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ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
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第47話 海蛇カワシン

世界各国から恐れられている残虐非道な海賊“マロウータン海賊団”

頭領のマロウータンや幹部たちが命令すれば、部下たちはどんなことでも躊躇わずに実行する。

相手が逃げ回ったり命乞いしたとしても容赦ない攻撃を浴びせ罪なき者たちから命を奪っていくのだ。

そんな命令を下す幹部の中に“カワシン”と言う男が居る。

年齢は20代後半くらいで身長は190cm以上はありそうだ。

鋭い目付きに口を一文字に閉ざしたムッとした表情。

白い縞模様を入れた紫色の短髪。

そして上半身には衣類を身に付けていなく、左右の胸には刺青が施されている。

右胸には青と黒の縞模様の海蛇が、左胸にはマロウータン海賊団のシンボルであるバナナ印のドクロが描かれている。

“海蛇カワシン”と呼ばれる猛者であり、マロウータンやキャロル同様世界中から恐れられている存在だ。

元々ある国でマフィアの頭領として名を馳せていたが、マロウータンの勧誘で海賊となった。

彼は最高幹部であるキャロルの部下という立ち位置だが、この海賊の中枢である幹部も任されているのだ。

その彼が今、ヨネシゲたちの前に立ちはだかるのであった!


「テツを返してもらうぞ!」


ヨネシゲはそう叫びながら村から引き上げようとするマロウータン海賊団に向かって走っていく。

その後をユータとマックス、マッチャンたち盗賊が追う。

ヨネシゲが今海賊に襲いかかろうとしている理由は人質になっているテツを奪還するためだ。

マッチャンたちに関しては仲間を傷つけられた事の怒りによってヨネシゲの後に続いている。

一部の盗賊たちは倒れた仲間の介抱を行っていたが、正直助かりそうもない。


ヨネシゲたちは大群となって海賊の背後に迫るが、キャロルがある男を指名するとヨネシゲたちの前に立ちはだかる。

その男こそカワシンであった。


「返して欲しいなら力尽くで取り返してみろ…!」


カワシンはヨネシゲたちを挑発するようにそう言うと、腕を組ながら仁王立ちしていた。

早速ヨネシゲがカワシンに向かって攻撃を仕掛ける。


「俺の拳食らってみろっ!」


ヨネシゲは渾身の拳でカワシンの顔面を攻撃しようとするが、その拳をカワシンは素手で受け止める。

それも右手だけでだ。


「何っ!?」


「オヤジ、その程度か?そんな非力な力で俺たちを倒せると思っていたのか!?」


自信満々で拳を繰り出したヨネシゲであったが、簡単にその攻撃を防がれてしまった。

予想外の出来事にヨネシゲの思考が停止していると、カワシンはその隙を突いてきた。

カワシンは強烈な蹴りをヨネシゲの腹部にお見舞いする。

その強烈な蹴りを攻撃を食らったヨネシゲはかなりの距離を吹き飛ばされる。

その飛ばされてきたヨネシゲをマッチャンが体で受け止める。


「バカな!俺の渾身の拳をあんな簡単に…!?」


驚きを隠せないヨネシゲ。

彼はマッチャンとのリベンジ戦に勝利したことでかなりの自信を付けていた。

初めは手も足も出なかったマッチャンを一対一の勝負で倒すことができた。

ましてやマッチャンはグレート王国内でも名の知れた実力者であるのだから、そんな彼に勝利したことは自分の成長と強さを証明したことになる。

そして、ヨネシゲ同様マッチャンも驚きの表情を見せる。

マッチャンが今まで一対一の勝負で敗れた回数は片手に収まるほど。

そのうちの一人がヨネシゲだ。

しかし、自分を打ち負かした男の渾身の拳はカワシンに軽く防がれてしまった。

これが世界中から恐れているマロウータン海賊団幹部の実力なのか?

いや、そんな筈はない…

あってはならない!

カワシンの風貌を見る限り、マッチャンより年齢は下であろう。

こんな若造に負けるわけにはいかない…!

