4件目☆新鮮馬煮定食
なんとゆう残酷な名前!
しかし、人間界ではお目にかかれない1品。
それが今回の料理だ。
『新鮮馬煮定食』
そんな得たいの知れないメニューを提供しているのはゲリラ的にオープンしている肉屋【ミリオンス】。
そのお店は鬱蒼と繁った大森林の奥にひっそりと存在する牧場にあった。
森林のなかに牧場があるだけでも違和感があるのにそんなとこで飲食店なんて儲かるのだろうか?
わからない。
なかなかに謎な店舗だが勇気をもってその敷地へと一歩踏み出してみることにした。
まずセリカの目に飛び込んできたのはたくさんの馬たち。
牧場なんだから当然だがいろんな動物たちがいる。
ポニー
アンダルシアン
セルフランセ…ん?
ここにいるの全部、馬じゃない?!
そう、ここは馬専門の牧場なのだ!
水辺で水浴びしている馬たち。
優雅なものだ。
ほのぼのとしていてここが魔界であることをつい忘れてしまいそうになるほどに。
馬たちは水が心地いいのか浸りながらはしゃぎ回っている。
「やぁ、遠いところはるばるよくお越しくださいました。」
そこへやってきたのは、この牧場&飲食店のオーナーであるマグニチュード10さん。
「10さんはじめまして。あの馬たちはあの水辺がよほど気に入っているんですね、一向に出ようとしません。」
「はっはっは。あれはね、出ようとしないんじゃなくて出られないんですよ」
「出られない?」
「ここの名物の名前はご存知ですよね?」
「もちろんです! 新鮮馬煮定食ですよ…あれ?」
「お気づきになられました?」
「馬煮…。」
「そうです! あの子達は戯れているわけじゃなくて、今からのお客様のために頑張っているんです。」
「…。」
「作り方を見られたかたはだいたいそんな反応なんですよ。ここ魔界なのにね…。」
そうして語り合ううちにいろいろとわかってきた。
あの子達の体内にはすでに消化器官はなく、外科的に取り出して、代わりにご飯が詰め込んであるとのこと。
そして、あの水辺のような鍋で煮込まれて…。
たしかに、新鮮なまま馬が煮られていた。
座席に座ってその時を待っていると、荷車で銀色のシートを被せたおおきななにかが運ばれてきた。
言うまでもない。あの馬のなかの一頭だ。
「イッツショータイム!」
店員の掛け声と共に銀色のシートがハラリと払われる。
専門の調理人だろうか? 巨大な包丁を携えたコック服の女性たちがシートが払われると同時に、荷台にさりげなく近寄ってきた。
茹で上がる…煮込まれた馬はそれほど悲壮な表情をしていなかった。
全裸でお皿に盛り付け、というより乗せられた馬は色とりどりの野菜に囲まれている。
きっと天国でこのお野菜を食べていることだろう。
合掌をして、胴体を切ると中からご飯が出てきた。
直前まで生きていたわけだからもっと臭うかとおもっていたのであるけれど、内臓がなかったからか幸いそれほど臭いはなかった。
「マダム、煮込み始める直前に大量のお酒を飲ませたので、ほどよくお肉が柔らかくなっているかと思います。」
…たしかに柔らかい。
そしの後も、尊い命に感謝しながら一頭丸々たいらげ、お店を後にしたのであった。
食、それは人が命を紡ぐ上で必要なもの。
しかしその影には必ずたたれる命も存在する。
明日、飲食店で煮込まれているのがまだ馬にとどまっていることを祈るばかりだ。
もし、好き嫌いで尊い命をすてたりすると、店主がフラりと訪れるかもしれませんね。
あなたのもとへ。
さすがにリアルにそんなまるごと煮込むなんて所ないですよね??
ない、ですよね??((( ;゜Д゜)))