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記憶
臓器に記憶が宿る、というのを聞いたことはないだろうか。
私はそうであったらしい。
それがどこの誰の記憶かは分からないが、まぁ奇異な記憶であった。
私の知っている常識とは違った、まるで御伽噺のような世界の記憶であった。
作家や脚本家の記憶が宿っていたのだろうか。
でも、それでもそこは物語を読んでいるように面白く、自分で体感したかのようにリアルであった。
そう、私は事故で入院した。顔面の一部と足の一部に怪我を負い、手術で金属や他人の血液を身体に入れなくてはならなかった。
事故の関係者である女性は全員死刑となった。
貴重な男性に危害を加えたのだ。しょうが無い。人として死を悲しむ心はあれど、法律で決まっていること。詮方ない。
そして何故だろうか、先程得た記憶のせいだろうか。耐え難い情動が私を襲う。
以前はこのようなことを考えたこともなかったし、そんな自分を想像出来なかった。
幸い、記憶と違って私の望むことは容易く叶えられる。
今は身体を休めて体力の回復に至ろう。