05.寝室
ユリーカの部屋は日本の一般的な3LDKのマンションをぶち抜いたくらいの広さがある。
その中央に五人は余裕で寝れそうな巨大な天蓋付きベッドがあり、そこにくるまって寝ている。
あどけなさが残っていて寝顔は可愛い。寝顔は。
一方、俺は完全な番犬扱い。
――――雨風しのげるだけで上等だ。
普段使っている、せんべい布団より床のカーペットの方がはるかにふかふかである。
奴隷となる代わりに手に入れたブランケットを羽織って寝た。
うつらうつらしていると、カチャリと鍵が開けられる音で目が覚める。
扉が開くと、そこにいたのは江葉だった。
立ち上がり、一気に窓辺までに退く。
「……………何をしている?」
怪訝な顔をして訊いてくる。
「に、逃げようと」
「主人を守ろうという気概はないのか」
「なんで?」
「………………」
渋い顔をして何もいわない江葉。
コホンと咳をして話題を変える。
「…………インクブスなんだって?」
「誤解なんだけど」
みずから招いた誤解ではあるんだが。
「…………何を代償もらって召喚獣になったんだ?」
江葉は不安げに訊いてくる。
「布団」
「に、肉布団っ!?!? なんて破廉恥なんだっ!!」
慌てふためき叫んだ。
「肉布団って言葉、官能小説でしか見たことねーよ!」
しかもおっさんしか読んでない小説にしか出てこないなそうな印象。
「使い魔が、ゆ、ユリーカの体を弄んでいるなんて」
目の焦点が合わず、ガクガク震え出す江葉。
「人の話を聞かないところも、思い込みの激しいところも姉妹そっくり」
一通り絶望したあと、震えながら
「も、もし、私が、代わりに、なれば、な、何もしないと約束してくれるか…………?」
予想外の一言を口走る。
「…………それってどういう」
何も言わずに、しゅるりしゅるり服を脱いでいく江葉。
月明かりに照らされる江葉の肢体は美しかった。
「おい、おい、ちょっと待って」
そんな鬼畜趣味はない。
「そっ、それは困る。せ、せめて友達から始めよう」
「……………顔逸らすふりしつつチラ見してるのバレてるからな」
江葉は近づいてくる。
「か、観念しろっ…………。インクブスっ」
江葉に押し倒され、手首を掴まれ拘束される。
「や、やめろっ…………」
魔導師と生身の人間。
力の差は歴然としていて、勝てるはずもなく――――――、
「……………全く抵抗しないのな」
あきれ顔の江葉。
「このっ、このっ!」
「ぜんっぜん、力入ってないからな?」
「くっ…………。この体は好きに出来ても、心は決して屈したりしないっ!!」
ジト目になって何もいわない江葉。
「…………な、何してるの」
背後から声がする。
見上げると、そこには幽鬼のように凍てついた目をしたユリーカが。
「こっ、これは違うんだ」
あわてふためく江葉。
素早くどうするのか一番得か計算。
「お、襲われっ」
出来る限りの震え声を出して、ユリーカに縋り付く。
「ちっ、違うっ!! 違くはないけども」
「体で召喚獣奪おうなんて破廉恥なのっ!!」
「ち、違うんだユリーカっ!!」
もちろんユリーカは思い込みが激しく、人の言うことを訊かない。




