3件目☆弟子に託されたトマッティラーメン
先日、人間界のとあるラーメン店の店主が息をひきとった。
たくさんの客を魅了した、今はもう作られることのない伝説となった一杯。
『トマッティラーメン』
あっさりとしたイメージのトマト。
それをふんだんに使って、どこをどうやったか、ドロドロのまるでミートソーススパゲッティを食べているかのような錯覚を起こさせる、そんなラーメンだった。
通な人に至っては麺を先に食べてからごはんをいれて楽しむ人もいた。
一口食べると病み付きになり、もっともっと食べたくなる一杯。
誰もがその失われたレシピを悔やんだ。
もう、人間界で食べることはできないのだから…。
━━━━━━。
━━━━━。
━━━━。
━━━。
━━。
━。
実はその師匠、生前にたった一人だけ弟子をとっていた。
しかしその弟子を表に出すことはできない。
なぜならその弟子は、
魔族だったからだ。
師匠亡きあと、師より託されたトマッティラーメンのレシピを託された弟子は魔界への道を急いだ。
そして、何度も何度も師匠の味を作ろうと挑戦し、そして同胞の魔族たちへ売り始めた。
しかし、なにかが足りない。
師匠の味には届かない。
そして人間界と魔族では好まれる傾向が違う…。
だが弟子は諦めなかった!
そして遂に、弟子は魔界での師匠の思いを受け継ぐ一杯を産み出したのだ!
『時間よトマッティラーメン』
その誕生の瞬間であった。
この知らせを聞いたわたし、そして師匠のファンだった魔界在住の人間たちは、弟子のもとへと集まった。
オーダーを通し、その一杯に逸るこころを抑えながら、ただその時を待つ。
そうしてやってきた一杯。
集まったファンたちはそれぞれの顔をみて頷きあい、その一口を口へと運んだ。
辛い!
唐辛子の辛さだ!
そう、師匠の熱い思いを受け継いだ弟子は、その再現させたい思いをスープに込め、スタミナラーメンとして爆誕させたのだった。
唐辛子のピリリッとした辛さのなかにあり、口の中へと広がる、あのトマトスパゲッティのような甘みが、口にしたものたちを唸らせる。
加えられたアクセントはそれだけじゃない。
ミートの茶色。
スープの赤。
麺の透き通るような黄色。
そして、中央を彩るかのように施された粉チーズ!
そんな進化した師匠のレシピを武器、そして宝として大切にして、今日も麺屋『エリアビステンサーリ』はお客をさばいて行く。
人間界で忘れられた味を、魔界で広める。
そんな弟子の努力を、わたしもまた見届けたいと、そう思う午後3時。
おやつの時間のセリカなのであった。
ブクマ・評価よろしくお願い致します。
今日の一品は、去年まで奈良県天理サービスエリアで食べることができた『トマトラーメン』についてご紹介させていただきました☆
このトマトラーメンはほんとに美味しくて、ラーメンなのにトマトスパゲッティを食べていると思ってしまう再現度の高い味わい、そしてその濃厚さにはまっていたものです。
先日、緑茶ラーメンを書き出してから、もう一度食べたいと思って来店したのに、すでにメニューから消えていたトマトラーメン。
この弟子のように、どこかでまた食べれるようになる日を心待にするばかりです。