八十五話 番犬、久しぶりのシリアスを察する
ケルベロス『よう。今日は俺だ。中のやつが受検が終わったようだから、更新が早まるぜ。それじゃ、本編だ』
あれから二週間ほどが経過しいよいよ試練の日。念の為俺は人化の薬を持つ。
「ワオオオオォォォォン!」
朝日の差し込む城下町に、普段より気合い増し増しでの遠吠えが響き渡る。
ぽつぽつと民家の灯りが点くのを眺め、俺は城下町に背を向けて城に足を向ける。
「ケルベロス様! おはようございます!」
「「おはようございます!」」
『おう、おはよう。悪いな。今日はもふらせてやれなくて』
街の見回りに行こうとしていたいつもの兵士たちと出会う。
「いえいえ。今日はケルベロス様にとっても大事な日でございましょう。我々一同、上手くいくよう祈っております!」
『ありがとう。お前たちも頑張ってくれよ』
「はっ! お任せ下さい! では!」
なんと励みになることか。……何気に内心めちゃくちゃ不安なのだ。
なかなかに他人の言葉というのは効くものだな。
そろそろ行くかと足先を城へ向ける。
しかし、試練、か……。一体どんなものなのだろうか。戦闘系だとするとなかなか厳しいものになりそうだ。隠密行動は得意なのだが。体毛で足音を消せるからな。
「ケルベロス様! おはようございます!」
『おはよう』
門番のいる城門をくぐる。
玉座の間へと向かおうかと階段へ向かおうとした。しかしその必要はなさそうだ。
「……ケルベロスよ。よく来た。まずはその勇気に敬意を表そう」
真剣な表情で、部下にするのと同じ口調で、魔王は広いロビーの真ん中。巨大な魔方陣を挟んで俺と向かい合う。
「これから行うのは幹部の試練。……少々のシリアス、及び痛みは覚悟してくれ」
これが最後のジョークだと言わんばかりにドヤ顔をする。どうみてもそれにつっこめる空気ではないが。
俺は黙って頷いた。
「よろしい。それでは試練の説明に移ろう。この試練は、《確定した未来と向き合う試練》だ。わかるか?」
『……なんとなく』
「ならば、詳細に説明をさせてもらおう」
頭では冷静に答えたものの、少しだけ動揺した。そのまま、魔王は説明を始める。
「確定した未来のうち、向き合うのは『悲劇』だ。尚、そこで起こったことは、実際にこの世界で起こるまでは思い出すことが出来ない」
なるほど。その設定は重要だ。思い出せてしまったら未来が確定せず、矛盾してしまうからな。
「細かく言えば思い出すのは然るべき時に、なのだがな。質問はあるか」
『どうやったら成功になるんだ?』
「それは我にもわからない。この魔方陣の中の世界が決めることだ」
かなりアバウトだな。それにしても、この魔王はそんな力も隠し持っていたのか。さすがだ。
「さあ、覚悟はできたか?」
魔王が右手を差し出し問う。
『……やってやるさ』
ニヤリと犬の口の端を上げて、答えた。
「わかった。では、魔方陣の中心へ」
俺は言われたとおりに歩を進める。緊張する。ずっと番犬まがいのニートをやってた身にはかなり重い。
魔方陣が七色に輝き始めた。
「検討を祈る。……頑張れよ、ケル」
……わかってるとも。
少し遅めの親孝行だ。
『ありがとう。もちろんだ』
そうして俺の意識は架空の世界に吸い込まれた。
ケルベロス『最後まで読んでくれてありがとう。どうだったか? 次回、衝撃の展開……かもな。ああ、あと、作者がTwitterの創作垢を作ったみたいだから、よければフォローしてあげてくれ。じゃあな』




