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六十四話 番犬。シリアスを察する

ケルベロス「やあ。今日は俺だな。……ちょっと、気になることもあるが、よければ最後まで見ていってくれ」

 この大森林に来てもう一週間が経つ。

 未だに俺たちは地上班と空中班に分かれて活動していて、最近はウィンがこっちに来たがあまり進展は無い。それほどまでになさ過ぎるのだ。情報が。

 だが、それは突然起こった。


 ズゴゴゴゴ……。


「うおっ?!」


 俺の横でともに地上の調査をしていたマトイが、不意の揺れによろける。


「大丈夫か?」

「おう。ビックリしただけだ」

「……元勇者なのに」

「ウィン。俺もだんだんお前のことわかってきたぞ。とりあえず毒舌」


 などと軽口を叩いてはいるが、現状かなり危ない状況だ。いつそこら中の木々が倒れてくるとも限らない。……まあ、きっとなんとかなるだろうが。

 その揺れは、かなり長い間起こっていた。そして、ようやく揺れがおさまる。


「……とりあえず、一度拠点に帰ろう」

「だな」

「了解」


 先程の地震のせいか変化した帰り道。盛り上がった根や倒れている木々の間をぬって俺達は拠点へと戻る。

 少し、胸騒ぎがしたのは気のせいか、これから起こるのか。

 拠点へと戻ると、すでにパリスとアイーダが話していた。俺達の接近に気づくと、話をやめてこちらを向く。


「お帰りなさい。無事かしら?」

「ああ。全員大丈夫だ」


 そう言うとアイーダがほっと胸をなで下ろす。

 それを横目に俺はパリスに向かって尋ねる。


「何が起こった?」

「わからない。ボク達も驚いたよ。……ただ、ひとつ変化があった」


 冷や汗を垂らしながら、パリスが苦笑いを浮かべて言う。


「……かなり、まずい」

「そりゃ、どういうことだ?」

「説明するよ。一度外に出よう。そして、空から見ればわかる」


 パリスがそんなことを言うのは初めてだ。……それほど、異常事態か。

 パリスの言葉通り、俺達はまず外へ出て、アイーダとパリスたちに魔法を掛けてもらって宙へ浮く。

 そこで目にしたのは……。


「……あんな山、無かったよな?」

「ああ。無かった」


 少し遠くに見えるのは、今までに無かったサイズの大きな山。

 突然の山の出現。


「零雪原もこんな感じだったのか……?」


 零雪原の山も突如出現したと聞く。これは……。


「偶然じゃ済まされない、か?」


 マトイが俺の言おうとしたことを代弁する。

 それに、パリスはゆっくりと頷いた。


「……まずい、ね」

「ウィン。お前も何か感じるか?」

「うん。感じる。ーー何かに呼ばれる声」


 何かに呼ばれる……?

 そりゃ、まさか……。


「ウィン。お前のスキル、なんだ」

「……《リトルリーフ》」

「本当に準備万端だな」


 偶然とは思えないそれに、俺は思わず笑ってしまう。

 それに、《リトル》と聞いたら……完璧に、あれじゃないか。


「ウィン。絶対に行くなよ」

「……ごめん。無理、みたい」

「は?」

「無理、矢理……あ」


 ぷつっと、何かの糸が切れたかのようにウィンが体の力を抜き、地上に向けて落下しーー


「やばーーうおっ?!」


 突如体制を立て直して、周りを無視した全開の風魔法で飛んで行った。

 吹き荒れる暴風。

 立ち尽くす俺達。


「……これは」


 パリスが頭を抱える中、アイーダが言う。


「本当に、まずいわね」


 ーー ーー ーー ーー ーー

「みんな、聞いて欲しい」


 一人かけた会議室。俺達は真剣なパリスの言葉に耳を傾ける。


「みんなも知っていると思うが、現状はかなり厳しい。幹部一人の脱落はかなり辛い。だから、提案だ」


 パリスが静かに言う。


「戦力になるやつを、今日中に連れてきてくれ。統制がとれやすいように最高二人まで。よろしく頼む。じゃあ、……解散」


 そうして、重い空気の中、俺達は魔法陣へと向かった。

 その道中で、マトイがふと呟く。


「……ウィン、なんで飛んで行ったんだ?」


 おそらくそれは、自分で確かめるために呟いただけなのだろう。


「……スキルのせい、だな。そして、あそこにリーフがいる」

「……マジか?」

「ああ。《リトル》って名がつくということは、リトルではない何かに引き寄せられたのだろう」


 シクルのように。そして、リトルと名前がつくということは……。


「体を乗っ取られる可能性もある」


 それが、一番怖い。

 俺達はそこから喋らず、魔法陣へと入った。

ケルベロス「最後まで読んでくれてありがとな。どうだったか? ……なんか、急にシリアスになったな。ほのぼのが売りじゃなかったのか? まあ、よければブクマとかよろしくな」

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