四十九話 番犬。任務内容を聞く
ジミー「うん? 今日は俺か。まあ言うことないがな。よければ最後まで読んでってくれ」
さっぱりした。
・・・・・・いや、これでは今回から入ってきた読者に何も伝わらないではないか。
前回、灼熱の地である、ロスト大陸の南。《永炎》に向かうと伝えられた俺は、母さんの考えにより俺の自慢の毛並みをカットされそうになった。だから逃げたのだが、結局捕まり・・・・・・。
「ふふふ。いいイメージチェンジになってるわよ」
すごい切られた。
・・・・・・この親は息子に容赦がないのか。バッサバッサと楽しそうに召使いと俺の毛を切りやがって・・・・・・。本当に恐ろしい。この母さんの説明はこの形容詞で事足りる。
「なかなか似合ってるっすよ!」
『似合ってても俺は嫌いだ』
だって、いつものあのふさふさがないんだもの。
それに、俺の隣の魔王が少し青ざめているしな。残念だったな親父。お前はしばらく俺をもふもふすることはできない! ・・・・・・そんな本気でしょんぼりするなし。
「ねえ、ママ」
と、今度は階段の上から声が。
この声と、カミラの呼び方は・・・・・・。
「あら、アイーダ。どうしたの?」
カミラと魔王の実の娘、アイーダ。
今日は白衣に身を包んだ研究者モードだ。そんなアイーダが俺を見て驚く。
「わっ! け、ケルベロス。ラブラドール・レトリバーみたいになってるわよ」
とても明確な比喩をありがとう。おそらく人間界の生き物だろう。見たことがある人はかなり想像がしやすいと思われる。
まあ、そんぐらい短く切られたわけだが・・・・・・。
『・・・・・・もう任務から逃れられないのか』
「ええ。切っちゃったものね」
本当にこの親は悪魔だ。鬼! 悪魔! 人でなし! あ、この人一応妖精だった。
まあ、もう腹をくくるか。
『・・・・・・わかったよ。で、内容は?』
「ええ。そのことはグレンくんに頼むわ」
「承ったっす! じゃあ、説明に入るっすね!」
グレンが生き生きとした表情で説明をはじめる。
「最近。永炎の中心部にぽっかりとでっかい穴が出現したっす!」
『なるほど。今回はそれの調査か?』
「そっちはもう終わってるっす! 中には、前に話された魔方陣が一個あったっす!」
ふむ。そこまで終わってるならば、俺は必要ではないじゃないか。一体、なんのために・・・・・・。
「それと、そこで《ファイア》に会ったっす!」
・・・・・・・・・・・・。
嫌な予感がしてきた。
『・・・・・・それは、五大凶王のか?』
「そうっす!」
五大凶王ファイア・・・・・・。サンド、アイスに続く三体目か・・・・・・。
うん。これは面倒なやつだな。
『ちょっとおなかが痛くなってきたんだが・・・・・・』
「あら。それは任務に対する緊張のせいね。やる気満々で母さん嬉しいわ♪」
やばいよこの人・・・・・・。他人の感情を読もうともしてないよ・・・・・・。しかも、もう後戻りできないようにしやがった。
これから悪魔ババアと内心で呼ぼう。いや、嘘です。なんか睨まれたんでやめます。
「あ、続きいいっすか?」
その問いかけに、俺は諦めたような目線を向けて先を促す。
「これが一番驚くかもっすけど・・・・・・。俺、ファイアと友達になったんっすよ!」
・・・・・・ん?
待て。今こいつはなんと言った? 五大凶王と友達? そんな馬鹿な・・・・・・。
「それでねケルベロス、あなたにお願いする任務は、ファイアとのコンタクトよ。凶王の洗脳を解くのに、あなたの力が必要って未来の人たちが言ってたものね」
確かに、それは言っていた。
まあ、すでに友好関係にあるならば苦労はさほどしないか。零雪原のときのように。
『・・・・・・わかったよ。じゃあ、しっかりと完遂させてもらう』
「助かるわ」
「よろしくっす!」
ちゃっちゃかと終わらせて、静かな秋に身を落としたいからな。
「あ、ケルベロス。永炎に行くのよね?」
階段の上からアイーダがそう聞いてくる。
『ああ。そうだ』
「だったら、一つ頼みたいのよ。ホットストーンをいくつか持って帰ってきて頂戴」
『わかったよ』
・・・・・・さらっと了解したが、自然とパシられたな。まあアイーダの頼みならいいか。
ちなみに、ホットストーンとは、名前の通り温かい石である。よく冬のカイロ代わりに使われる。
『じゃ、さっさと行こう』
俺はグレンの方を向いてそう言う。
「そうっすね! 俺っちも早く終わらせたいっす!」
『だな。じゃ、行ってくるよ』
「行ってらっしゃい」
グレンの魔法を唱える声が聞こえる。こいつ、脳筋に見えて実は魔法も使えるのだ。
俺は、魔王一家に見送られて永炎へと旅だった。
ジミー「最後まで読んでくれてありがとうよ。どんなもんだったか? そういえば、なんか最近客が増えたんだ。誰か宣伝でもしたか?」




