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六十九話  番犬、衝撃の光景を目の当たりにする

「……ん、あれ?」

「起きたか、ウィン。パリスー」


俺はウィンが目を覚ましたのを確認して、パリスを呼ぶ。

あの後、無事みんなとも合流し、一人の死者もなく……まあ、死なないのは当たり前だが、それどころかみんな傷すら負わずに帰ってきたのは驚いたな。流石、といったところか。

扉がガチャリと開く。


「やあ、ウィン。起きたみたいだね」

「……うん」


これは、風属性のウィンか。と勝手に納得しながら、あとはパリスに任せようと部屋を出た。

実は、あれは勝った訳では無い。そもそも勝てるわけがないのだ。


乗り移ったリーフに勝つということはーーウィンの、幹部の消失を意味するのだからな。


だから、今ウィンは三重人格になっている。

あの魔法は、パリスが編み出したオリジナルの魔法で、憑依などをされた時にその解決方法を見つけるまでの応急処置のようなもの。


簡単に言えば、憑依したものを別の人格として、被害者を保護する魔法なのだ。

ま、かなりリスクもあるが……仕方ないな。


俺は家を出る。するとーー


「ケルベロスに一気飲みさせたい人ー!」

「「「はーい!」」」


なんか宴やってた。


……いや、何この状況。俺知らない。さっきまで普通に談笑してたじゃん。どっからそのバーベキュー用具とか取ってきたし。あとその食料も。


と、酔ったマトイがふらふらとこちらに近づいてくる。顔が真っ赤だ。出来上がって……。


「おい! 俺は飲まねえぞ!」

「拒否権なんてねぇぞ〜」


くっそ! 最悪の酔い方じゃねえか! よりにもよってマトイが……。


「酒を押し付けるな!」

「いいじゃねえっすかよ〜」

「よくない。おい、アイーダ。こいつの酔いを……」


助けを求めて変化魔法を持つアイーダを探すとーー


「うへぇ〜」


もうダウンしてた。おい嘘だろアイーダ。俺はお前のことが好きなのに……いや、そんな姿見せられるともう……。


「シクルよ。酒って美味しくないのぅ」

「アイス様。ちょっと酔ってきてるな。冷気抑えないと……」

「ふぇ? 冷気なんて出しとらんぞい?」

「いや、もう香りだけで酔ってるぞ……」

「グレン! わいは悲しいで! 体が熱すぎてアルコールが飛びやがる!」

「残念っすね。ま、僕もお酒は苦手なんで、駄べりましょう?」

「せやな!」


……もう大分みんな完成してるじゃねえか……。

絶対こいつのせいだ。絶対そうだ。じゃないと、リンがあんなところで伸びているわけがない。


「おらぁ〜。飲めよぅ」

「だっから、飲まないって!」


俺は力任せにマトイを押し返す。すると、想定外の力で返された。

こいつ……自分の力の抑え方も忘れてやがる!


「ケルベロス〜。美味しいわよ〜」


と、アイーダの呟きが小さく聞こえてくる。

…………。

俺はマトイの手から酒を奪い取る。


「やけくそだもう!」

「あ! 俺の酒ぇ〜」


俺はやけくそ気味に酒を一気飲みする。

あんなアイーダの姿見せられたら飲まずにいられるか! 酒が飲めるかはわからんが、もう一回ぐらい飲んでみて


「おええええええ」


無理でした。酒飲めない体質みたいです。思っきしリバースしました。


「なっさけねぇなぁ〜」


からかってくるマトイの言葉を背後に、俺はとぼとぼと家へと帰って行った。


ーー ーー ーー ーー ーー

「あ、ケルベロス。帰ってきたのかい?」

「あんなところにいられるか」

「同感だね」


リビングに行くと、パリスが一人でコーヒーを啜っていた。

俺はその向かい側に腰掛ける。


「ウィンはどうなんだ?」

「ウィンは今、リーフと会話中だね。自分の中で折り合いをつけたいって」


まあ、そうだろうな。自分が一人増えたも同然なのだ。一人の時間が欲しくなるのもわかる。

が、まあ大変なことになったな。


「サンドはアレッタに、アイスはシクルに、リーフはウィンに、か……」


五大凶王のうち、三体は人型に乗り移れることがわかった。ファイアや、まだ登場していないアクアも含めるとどうなることやら。


「そういえば、あの虫の凶暴化はリーフが原因じゃないらしいよ?」

「そうなのか?」


何気なくさらっと言ったが、かなり重要なことである。あれがリーフのでないなら、なぜ今は収まっているのか、誰がやったのか……。


「ま、また詳しくは調査しないとね。ウィンは多分引き続きここを任せることになる」

「まるでお前が仕切っているみたいだな」

「そうだね」


ふと、パリスが俯いた。

それを怪訝に思って、声をかけようとするとーー


「ボク、幹部やめるんだ」

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