五十九話 魔王軍幹部ウィン
ウィン「……今日は私。よかったら見て行って」
風強いなぁ。
俺はそう思って空を見上げる。が、今日は雲一つない晴天だ。だが、その好天候に似合わない強風が吹いているのは・・・・・・。
間違いなく、俺の目の前に立っているやつの仕業だろう。
『・・・・・・』
「・・・・・・」
無言で見つめ合う俺たち。
・・・・・・こんな状況前にもあったな。結構前だがデジャブを感じる。
「・・・・・・こんにちは」
『お前から話しかけてくるのな。ちょっとびっくりしたぞウィン』
そう言うと今度は首をかしげる魔王軍幹部、ウィン。
スマートな体つきに、こしまである緑色の髪を自分の巻き起こす風がなびかせ、その両目は死んでいるかのごとく色がない。
「・・・・・・喋るところだったでしょ」
『そうだけどな』
うーん。これは面倒だ。
これは有名なのだが、ウィンは二重人格なのである。この風属性を扱う姿と、木属性を扱う明るい彼女の二つの姿がある。
で、この風属性の時はなぜかすごい冷たいのである。さっむい氷魔法使うやつはコミュ障なのにな。属性間違えてないか?
「・・・・・・」
『・・・・・・』
また気まずい沈黙。
・・・・・・これコミュ障幹部の時もあったよなぁ。何? コミュ障多いの? うちの幹部は。あ、俺そもそも魔王軍じゃないから何も言えないや。
「・・・・・・もふもふ」
『ん?』
「させて」
・・・・・・させて?
ああ、もふもふか? 仕方がないな。
『ほら』
俺はお座りの体勢になって、首元をさらけだす。そこに、ウィンがゆっくと体をうずめた。
・・・・・・でも、風がすごい吹いてるんだよね。だから俺の毛飛んできそう。
「・・・・・・あんたやっぱり気持ちいい」
『そうかい。気持ちいいなら少し風を抑えてくれ』
そう言うと、今度は風がまったく無くなった。
あのコミュ障の時とは違うなぁ。もう比較しちゃうよ、無意識に。
というか、最初から風を抑えられるなら抑えてて欲しかったな。ちょっと奥の大通りの人たちパニックになってんじゃん。
「・・・・・・ん。ありがと」
『どうも。今度から風は気をつけろよ?』
「わかった」
それだけ言って、ウィンが魔王城の中へと入っていった。
一体なんの要件なんだろうな。それを聞くのを忘れていたが、おそらくあれの報告だろう。
ウィンは、シクルやファイア、まだ出てきていないがマリンと同じく、凶王の領地を調査したり監視したりする役割がある。今日はその定期報告だろう。
無の砂漠はもうどうにもならないから誰も付けてないらしいが。
とか考えていたら、今度は誰かが飛んできた。
「やあ、番犬様」
『パリスか。どうしたんだ? 薬はまだあるぞ』
「今日はそういうわけじゃないよ。でも、君にも関係があるんじゃないかな?」
白衣を揺らめかせながら、宙に浮く魔女は勿体ぶるかのように微笑む。
『そりゃどういうことだ?』
「さあ? でも、すぐにわかるよ。だって・・・・・・」
「ケルベロスー!」
俺は背後から聞こえる大声に体をびくつかせる。
・・・・・・もう見なくてもわかる。
「もふらせ」
『やだ』
「ぐはっ?!」
俺は後ろから猛ダッシュでやってきた魔王を、透明にさせた尻尾で転ばせる。
「痛いよ?!」
『知らん。勝手にこけただけだろ?』
「そ、そうか・・・・・・。いや、絶対に透明化だろ」
ん? なんのことかわからんな。知らん振り知らん振り。
こけて顔面を強打した魔王が、顔を撫でながらパリスの姿に気づく。
「お、お前も来たか。先に中に入っておいてくれ」
「わかったよ。じゃ、またあとで」
そうしてパリスが去っていく。
取り残されたのは、俺と魔王の二人。
『で? なんできたんだ?』
「そんは嫌悪感丸出しで話さないでくれよ・・・・・・」
『蜂の巣の処理してなかったお前が悪いな』
ぎくりと音がなりそうなほどに、魔王があからさまな反応をする。
「・・・・・・わ、忘れてたからさ」
『もふもふ一ヶ月禁止』
「マジで?! いや、そもそも普段もふらせてもっらって無いからな。変わんない・・・・・・?」
おっと気づいてしまったか。勘のいいヤツめ。
ま、そんなことはどうでもいいんだ。まったく話が進まないな。
『で? 本当に何の用だ?』
「ん? ああ。あれだよ。新しい任務だ」
・・・・・・うわぁ。
だろうとは思ったけども。まあ、幹部が二人も集まるし、パリスの態度でなんとなく察したけども。
「ま、詳しい話は中でな」
俺はその言葉に本気の嫌な顔で返した。
ウィン「最後までお読みいただきありがとうございますっ! どうでしたか? あっ。これ、本編には出てこなかったですけど、木属性のウィンです! じゃあ、次回もよろしくお願いしますっ!」




