒のドームにギリギリまで近付きユータに声をかける。

しかし、ヨネシゲの声はユータに届いていないのか、ユータは左腕を押さえながらもがき苦しんでいた。


「おっと、急所を外してしまったな…」


そう言うとカワシンは不適な笑みを浮かべる。



カワシンの猛毒がユータを襲う!

解毒剤が欲しいところである…



つづく…

豊田楽太郎です。

ヨネシゲの記憶を読んでいただきありがとうございます。

なんとか良いペースで投稿ができてますが、今週からペースダウンする可能性がありますので、ご承知おきください。

今後も宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