表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヨネシゲの記憶  作者: 豊田楽太郎
3章 海からの悪夢
35/76

第32話 空想の番人 ※挿絵あり

ここはヨネシゲの屋敷。

屋敷の主であるヨネシゲは自室で自責の念に駆られていた。

その理由とは先ほどユータに強く当たってしまったことだ。

ユータは何一つ悪い事はしていないのだが、ヨネシゲは自分の感情のままに怒鳴ってしまった。

自分が作り出した理想の世界のはずなのに思い通りにいかない。

ましてや不幸な思いをしている人が多く存在していた。

そんな状況にヨネシゲは苛立っていたのだ。

とはいえユータに当たってしまったのは間違いであった。

ヨネシゲはユータに謝罪することにした。

そんなヨネシゲの前に一人の少女が突然姿を現した。

赤色のワンピースに黄色のマント。

何故か白字で“危”と書かれた赤いとんがり帽子。

そして、黄と黒の縞模様の水筒を肩からたすき掛けにして持っていた。






挿絵(By みてみん)



ヨネシゲは恐る恐る少女に問いかける。


「お嬢ちゃん、君は誰なんだい?どこから入ってきた?」


ヨネシゲの問いかけると少女は笑顔でゆっくりとヨネシゲに近付いて行く。

間合いを詰めてくる少女にヨネシゲは後退りする。

しかし、ヨネシゲの背後はもう既に窓際の壁であった。

これ以上後ろには移動できない。

追い詰められたヨネシゲは強めの口調で再度少女に問う。


「君は一体誰なんだ!?勝手に人の部屋に入っちゃだめだぞ!」


すると少女はようやくヨネシゲの問に答える。


「お答えしよう!私はこの世界の番人を務める妖精…ガソリンって言うの!取り扱い注意よ!以後よろしく!」


「ガ、ガソリン!?」


この少女の名は“ガソリン”と言うらしい。

自称、この世界の番人で取り扱い注意な妖精とのこと。

名前からして危険な雰囲気を醸し出しているが、妖精とは一体どういうことだ?

いくら自分が作り出した空想の世界とはいえ、流石に妖精まで出てくる設定はない。


(まだ幼い子供だ。きっとふざけているだけだろう…)


ヨネシゲはそう自分に言い聞かせ納得していると少女は驚きの発言をする。


「自分の作った空想の居心地はどうかしら?」


「ど、どうしてそれを知っている!?」


ヨネシゲは驚いた。

ヨネシゲ本人以外でこの世界が自分の空想だと知っているのはユータだけだ。

ユータがその事実を知っているのはヨネシゲ自身が打ち明けたのだが、この少女に説明した覚えはない。

だとしたらどこでヨネシゲの空想の事を聞いたのか?

ひょっとしたらユータが話したのか?

可能性は十分あり得る。

先ほどヨネシゲはユータを怒鳴ってしまった。

当然、怒鳴られていい気分になる人間など居ないはず。

そうなるとユータはヨネシゲに一矢報いるために秘密をばらしたのか?

いや、仕返しをするならもっと他の方法があるはず。

ましてやこんな少女に秘密をばらされても大した影響はない。

そもそもユータはこんな姑息なことをする人間か?

考えを巡らしているヨネシゲ。

するとガソリンが何故ヨネシゲの空想について知っているか理由を話す。


「最初に言ったでしょ?私はこの世界の番人。そしてこの世界はあなたによって作り出された世界。そうなるとこの世界の番人があなたについて知らないはずないでしょ?」


確かにこの世界の番人というのであれば、ここがヨネシゲの作り出した空想世界だと知っていても不思議ではない。

それに考えてみれば妖精が登場しても今更驚く話ではない。

ここは自分の作り出した世界のはずなのに、想定外の事ばかり起こる。

とりあえず、このガソリンと名乗る少女が空想世界の番人であることは良しとしよう。

では何故、空想世界の番人である妖精が突然自分の前に姿を現したのか?

