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01.異世界召喚

晩飯を食べ、風呂も上がり、布団の上で寝っ転がって、寝るまでのつかの間のごろごろを堪能していると、

「は?」

見慣れた自室から、じめっとした石造りの部屋に移動していた。


瞼を一回閉じ――――、そして、開いた瞬間――――。

そんな一秒にも満たない刹那のうちに。

瞬間移動だ。


――――寒い。

寝っ転がっていると、ひんやりとしたゴツゴツした石の床の冷たさが直に伝わる。慌てて座りなおす。床には何やらチョークで魔法陣のようなものが描かれて、その真ん中に自分がいた。


目の前には巨大な双丘――――、いや胸。

カッターシャツを破らんとばかりにたわわに実っている。

かなり大きいのだが形がきれいに整っているため違和感はない。

健康的にエロい。


その持ち主は

「やったっ! やったっ!!」

と小さくつぶやき、噛みしめるように喜んでいた。


目につくのは黄金色の髪。

それをサラサラに梳いてシニヨンに結っている。

ツリ目勝ちで三白眼だが、顔立ちは整っている。

性格のキツそうな美人とでもいったような顔。


しかし、その整ったお顔は口の端はぐにゃっと曲がり目の焦点はぐらついて、せっかくの美人が台無しになっていた。

喜んでいるみたいが、はっきりいって不気味だ。


服装は、高校の制服にローブ。

ハロウィンのコスプレみたい。


そして、その後ろにちょっと離れて、対照的にスットーンとして小柄、黒髪ショートカットのメイド服の少女がいた。

猫耳までついていてオタクの性癖全部盛りみたいな感じ。

こっちは驚いたような困惑したような表情をしていた。


――――文化祭に紛れこんだのか…………?


あっけに取れていると、胸の大きいほうが、

「我らが人類の祖、アンティリア帝国聖神魔導皇帝が第33子、不死鳥のユリーカっ!」

ローブをばさぁっとさせて、名乗りあげる。


発育の良すぎる部分もゆれる。

やらしいことをしてないのに、やらしく見えて、反射的に目を逸らす。


ユリーカは、目を逸らされても気にしないようで、近づいてきて無邪気な顔でのぞき込んでくる。

巨大な双丘も近づいてくる。

目を逸らしつつ、

「…………リョースケ」

とりあえず自己紹介。

「…………リョウ?」

怪訝な顔をして見返すユリーカ。

「リョースケ」

「リョースケ…………? 聞いたことのない名前ね」

ユリーカはメイドの方をみる。メイドもふるふる顔を振った。


「まあいいわ。リョースケ…………」

すこし言いよどみ、ごくり、と唾を飲んでから、

「……………………何が欲しい?」

なぜか怯えるように聞いてくるユリーカ。

「……………………布団」

石造りの床は体温を容赦なく奪っていく。

寒い。めっちゃ布団がほしい。

「布団??」

拍子抜けして、すっ頓狂な声をあげるユリーカ。

「……………………内臓とかいらないの?」

ユリーカはお腹をおさえている。

どうやら、内臓ってのは牛や豚のモツという意味じゃなく、人間の内臓のことらしい。

「いらねーよ。どーすんだよ、それ」

ちょっと黙り込んで考えるユリーカ。

黙り込むと、美人に見える。

〝深窓の令嬢〟みたいな気取った言葉が似合いそうだ。

しかし中身はポンコツのようで、

「……………………食べる?」

「食べねーよ」

「えっ?」

困惑の表情。

ユリーカは真面目に言っているようだ。

「人間の内臓なんてもらっても困る」

「…………ほんとに?」

ユリーカは目を真ん丸にして驚いている。

「よかったあ」

心からの声を漏らして、お腹を押さえながら安堵する。

何を言っているのか分からない。

言葉が通じるには通じるが、さっきからなんだか会話が噛み合っていない気がする。

「…………ほんとに布団でいいの?」

「寒いから早く」

ガクガク体が震えてきた。

「じゃ、ちょっとまって。よう――――…………」

突然、黙り込み、急激に顔が赤くなっていくユリーカ。

「っ…………」

視線を合わせず、うつむきがちにチラチラ見てくる。そして、

「リョースケって…………、インクブスなの?」

ユリーカの頬はリンゴのように真っ赤赤だ。

「インクブス?」

なんだそれは。

「……………………」

唇を噛み、見つめてくる。

まったく、見当がつかない。

「……………………こ、これも、含めて、そ、そういうプレイなの…………?」

もじもじし出すユリーカ。

――――あっ。そういうことか。

「……………………スケベ」

「すっ、スケベじゃないもん!!」

ユリーカは子どもみたいな口調で抗議。

「そっちがカラダを求めて来たんでしょ!!」

「求めてねーからっ! 一言も言ってねーし!!」

「だって布団って聞いたら、そう思うでしょ!?!?」

「思わねーよ!!」

「くっ」

唇を噛むユリーカ。

「シャオティエンはどう思う?」

またしてもメイドをちらりと見る。

猫耳メイド――シャオティエン――は顎に手を当て黙考。

この東洋系のメイドはオデコが広く、主人と同じく知的な顔立ちをしている。

そして、一言。

「エロい意味です」

こっちもポンコツだった。

「違うっ!!」

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