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五話 魔王幹部《氷結のシクル》

 またも新キャラです。まあ、新キャララッシュはこの辺でしばらくは収まるかな?


 巨人定食屋で疲れ果て、昼。

 なんだかだいぶ疲れてしまった。やはりああいう場所はなれないな。

 俺は地面に寝そべっていた。

 日差しで温められた石畳が俺の眠気を誘う。

 さてと、寝るか・・・・・・。

 ビュゥン!

 さむっ!

 春の季節に似合わない冷たい風が吹く。

 こんな風を吹かすなんて、一体どこの誰だよ。

 そう考えている間にも、冷気がどんどん近づいてくる。

 これは・・・・・・あいつか。


「やあ、久しぶりだな、ケルベロス」

『・・・・・・やはりシクルか』


 冬の冷気を纏って現れたのは、魔王の幹部が一人。クールな凛々しい顔に、雪のように白い肌と髪。《氷結のシクル》だった。


『・・・・・・』

「・・・・・・」


 謎の沈黙が起こる。


『・・・・・・なあ、俺は寝たいからその冷気を抑えてくれないか?』

「へ? 冷気? あ、ああ。すまんな」


 シクルが調整したのか、冷気がおさまる。


『任務が終わったのか?』

「あ、ああ。無事終えてきたぞ」


 そう言って、もじもじしだすシクル。


『・・・・・・トイレか?』

「違うぞ?!」


 いや、そんなもじもじしてたらそう思っちゃうじゃん。


「う・・・・・・。私は人と話すのが苦手なんだ。す、すまんな」

『俺犬だけどな』

「いや、そうだけども・・・・・・」


 そう言ってシクルがまたももじもじし始める。


『で、任務はなんだったんだ?』

「ん? ああ。あれだ、新しく出現した雪山の調査だったよ。なぜあんなものが突然現れたのか・・・・・・」

『突然?』

「そうなんだ、何者かが意図的に造ったのか、単に魔力の影響か・・・・・・。まあ、どちらとも分からずじまいだったのだがな」


 ふむ。それは少し気になるな。

 ・・・・・・というか。


『お前、目ぐらい合わせようぜ?』

「そ、そうしたいのもやまやまなのだが、緊張してしまうのでな・・・・・・」


 そう言って、シクルが目を泳がせる。


『知ってるか? アイーダの話によると、そういうのを“コミュ障”って言うんだとよ』

「うっ。なんか心にダメージが・・・・・・」


 胸を抑える仕草をする。


『じゃ、報告頑張れよ』

「えっ?! あ、ああ。そうだな・・・・・・」


 城の方へシクルが体を向ける。しかし、なぜかチラチラとこちらを見てくる。

 ・・・・・・めんどくせえなあ。


『俺の体に触りたいのか?』

「えっ。いや、そういうわけでは・・・・・・」


 またももじもじし、チラチラとこちらを見だすシクル。

 わざわざ否定する必要なんてないのになぁ。


『ほらよ』


 俺はいつもの姿勢をとる。


「い、いいのか?」

『何言ってんだお前。一回に抱きつく時間が一番長いのお前なんだからな』

「そ、そうなのか?!」

『そうだよ。ほら、早く』


 ちなみに、順位としては一位がこいつ、二位が魔王、三位がアイーダだ。

 こう見ると、なんでこいつが一位なんだよって思うな。


「じゃ、じゃあ・・・・・・」


 おずおずと俺の体にシクルが抱き着いてくる。

 まだ抑えきれていないひんやりとした冷気と、シクルの冷たい体を感じる。

 というか、普通に寒い。


『・・・・・・なあシクル。別にお前に抱き着かれるのが嫌なわけじゃないが、少し寒いかな』

「・・・・・・ん? はっ! すすすまん!」


 シクルが焦って俺の体から離れる。


『で、もう大丈夫か?』

「あ、ああ。だい、大丈夫だ・・・・・・」


 と言いつつも、シクルは橋を渡ろうとせずに、まだこちらをちらちらと見てくる。


『まだ足りないのか?』

「い、いや! そんなことはないのだが・・・・・・」

『じゃあどうしたんだ?』