理由が必ずあるはずだ。


「君がこの世界の番人なのはわかった。でも何で突然俺の前に現れたんだ?」


「よくぞ聞いてくれました!」


ガソリンは待ってましたと言わんばかりに、ここにやって来た理由を語り始める。


何度も言っている通りここはヨネシゲによって作り出された世界である。

ヨネシゲにとって空想であり、架空の世界だ。

その世界は理想な人、物、場所などがメインで構成されることであろう。

空想を作り出すということは当然目的があるはずだ。

ヨネシゲの様にヒーローになりたいというのであれば悪役も必要となってくる。

ヨネシゲの思うような悪事を働き、ヨネシゲの思うように最後は彼に退治される。

そんな悪役もある意味理想の存在と言えるのであろう。

そんな理想の存在を作り出すと同時に、色々なものが自動的に生まれてくる。

例えば、先程の悪役を例にあげるとする。

悪役とはいえ、生まれてしまえば一人の人間。

そこには色々な人脈があるのだ。

悪役の家族はもちろん、仲間も居るはずだ。

そして、この悪役を取り巻く人々たちにもまた別の人脈がある。

悪役一人を作り出すだけで数え切れないほどの人々も同時に作り出してしまうのだ。

ヨネシゲにとっては脇役やエキストラに過ぎない存在であろう。

だけど、その脇役やエキストラにも人生があり、ヨネシゲが知らないところで色々なドラマが繰り広げられている。

こうして作り出された空想の世界であるが、一度生成されると作り出した本人が死亡、またこの世界の事を忘れたり見放したりしても半永久的に残り続ける。

それはこの空想世界の核となる部分が大きな役割を果たしている。

この核には色々な細かい情報が刻み込んであるという。

例えば、この世界に住む人々のデータであったり、その人々がどのような人生を歩んでいくかなど。

この世界に住む人々の人生は生まれた瞬間に決まると言う。

ある意味恐ろしい話と思うかもしれないが当然のことである。

何故ならここはヨネシゲの作り出した世界であるからだ。

ヨネシゲが思うように生み出した人々。

それが友人であったり敵であったり様々だが、彼が思うような理想の動きをしてくれる。

言ってみればヨネシゲの操り人形なのかもしれない。

しかし、彼らにも感情があり意思がある。

完全にヨネシゲの敷いたレールの上を走っている訳ではないのだ。

とはいえ、レールを外れてどんな道を進んだとしても行き先は同じなのである。

過酷な特訓で力を付けた悪役がヨネシゲと戦い接戦を見せても、最終的には負けるようになっている。

それは核に人々の運命が刻まれてしまっているからだ。

ただ、この核は書き換えることができる。

つまりこの世界の人々の運命を変えることができると言うのだ。

そして唯一その権限を持っているのがヨネシゲだとガソリンは言う。

この世界はヨネシゲの空想であるから、彼がどのように世界を作り替えたとしても何ら問題はない。

しかし、他の者がこの世界の核を書き換えることは許されないしあってはならない。

そこでこの世界の核を守護しているのがガソリンなのだ。

ガソリンの他にも核を守護しているメンバーは多数いるらしい。

通常であればヨネシゲを含むこの世界の住民の前には姿は現さないとのこと。

陰で見守るのが番人の役目。

それに妖精がやたら人前に姿を現すのも望ましくない。

ガソリン曰く、妖精は神秘的なものではなくてはならない。

だが今日に限っては訳が違うのだ。

ヨネシゲの前に姿をあらわしてから笑顔を絶やさなかったガソリンであるが、急に神妙な面持ちでヨネシゲに問い掛ける。


「この世界に来てからおかしいなと思ったこと、いっぱいあるでしょ?」


「あ、あぁ…沢山あるよ。姉さんや息子の存在とか、何より俺はこの世界で無力だった」


「あなたは現実世界からやって来た存在。とはいえ、この世界に一歩足を踏み入れれば理想の生活を送れるわ。最強の力を手に入れ、最愛の奥さんや息子さん、そして理想のお姉さんたちに囲まれて幸せな生活ができる…」


ガソリンの言葉にヨネシゲ声を荒げて問い掛ける。


「じゃあ何でこんなに俺の空想と異なってるんだ!?」


「何でだと思う…?」


ガソリンが逆に問い掛ける形となった。

二人の間に沈黙が流れる。

考え込んで黙ってるヨネシゲにガソリンがその答えを告げる。


「何者かがあなたの空想を書き換えてるからよ」


「な、何だって!?」


ガソリンの話だとこの世界の核を何者かが何らかの手段を使いこっそり書き換えているのだとか。

そんな状況がしばらく続いているらしい。

最初は軽微な書き換えだった。

軽微なものであればガソリン達番人で修正できる。

しかし、何者かによる書き換えは日に日にエスカレート。

ガソリンたちの力で修正するのは限界を迎えていた。

それだけではない。

ここ最近は何者かによってガソリンたちの職務が妨害されているのだとか。

ちょうどヨネシゲがこの世界に迷い込んだあの日位からだ。

妨害の影響で負傷したり里に帰る妖精たちが続出してるらしい。

ガソリンは上司にヨネシゲと接触するよう命じられたが、ヨネシゲの元まで来る道中に何度も命を狙われた。


「何故あなたがこの世界に足を踏み入れることができたのかは謎だわ。だけど、この世界を作り出した張本人に直接会って話ができるのは願ったり叶ったりよ!」


そしてガソリンは更に真剣な表情でヨネシゲを見つめると頭を下げる。


「この世界を救って頂きたい!」


「俺がか!?」


突然の頼みにヨネシゲは困惑する。

確かにこの世界を作り出した本人だが、今の自分のこの世界を救うだけのパワーなどある訳がない。

マッチャンを倒すのもやっとだったのに。

困惑中のヨネシゲにガソリンが言葉を続ける。


「今この村に新たな脅威が迫っている…」


「ヨネフトにか!?」


「もう私たち番人の力だけでは止めることができない。だからあなたの力を貸してほしい!」


「しかし…」


渋るヨネシゲにガソリンは衝撃的なことを口にする。


「このままじゃ、ヨネフトに多くの血が流れるわ…」


「血だと…!?」


「脅威はすぐそこまで迫っているわ。そして今一番身に危険が迫ってるのは、あなたと一緒にこの世界に来たあの青年よ!」


「ユータ!?」




ヨネフトに迫る脅威…

そしてどうなるユータ!?



つづく…

豊田楽太郎です。

いつもヨネシゲの記憶を応援してくださいましてありがとうございます。

今回も投稿が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

仕事面の影響で色々と疲れ果ててしまい執筆に中々手がつけられない状況です。

ですので次なる一手を打ってる最中です(笑)

そんなこともあり次話投稿がまた遅くなると思いますがご承知おきください。

遅くなっても必ず投稿しますので、今後もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