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ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
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第40話 3時間ぶりの再会

世界各国から恐れられている残虐非道な海賊“マロウータン海賊団”

その恐ろしい海賊がヨネフト港に姿を現してから1時間は過ぎたであろう。

そして、その海賊が姿を現す約2時間程前に、ユータとヨネシゲはちょっとした喧嘩をした。

ユータは屋敷を飛び出したあと、ヨネフトの村を散策していた。

その後、弁当を港に届けるクレアの助っ人としてヨネフト港に向かったユータ。

そこでユータたちに悲劇が起きた。

マロウータン海賊団の襲撃を受けたユータたちは囚われの身となり、命を奪われようとしていた。

そんな中、共に囚われたウオタミの勇気ある行動により、ユータたちは解放される。

ウオタミの命と引き換えに…

一方のヨネシゲは突然姿を現した空想の番人“ガソリン”からヨネフト地区とユータの身に脅威が迫ってる事を知らされる。

ユータの元に急行するため秘密の空間を移動していた。

途中、元空想の番人であるキラーの襲撃を受けるも、これを何とか切り抜け、ようやくユータの居るヨネフト港に到着。

そして、ユータとヨネシゲは約3時間ぶりの再会を果たす。

その3時間は2人にとって、とても…とても…長い3時間であった。





マロウータン海賊団が引き上げた直後のヨネフト港。

そこにはユータ、クレア、ゴリキッドが憔悴しきった様子で座り込んでいる。

ユータに関しては左腕を負傷していた。

その3人を取り囲むようにヨネシゲとレイラ、十数名ほどのクラフト兵が取り囲んでいた。

ユータとクレアは皆の姿を見るなり泣き始める。

ゴリキッドは終始地面を拳で殴りながら何かを悔しがっていた。


「一体、ここで何があったと言うのだ…?」


ヨネシゲは3人に問い掛けるものの、返事は返ってこなかった。

ヨネシゲはユータの側まで近寄り座り込むと彼の負傷した左腕に手のひらをかざす。

するとヨネシゲは治癒術を発動する。

ヨネシゲが唯一まともに使用できる特殊能力だ。

ヨネシゲの治癒術によってユータの負傷した左腕は瞬く間に完治していく。

それと一緒にジャンパーに付いた傷や血も消えていった。


心身共に疲れ果てた様子のユータたち。

この様子ではここで何があったのか話してくれるまで時間を要するであろう。

それに海賊がまたいつ襲撃してくるかわからない。

今はユータたちを避難させることが最優先。

しかし、どうしても確認しておきたい事が一つだけあった。

その事をレイラが3人に問うのであった。


「ねぇ、あなた達。ウオタミはどこに居るの…?」


その問いに3人の体は凍り付いたかのように動きを止める。

しばらくの間沈黙が続いたが、ついにユータが重たい口を開く。

その内容はヨネシゲ達にとって衝撃的なものであり受け入れがたい内容であった。

ウオタミは既にこの世にはいない。

この3人の若者の希望ある未来を守るため勇敢に戦って散ったのだ。

ユータたちはウオタミが殺されたところを実際に確認したわけではないが、最後に聞いた一発の銃声が全てを物語っていた。


「冗談でしょ…?」


ユータから事実を聞かされたレイラはその場に立ち尽くす。

周りにいたクラフト兵たちもウオタミとは気の知れた仲と言うこともあり、かなり衝撃を受けた様子である。

そんな中、ユータがヨネシゲに後悔の言葉を漏らす。


「ヨネさん、俺は無力でした…。自分を過信してました…。あの時、避難誘導なんかしないでウオタミさん達と一緒に逃げていれば…」


ユータはそう言うと再び俯き黙り込んでしまう。

ユータは自分の不甲斐なさを痛感していた。

あの時のユータには少なからずの過信があった。

それはマックスの鬼特訓によって手に入れた強さ。

それに加えて、王国内でも名の知れたマッチャン一家の副頭領であるジョーソンをタイマン勝負で打ち負かした。

自分は既に常人の域を超えている…!

