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五十八話 番犬。部隊長の正体を知る

デイジー「ほっほ。今日はわしかの? 久々じゃなあ。覚えとるか?ま、本編じゃ」

 朝。


「ワオォォーーーーーン!」


 恒例の俺の遠吠えが響き渡り、街は息を吹き返す。

 そして言うまでもないが、俺の仕事はこれで終わりだ。まあもふらせる仕事もあるけどな。朝にも一回。


「おはようございます! 癒やしのケルベロス様!」

『おーう。おはよ』


 やってきたのは鎧で武装した屈強な男達。そう。魔王軍の部隊である。

 その戦闘のリーダーもとい、癒やしのケルベロスの名付け親に俺は尋ねる。


『鎧着てたらもふらせてやらんぞ。痛いし』

「いえ、本日は少々仕事がありまして、もふもふは残念ながらご遠慮させていただきます」


 なんかその言い方だと俺からもふってくれって頼んでるみたいじゃないか?

 と、まあそんなことは置いておいて、いつも警備しかしていない自宅警備員のような彼らに珍しく仕事が舞い込んできたと。


『そうか。ちなみになんの仕事だ?』

「ええと、郊外にある巨大な蜂の巣の駆除だそうです」

『なるほどな、頑張れよ。怪我しないようにな』

「はい! では!」


 そうして今日も去って行く兵隊を見送る。

 ・・・・・・まてよ、郊外にある蜂の巣・・・・・・どこかで覚えが。


『・・・・・・あのくそ魔王(親父)


 それって何月も前の、ちびっこどもと遊んだときに見つけたやつじゃねえか。どんだけ時期が経ってると思ってんだあいつ。

 というか、専門の業者とか言ってた癖して自分の兵士じゃないか。

 ・・・・・・しばらくはもふもふ禁止だな。


 ―― ―― ―― ―― ――

 さあ、もうみんなわかっていると思うが、改めて言おう。


 暇だ。


 まあ、もう聞き飽きただろうがな。

 だから――


『やあ、デイジーさん』

「おや、番犬様じゃないかえ。久しぶりじゃのう」


 こうやって、見知った人に声をかけるぐらいのことしかないのだ。

 前を通ったのは、鬼の一族であり元魔王軍幹部であるデイジーさんだ。前は少し世話になった。

 と、俺の目線はデイジーの後ろの男へ向く。


『・・・・・・見覚えのある顔だ』

「はっ! 癒やしのケルベロス様!」

『ああ、部隊長か』


 もう呼び方と声でわかる。こいつは俺がいつももふらせている、冒頭にも出てきたあの部隊長だ。

 というか、顔全然覚えてなかったな。


「おや。メルは番犬様と知り合いなのかい?」

「ああ。僕が魔王軍の部隊長だって話したろ? いつももふもふさせて貰っているんだ。母さん」

「そうかい。うらやましいねぇ」


 部隊長もといメルは、橙色の短髪に黄色がかった肌と立派な角を生やしていた。

 いつももふらせているのにこいつの顔を忘れていたのは、おそらくこいつの容姿を描写していなかったからだろう。すまないな部隊長。


『それにしても、お前デイジーさんの子供だったのか』

「ええ。そうなんですよ。そういえば、この前うちに来たらしいですね」

『ああ、行ったが・・・・・・散々な目に遭ったな』


 俺はあの屈辱を思い出して苦笑いを浮かべる。

 それにメルも苦笑いで返し、重たそうな手の中の荷物を持ち直す。


「ああそうじゃ。番犬様に伝えたいことがあったのじゃ」

『伝えたいこと?』

()()じゃよ」


 ・・・・・・予言、か。

 俺は無言ですっと立つ。


『なんだ?』

「ほっほ。そんな気張らんくてもいい内容じゃがな?」


 デイジーさんが俺の大きな耳に顔を近づける。


「近々、大森林に行くぞい」


 ・・・・・・ほう、大森林か。

 大森林といえば、東に存在する凶王リーフの領地だったか。だが、それだけなら確かに気張る必要はなかったな。緊張して損したぞ。


「大森林には、虫がたくさんいるとも聞くから気をつけなねぇ」


 安心した俺の耳に、ささやくような声がかけられる。

 俺はばっとデイジーさんを見る。


『・・・・・・まじか?』

「ほっほ。さ、メル行くよ」

「はい。じゃあまた、ケルベロス様」


 そうして笑顔で去って行く親子を、俺は遠目に眺める。

 ・・・・・・・虫、ねえ。

 大森林に行くこと自体は別に問題ないのだが・・・・・・。


 俺、虫が苦手なんだよな。 

デイジー「最後まで読んでくれてありがとうのぉ。どうだったかの? いやはや、メルがこんな仕事をしていたなんて覚えとらんかったわい。じゃあ、次回もよろしくの」

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