八十四話 番犬、定食屋で話し合う
マトイ「どーも。今日は俺だ。ふと思い出したが、俺はおっさん設定らしい。それを途中から作者はすっかり忘れてたんだがな! まあ本編だ」
みんなが帰った静かな店内。残ったのは俺とマトイとジミーのみ。
「よーう。お疲れ」
『おう、マトイ……』
慣れないテンションの魔王に付き合うのは想像以上に堪えた……。アイーダたちはあの騒がしさの中でのんびり女子会。逃げる場所も無い。
女子の精神力よ。年齢は問わん。
「で、どうなるって?」
『ん、受けることにしたよ』
そう伝えると、マトイが少し驚いたような顔をする。
「へえ。てっきり断るかと思ってたが」
『俺をなんだと思ってる。お前の思うほど俺は不真面目じゃないぞ』
かといって真面目でもないが。
「そうか……」
……どうした、急に黙り込んで。
意味ありげに呟いて、遠くを見つめながら、手元のグラスを弄ぶ。
『なんだ。珍しい表情をして』
「ん? いや、なんでもねぇよ。俺も疲れっちまってんだ。年だな」
自嘲気味にくっくと喉を慣らして笑う。
『年、ねぇ』
ふとパリスを思い出した。幹部の寿命は長い。デイジーさんを見れば一目瞭然だろう。
だから、パリスの時の衝撃は大きかった。
『……お前も、自分の寿命とかはわかるのか?』
何気なしに聞くと、マトイが「そうだなぁ」と口を開き。
「……いいや、わっかんねぇよ。俺はただの人間だぜ? ちょっと神様から魔力を貰ったぐらいのな」
『ジョークになってないぞ。このロスト大陸の中心地まで来ておいて“ただの”なんて言えないだろう』
「そうだな、確かに」
どうせ、まだまだ生きるのだろう。それこそうちの幹部たちと同じくらい。そんな未来が見える。
『お前もうちの幹部になってたりしてな』
「馬鹿言え。みんな大反対だろ」
『わかんねぇぞ? あの魔王のことだ』
案外すぐに気を許してしまうのかもしれない。他のやつらからの評判は知らないが、こいつがちゃんと働けばすぐ信頼されるだろう。
『で、いつ作業場は見せてくれるんだか』
「そろそろ諦めてくれよ……」
呆れか疲れかでぐったりとした笑みでテーブルの上で突っ伏す。
こいつ、相も変わらず毛は取りに来ているのに、まだ見せてくれないのだ。どこまで引き伸ばすつもりだ。
「まー、でも一個だけ進捗情報」
人差し指を、寝そべった体勢でぴっと立てる。
「もう少しだ」
『そうか。じゃあ楽しみにしとくよ』
そう言って、俺は目の前に置かれているミルクをぺろぺろ舌で口に運ぶ。
ちらりと横目に映るマトイの顔は、よくわからない笑顔をしていた。
マトイ「最後までありがとうな。どうだった? まったく、そろそろ諦めてくれくれねぇかな。こちとらほんとに忙しいんだ。……いろいろ、な。ま、次回もよろしく」