ユータはあわよくばマロウータン海賊団をこの手で倒してやろうと心のどこかで思っていた。

しかし、実際は…

目の前に居た仲間一人も助けることすらできなかった。

もしあの時、ウオタミたちと一目散に港から避難していれば…

ユータは後悔の念にかられていた。

そんなユータの言葉に反論するようにクレアが口を開く。


「避難誘導をしていなかったら、もっと多くの人の命が奪われていたわ!間違えじゃなかった。けど…。」


確かに避難誘導していなかったら海賊によって多くの命がこの港で奪われていたことであろう。

ユータの後悔する言葉にそう反論したクレアであったが、心の奥底ではあの時大人しく逃げていればウオタミは助かった…そう思っていた。


そして、このゴリキッドも後悔の念を漏らす。


「あの時俺が…あのバナナを食わなければ、あのオヤジは…!」


ユータたちがウオタミによって救われたことは揺るぎない事実である。

だが、そもそもこのゴリキッドがバナナを船内に持ち込んでいなかったら、今頃全員マロウータンによって殺害されていたことであろう。

もし4本バナナがあれば、この場にウオタミも居たことであろう。

しかし、バナナの総本数が3本と全員助けるには1本足らなかったため、ウオタミは自ら犠牲になる道を選んだ。

そして、ウオタミにその選択をさせてしまった原因を作ったのは自分であるとゴリキッドは後悔と罪悪感に襲われていた。

何故なら、直前にあのバナナの束から一本バナナを躊躇いもなく食していたからだ。


彼らの心中を察すると掛ける言葉などみつからない。

ヨネシゲは黙ったまま、3人の表情をみつめていた。


その時、突然クラフト兵が騒ぎ始める。

ヨネシゲは何事かと思い様子を確認すると、そこには雄叫びをあげ海に飛び込もうとする姉レイラの姿が。

その姉を必死になって押さえるクラフト兵たちが居た。

ヨネシゲも慌ててレイラの元へ駆け寄り止めに入る。


「姉さん!何するつもりだ!?」


「決まってるでしょ!泳いで奴らの船を追い掛けて沈めてやるのよ!そしてウオタミを取り返す!」


「無茶するなよ、姉さんっ!」


確かに無茶な話かもしれないが、このレイラであらばそれが可能であろう。

しかし、今は深追いする訳にはいかない。

民の護衛と言う任務が残っているからだ。

一同必死になってレイラを押さえつけていると、村の方から一人のクラフト兵がやった来た。

そのクラフト兵は海に飛び込もうとするレイラの姿に驚いた表情を見せるも、報告があるらしく大声でその内容をヨネシゲとレイラに伝える。


「報告します!西ヨネフトと連絡とれず、マロウータン海賊団に襲撃されている可能性あり!応援のためリタ様とマックス様が西ヨネフトに向かわれました!」


クラフト兵の報告にレイラは暴れるのを止める。

レイラ隊がマロウータン海賊団撃退のため港に向かったのは西ヨネフトの状況を知る前であった。

てっきりヨネフト港に襲来した船団がこの海賊の全戦力だと思っていた。

しかし、よく考えてみればマロウータン海賊団程の規模となれば船団を分散させ他に充てることができる。

もしかして、ヨネフト港に来た船団はただのおとりだったのか!?

考えが甘かったと感じると同時に顔が青ざめるレイラ。

西ヨネフトがマロウータン海賊団に襲撃されてるとなれば甚大な被害が出ている可能性我高い。

おまけに上陸されたとなるとその先のアライバ村も危険だ。

そして、そのアライバ村はヨネフト村の民たちが避難の為経由する地。

下手をしたら海賊と避難途中の民たちが鉢合わせになる可能性がある。

早く護衛部隊と合流せねば…!


