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八十九話 番犬、惚気ける?

魔王「よう、今日は俺だ。最近主要キャラしか出てこないのは、作者がサブキャラを増やしすぎてキャラがわかんなくなってきたからだな。そんなんであれだが、よかったら最後までよろしくな!」

占いを行われる部屋は、閑散としていた。


机や水晶玉も無く、あるのは占い師の腰掛ける椅子と、部屋の四隅と中央に置かれた観賞用の植物ぐらいだ。そして何故か足元には枯葉が積もっている。


そして、今俺たちの目の前にいるのは五百歳の占い師。


「……あんた何やってんのよ」


五百歳かぁと感心する俺の横で、アイーダが微妙な顔をした。


「なんだ、知り合いか?」

「臭い嗅げばわかるでしょ……って、あんた今人だったわね。ま、臭いがわかんなくても魔力で一発よ」

「あらぁ、バレちゃったわ」


困惑する俺を挟んで行われる会話に、俺が一切ついていけないまま、アイーダが占い師を指さして呼んだ。


「マリン。副業なんてしてる暇はないでしょ」


何っ、マリンだと?

俺は神経を集中させて、目の前の相手の魔力を探る。確かにマリンっぽい。


見た目もそうだ。あっちのマリンはおネエっぽいが、本当に女性だったらこの占い師のような見た目をしていることだろう。


しかし……。


「ふふふ。ハズレよ。そうそう、あたくしの年齢はちょっとサバ読んでるわ」

「ならマリンじゃない。違うの?」

「ええ。正解は……」


占い師が立ち上がって、観葉植物に手を触れる。すると、ザワザワと葉が揺らめき、突如舞い上がって天井に張り付いた。


「正解は、マリンの双子の姉弟の姉よ♪」


……姉かー。


なんとも言えない感情になる。


マリンか……。少し苦手意識があったが、まあ悪い奴ではないな。あの時は、初対面の印象が大柄だから、巨人にもみくちゃにされたことを思い出したが。


また挨拶で絶死海にでも行くとしよう。


「姉……あいつ姉なんていたの?! は、初耳だわ……」


と、俺よりも衝撃を受けているアイーダ。アイーダも知らなかったのか。


そんな俺たちの様子を見てか、占い師がうふふと妖艶な微笑みを浮かべる。そして、遠くを見つめて語る。


「マリンはね……。勇ましい男の子なのよ。あの子、女に目覚めてから、急に独り立ちがしたいって言ってね。そのまま魔王軍に志願しに行ったのよねぇ」


……そんな過去があったのか。


「まぁあの子を女に目覚めさせたのはあたくしなのだけれどおっほほほほほほ!」


……こんな姉がいたのか、マリンよ。


大笑いするマリン姉にジト目を向けながら、俺はごほんと咳払いをして話を進める。


「それで、占いっていうのは何をしてくれるんだ?」

「あら、もう占っちゃってるわよ」


いつの間に。それらしい演出は間違いなくあったが。そう……この葉っぱとか。


「へえ、葉っぱで占うのね、珍しい」

「ええ。あたくしは植物を操れるのだけれどね。厳しい修行の末、植物にちょっとした自我を与えられるようになったの。ま、簡単にいえば「成長したい、飛び立ちたい」っていう気持ちを増幅させる程度」


言いながら再び観葉植物に触れれば、枝がうねり、なかった葉が生えてざわめく。


「こんな風にね♪ それで……勝手に占っちゃったけど、あなたたち二人の今後の人生であってるかしら? よろこびなさい! 順風満帆の生活が待って」

「もう大丈夫です! っていうかそんなことを占いに来たわけじや……な、いわよ?」


……こっちをちらっと見るな、アイーダ。というか、なんてことを占ってるんだマリン姉よ。


……順風満帆……二人で生活……。


いやいやいやいや。俺は根は犬だぞ? 落ち着け、理性を保て。


「ふ、二人じゃなくて、それぞれで占って欲しいんだが」

「あら、そうだったのね。そういうことならあたくしに任せなさい♪」


そう言って部屋の隅に隠してあった箒を取り出す。


「ただ、ちょっと待って貰うわね♪」


何をするかと思えば、俺をゆうに超える高身長を活かして、箒で天井の葉を落とし始めた。


手動なのか。そうなんだな。……そして足元の枯葉はこれが原因か。


待っていると、さっきの占いの話を思い出しそうになる。


……しかし、まあ、仮に、本当にそういう状況になったとして、俺は人型として生きていけるだろうか。


「……あとでパリスに聞きに行くか」

「は、はぁ?! な、何をよ」


おっと声に出ていたようだ。アイーダにじっと見つめられ、俺は罰が悪くなって顔を背ける。


若干頬が赤かった気もするが……問うのはやめておこう。


パリスの元に行く用事は出来たし、その時にでもな。


「さ、準備を出来たわよ♪ それじゃ、どっちを占えばいいのかしら?」

「あ、あたしはいいわ」

「お嬢ちゃんも占ってもいいわよ?」

「いいってば! もう、ほら、ケルベロス」


間違いなく耳まで紅潮していたようだが、あえて触れずにニヤつく口元を隠しながら、マリン姉に尋ねる。


「俺の今後の悲劇のことを占って欲しい」

「ピンポイントねぇ。それ、あたくし前に弟にも聞かれたわ。幹部になった時の報告のときに、全く同じことを」


もうすでに、俺の言ったことを把握したようで、マリン姉は先程とは打って変わって真剣な表情を浮かべる。


「ふざける題材じゃないのはわかってるわ。だから真剣にやらせてね♪」


そして、植物に触れる。すると、今度は葉が舞い散らないし、枝がうごめきもしない。


代わりに、ゆっくりと、ゆっくりとその幹の、枝の形を変えていった。


「……出たわ。あなたにこれから起こることを話しましょう」


俺たちはゴクリと喉を鳴らした。

魔王「最後まで読んでくれてありがとう。どうだ? ふぅ。娘をこうして見守ると、むず痒いものがあるな……。しかし、ケルベロスか……。まあいい。なんだって構わん。それじゃ、次回もよろしくな」

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