六十五話 魔王と凶王の力
アイス「今日は妾であるか。あんまり本編には出てないのであるがな。まあ、最後まで見ていって欲しいのう」
「さあ、集まってくれてありがとう。……結構な面々が揃ったね」
パリスが俺たちを見渡してそう呟く。
まあ、それも無理は無いな。なんと言ったって……。
「わいの力が必要なんやて?」
「そうみたいっすよ、ファイア」
俺が永炎連れてきた、ファイアとグレン。ちなみに連れ出すときに一回オセロをやってきたため、一番遅れたのは内緒だ。
「ひ、人が多いな……」
「シクルよ。妾に任せるがよい」
そしてこちらは、パリスが零雪原から連れてきたシクルとアイス。アイスは今、あの人化の薬で幼女へと変化している。なぜ幼女だし。
……そしてなぜ、五大凶王のうちの二人がこんなところにいるのかは聞かない方がいいのかな。
「マトイ様。私の力は不要な気がしてきましたので、帰ってもよろしいですか?」
「ま、まあ一応、な?」
あっちにはマトイが連れてきた竜人のリンが。
……というか、あいつ本気で面倒くさがってるな。まあ、そう思うのも仕方あるまい。なぜなら、ここには五大凶王が二体、幹部が一人に魔王の娘と元勇者。そして何より――
「――我は必要か?」
『なんで親父がいんだよ……』
魔の王、その名の通りの魔王がいるからである。
いや、本当になんでいるんだ。そしてアイーダはなぜこいつを連れてきた。正直、こいつがいたらこんなに集まる必要ないぞ。
そんな思いを込めてアイーダを見ると……。
「し、仕方ないじゃない。あんまり強い友達いないんだもの」
「てなわけだ。大丈夫か我が娘よ。親父心配」
「親馬鹿はやめて」
実の娘に適当にあしらわれてショックを受けている親父はともかく、かなりのメンツが揃った。これならば確実だろう。
「……じゃ、作戦だけど……」
「そんなもんいるか?」
そう声をあげたのはーー魔王だ。
魔王に全員の注目が注がれる。
「作戦なんて真正面からぶつかるだけでいいだろう。なんならーーうん、ひとつだけ仕事をしてやろうじゃないか。我が手を下すのはいささか不本意だからな」
魔王がニヤリと不敵に笑った。
ーー ーー ーー ーー ーー
「「「「「うわぁ……」」」」」
凶王を除いた俺達全員は魔王の仕事の成果を見て絶句する。
大森林が更地に変わりました。
「さ、流石魔王だね」
「お、俺っち初めて魔王様の力を見ました……」
「我が父ならが恐ろしいわ……」
「同感だ」
皆が思い思いの感想を呟く。ちなみに、魔王はこれだけやって帰ってしまった。
『あとは若者に任せよう』
それが理由らしい。
いや、一大事だから。あんたがいれば苦労しないから留まってくれと言ったんだがな。
「で? 妾たちは何をすればよいと?」
あまり衝撃を受けていないアイスがそうパリスに尋ねる。
パリスは、ひとつ大きく深呼吸をしーー
「ーー全力で、あの虫の群れを排除してくれ」
「御意。ファイアよ」
空を地面を覆う虫たちを見て、そうファイアに向かうアイスは、今までに見たことの無いような笑顔で言った。
「暴れていいんじゃとよ♪」
「マジか?! 漲るわ!」
ファイアもその言葉に反応して、火力を上げる。
凶王の並ぶその光景は、俺たちのような魔物には何も口出しできないし、何を考えているのかもわからない。ただ、わかるのはーー
「か、隠れた方がいいかしら?」
「アイーダ。同感だ」
アイーダがばっと地面に手をついて、魔力を流し込む。すると、俺たちを土ーーもとい、変化させられた鉄の壁が覆った。
「《獄炎・不死の炎》」
「《絶対零度》」
とてつもない魔力の奔流が、俺達の隠れている壁を直撃する。
外の様子がわからないもののーーその威力は容易く理解出来る。
アイーダが、ゆっくりと壁を解除した。
「やったったで! いやー、気持ちええな!」
「妾も、この人の姿でもここまでできたのが確かめられたから満足じゃ」
そう笑う二体の背後にはーー燃える氷と凍った炎の入り交じる大地。魔王の仕事と相まってそこは俗に言う地獄そのものだ。
俺達はそれに絶句しつつ、顔を見合わせる。
「……じゃ、行こうか」
士気が下がった気がするが、それは無視して行こうか。
アイス「最後まで読んでくれてありがとうの。どうであったか? 妾たち凶王にとって、これぐらいは朝飯前である。だが……魔王には敵いそうにもないわい。ああ、よかったら評価などもよろしくの」