「メアリーは!?メアリーは護衛部隊と一緒なの!?」


「ええ、リタ様とマックス様が西ヨネフトに向かわれた後、すぐにアライバ村方へ向かわれたので今頃合流されたかと…」


リタとマックスは応援のため西ヨネフトに向かった。

一方のメアリーも民たちが全員村を出たことを確認した後に護衛部隊と合流するためヨネフト村を後にしたそうだ。

自分たちも早く護衛部隊と合流せねば!

流石のメアリーでも実力者が一人だけでは荷が重すぎる。

レイラは周りにいたクラフト兵の特殊部隊に急ぎメアリーたちと合流するように指示を出す。

クラフト兵が慌ただしく準備する中、ヨネシゲがレイラの側に近寄ると驚きの発言をするのであった。


「姉さん、俺は西ヨネフトに向かう!」









その頃、マックスとリタは西ヨネフト目指し田舎道を走っていた。


「俺としたことが油断した。西ヨネフトが同時に襲われているとは…」


マックスが悔しそうにそう漏らすとリタがその言葉をフォローする。


「あなたが悪い訳じゃないわ。そもそもクラフト家の戦力をヨネフトに集中させ過ぎてしまった…。私たち三姉妹も誰か一人だけでも西ヨネフトに住んでいれば海賊を食い止める事くらいできたのに…」


このヨネフト地区で有事の際に主力となるのが、ヨネシゲ、マックス、クラフト三姉妹、クラフト兵。

主力となる戦力全てがヨネフト地区に配置されている。

もちろん、西ヨネフトにもクラフト兵は常駐している。

しかしながらクラフト兵全体ほどの2割程だ。

残りの6割はヨネフト村、2割はアライバ村に配置されている。

おまけに、ヨネフト村にはクラフト兵の中でも腕の立つ者で編成された特殊部隊も配備されてるので戦力がヨネフト村に集中しすぎている。


「俺たちは平和ボケしちまったわけだ…」


「そうね…。西ヨネフトにはイソマルが居るから安心していたけど、彼は漁師だから常時村に居る訳じゃないからね。きっと今日も海に出てるはずだわ。」


ちなみに“イソマル”とはグレート王国軍の元将校を務めた実力者。

現在は西ヨネフトで漁師の長を務めている。

その正体とは、あのウオタミの実兄である。




それからしばらく西ヨネフトへの田舎道を走り続けるマックスとリタ。

すると前方から一人のクラフト兵が血相を変えて走ってきた。


「リタ様!マックス!」


マックスはクラフト兵に西ヨネフトの状況を確認する。


「西ヨネフトどうなってる!?」


「只今西ヨネフトはマロウータン海賊団の襲撃に遭い上陸を許してしまいました。民たちにはアライバ村に避難してもらっている最中です。他の兵士は民たちの誘導に全力を尽くしています…しかし、今はどうなっているか…」


やはり西ヨネフトは既にマロウータン海賊団によって襲撃されていたのだ。

クラフト兵の話を聞く限り民たちの避難も完了してるわけでは無さそうだ。

急がねばならない!

焦りの表情を見せるマックスとリタであったが、クラフト兵から更に緊急を要するに内容を聞かされる。


「それと、テツさんが…自ら海賊と交渉するため港に…!」


「何だって!?」


驚きの表情を見せるマックスとリタ。

テツという名の男が海賊と何らかの交渉をするため単身港に向かったそうだ。

ちなみにテツとはヨネフト地区の副領主で西ヨネフトの責任者を務める男だ。


「テツが危ない…!」



進むのは最悪のシナリオなのか…?



つづく…

豊田楽太郎です

第40話の投稿となります。

お待たせして申し訳ありません。

このゴールデンウィーク中に第41話の投稿ができるよう努力致します。

今後ともヨネシゲの記憶をお願い致しますm(__)m


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