 いや、ないのなら行けと言いたいところだが、紳士な俺は言葉を選ぶ。

 まあ、紳士とは言っても犬なのだが。


「そ、そのだな・・・・・・。幹部ともあろう者がこんなことを頼んでもいいのか迷うところなのだが・・・・・・」

『なんだ、言ってみろ』

「そ、そのだな・・・・・・」


 ・・・・・・ちょっとイライラしてきた。

 いや、抑えろ俺。そんなことしたら癒しのケルベロスさんの好感度が駄々下がりではないか。

 まあ、このシクルもまだたしか十五歳という若さであった。いわゆる、まだまだ子供の幹部なのだから、大目に見てやらねばなるまい。


『いいぞ、なんでも言うがいい』


 何を言われようと前向きに受け取ってやろうじゃないか。

 何を言うのかと変に緊張している俺にシクルが頼んだのは、予想もしていなかった言葉だった。


「そ、その。魔王様に報告をするのはこれが初めてなのだ・・・・・・。そ、それで、ちょっと怖くて・・・・・・。よかったら、い、一緒に報告をしに行ってくれないかなと・・・・・・」


 ・・・・・・。

 予想外すぎて、内心俺はあきれてしまう。

 たしか、こいつは幹部になってから二年。今は十七歳のはずだ。そう。我々のように長く生きているものから見ればまだまだ若造。子供の域だとは思う。

 だけどな? それはな?


『お前、今まではどうやって報告してたんだよ・・・・・・』

「ぶ、部下に頼んで・・・・・・」

『だったら今回も部下に頼めばいいんじゃないか?』

「いや、もう幹部なんだし、自分で行けと部下みんなにそう言われて・・・・・・」


 それだけ聞けばかわいそうとかは思うけどさ、うん。まあ、部下もやっぱ上司の成長を望んでるんだねって前向きにとらえれるけどさ・・・・・・。


『お前だけで行ってこい』

「ええっ?!」


 年上の俺にできるのはその成長を促すことだけだ。


『お前ももう幹部歴も二年になるだろう? さすがにそれぐらいはできたほうがいいぞ』

「う・・・・・・。やっぱそうなのか・・・・・・」


 不安げな表情でうなだれる。


『ほら、行ってこい。俺が見送ってやるからさ。それに、魔王も怖いもんじゃないぞ? 普通に面白い、いい人だから、安心しろ』

「うう・・・・・・。わかった。もう人に頼るわけにはいかないもんな・・・・・・。はあ。」


 大きなため息を吐いて、前を向くシクル。


「じゃあ行くか・・・・・・」


 といいつつ、こちらをちらちらと見てくる。

 早く話を進めてほしいな。


『俺はもう何も言わないからな』

「わ、わかった・・・・・・」


 このやり取りを終え、やっと橋に足を踏み入れ、シクルが城に向かって進み始める。

 と、中ほどまで進んだところでまたシクルがこちらを振り返る。


『行ってこーい』


 適当に言葉を返すと、シクルがあきらめたようにとぼとぼと歩いていく。

 このぐらい厳しくしてやることも、彼女の成長につながるのだ。

 さて、俺は寝るかな・・・・・・。

 最初に寝ようと思ってからだいぶたったころ、俺はやっと昼寝に入った。




「ケルベロス様ーーーー!」


 耳元で大声でそう呼ばれた俺は体をびくりと揺らしながら起き上がる。


『な、なんだ。どうした』


 俺を起こした張本人である兵隊に動揺して噛みながらそう聞く。


「はい! シクル様が報告中に緊張のためか卒倒しまして! ケルベロス様なら起こせると魔王様の言伝で参りました!」


 卒倒・・・・・・。

 どんだけ心が弱いんだよ!

 それで、なんで俺なんだよ!

 俺は思わずそう叫びそうになった。 

 最後までお読みいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか? なんだか不思議なキャラがでてきましたね。コミュ障系幹部・・・・・・。

 大丈夫かな?

 では、次回もよろしくお願いします。


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