そう思ったマッチャンは突然カワシンに向かって走り始める。

今度はマッチャンの鉄拳がカワシンに襲いかかる。


「俺の鉄拳、受け止めてみろっ!」


カワシンのすぐ側までマッチャンの拳が迫ると、それを彼は素手で受け止める。

カワシンが片手で受け止めた後もマッチャンは渾身の力を拳に送り込む。

するとカワシンは顔をしかめた後、もう片方の手をマッチャンの拳に添える。

マッチャン渾身の拳は流石に片手では受け止めきれなかったようだ。

それだけではない。

マッチャンの攻撃を受け止めるため足元にも踏ん張りを利かせていたが、徐々に徐々にとカワシンは後方へと押し流されていく。

マッチャンのエネルギーの凄さを感じさせられる。


「さあ、お前も男なら踏ん張って見せろ!」


マッチャンはそう言うと鉄拳でグイグイとカワシンの体を押し進めていく。


「フッ…くだらねぇ!」


そう吐き捨てるとカワシンはマッチャンの頭上へと高く飛び跳ねる。


「逃げるつもりか!?」


マッチャンは頭上を見上げ空中を舞うカワシンに戻るよう促す。

しかし、カワシンに戻る気配はなさそうだ。

カワシンは空中から何かを物色している様子だ。


「まさか…!!」


マッチャンはカワシンがこれから何を行おうとしているか察したのだ。


「お前ら逃げるんだ!」


マッチャンがそう叫んだ先には部下の盗賊たちがいた。

その盗賊たちに紛れ込んでユータの姿もあった。


「もう遅いっ!!」


カワシンはそう言いながら盗賊の集団の中心に着地する。


「お前の部下たちが苦しみながら死んでいくところをそこで見ているんだな!」


カワシンは右腕を前に伸ばして構え始めると、身体全身が紫色の光に包まれる。


「まずい!特殊能力か!?」


マックスやマッチャン一家の副頭領ジョーソンはそれに気付いて盗賊たちの元へ駆け寄ろうとするが少し距離がある。

このままでは間に合わない…

そう思ったマックスとジョーソンは特殊能力を使おうとその場で構え始める。


「これはヤバイぞ…!」


その様子を見ていたゴリキッドは身の危険を感じたのか物陰に隠れるのであった。

突然目の前に現れたらカワシンに盗賊たちも身の危険を感じていた。

敵はヨネシゲやマッチャンを軽くあしらってしまう相手。

それにまだ本気を出してなさそうだ。

そんな相手に自分たちが敵うはずない。

盗賊たちの顔は青ざめていく。


「マッチャンさん…!」


「今行くぞ!」


盗賊たちがマッチャンの名を呼び助けを求める。

それに答える様にマッチャンは盗賊たちの元へ駆け寄ろうとする。


「間に合わねぇよ!」


そう言うとカワシンは一番近くに居た数名の盗賊目掛けて突っ走って行く。

全身を紫色の光に包まれたカワシンの腕からは、その光と同色の液体が滴り落ちていた。


「死ねぇっ!!」


瞬く間に盗賊との距離を縮めたカワシンは紫色の液体が滴り落ちる腕を振り上げ攻撃を仕掛けようとする。

その時、カワシンの動きが突然ピタッと止まるのであった。

カワシンは自分の足元に目を下ろすと、そこには己の右足に巻き付く木の根があった。


「木の根が…何故?」


カワシンは自分の足元から後方へと視線を移す。

そこに居たのは右手をカワシンの方向へ構えているユータの姿があった。


「お前の仕業か?」


「これ以上、お前たちの好きにはさせない…!」


木の根をカワシンの右足に巻き付けたのはユータであった。

ユータは植物系特殊能力の使い手である。

ツルや木の根で相手の動きを封じたり、敵に花を咲かせ体力を吸収させたり、木の槍を発生させて敵を攻撃したりと、文字通り植物を発生させ敵を攻撃したりする能力だ。

また敵や物から吸収したエネルギーを自分に取り込んで回復することも可能。

決して派手さはないものの、とても生命力溢れる系統の特殊能力だ。

持久戦に持ち込めればかなり有利な系統である。

但し、他の特殊能力と違いこの植物系は習得するのが難しく扱い辛い。

そのため、習得が簡単かつ派手な技を繰り出しやすい炎や電気系の特殊能力が初心者に人気である。

ユータも当初は電気系の特殊能力習得のため日々訓練を積み上げていた。

ある日、電撃を放つつもりで手の平に全身の力を送り込むと、発生したのは電撃ではなく一輪の花であった。

これがユータが初めて使うことのできた特殊能力だ。

マックスの進めもあり、ユータは植物系の特殊能力を極めることにしたのだ。

しかし、まだまだ発展途上であり実戦で使うには少々頼りない。

対ジョーソン戦では植物系もそれなりに有効であったが、このカワシンという男に自分の特殊能力が通用するかユータは不安であった。

そして、ユータは出鼻を挫かれる光景を目の当たりにする。

その光景とは、カワシンの右足に巻き付いた木の根があっという間に枯れていく様子であった。

枯れて脆くなった木の根はちょっとした力で破壊することができ、カワシンが右足を振り上げると巻き付いていた木の根は粉々に粉砕されてしまった。

その光景を見て呆然としているユータを見てカワシンは軽く鼻で笑う。


「残念だったな兄ちゃん、この木の根が鉄でできていればいい線いってたぜ!」


「ど、どうしてだ…!?」


ユータは考える。

何故一瞬で木の根を枯らすことができたのか?

簡単に脱出できないようそれなりに太い根を発生させ巻き付けたのだから、普通には脱出できないはず!

普通じゃないとすると…


「特殊能力だな…?」


ユータがそう問うとカワシンはニヤッと笑みを浮かべる。


「そうだぜ、俺は毒を使えるんだよ…!」


どうやらカワシンは特殊能力で毒を使用できるらしい。

では、その毒で木の根を一瞬で枯らしたというのか?

ならその毒は相当な強さに違いない。

生身でその毒を受けたら一体どうなってしまう?

ユータの顔は強張る。

するとカワシンは右腕を天へ向かって伸ばすと毒と思われる液体を空中に飛散させる。

それを見た一同、一斉にカワシンから距離をおく。

ユータも離れようと皆と一緒に逃げようとするが目の前に紫色の毒の壁が現れ行く手を阻む。

逃げ遅れてしまったユータの名をヨネシゲたちがで叫んでいる。

ユータが後ろを振り返るとカワシンが少しず間合いを詰めていく。


「お前は俺と、この中で勝負だ。」


「この中?」


カワシンの“この中”と言う言葉に周囲を見渡す。

ユータは自分の目を疑った。

何とユータはカワシンと共に毒の霧でできたドームの中に閉じ込められていたのだ。


「この猛毒でできた霧のドームを解除できるのは俺だけだ。もうお前は逃げられないぜ?」



絶体絶命のユータ。

こうなったらもうやるしかない!



次回、ユータVSカワシン



つづく…

豊田楽太郎です。

毎度ヨネシゲの記憶を読んでいただきありがとうございます。

何とか週末までに投稿することができました。

次回もできる限りの早い投稿を目指します!

また、総アクセス人数が1000人を突破しました。

無名作品ですがこれだけ多くの皆様に読んで頂いてるのは励みでございます!

これからも応援して頂ければ幸いでございます。

それでは次回も宜しくお願い致しますm(__)m


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