番犬。キノコを食す
マトイ「なんか久しぶりに前書きに来た気がするな。番犬祭ラストだ! よければ最後まで見ていってくれよ!」
鬼ノ子狩りを終え、俺たちは一度街に帰還して今は鬼ノ子改めキノコの実食中という名のバーベキュー中である。ややこしいなこれ。
そして俺も例にたがわず人化して松猛を口に運ぶ。松猛は、イメージとしては松茸と同じ。らしい。アイーダが言っていた。
「うま」
歯を押し返してくる肉厚さ。鼻を抜けるのがもどかしいほどの香り。舌を転がる旨味たち・・・・・・。
絶品の一言に限るな。
「で、お前も早く食べろよ」
「いや、わかってるけど・・・・・・」
そうさっきから渋っているのはマトイ。戦果的には上位に食い込むというのに、食べている量はちびっ子よりも下である。
「食わず嫌いはよくないぞ」
「子供扱いだな。・・・・・・くそっ! 食ってやるよ! 二足歩行だろうがな!」
二足歩行が何か関係があるのだろうか。別に二足歩行の魚人とかも食べるがな・・・・・・。
などと考えていると、マトイがパッと顔をあげた。
「・・・・・・うめぇ」
「だろ?」
「くそっ。人型のくせにいい味しやがる・・・・・・。神よ、お許しください・・・・・・」
何を神に拝んでいるのかは知らないが、まあ順調に食べ進めているならばほっといても大丈夫か。
涙を流しながらキノコを食べるマトイを後にして、俺はバーベキュー会場を歩く。
と、問題の起こっている一角を発見。
「おいシクル! お前消すなってさっきから言ってるっすよ!?」
「す、すすすまない! お、美味しすぎて興奮して冷気が抑えられず・・・・・・」
「勘弁するっす! ウィン。風をお願いっす」
「は、はい!」
集まっているのは、四人の幹部達。シクルと、グレンと、コミュ障疑惑のあるウィンと・・・・・・。珍しいな、極流の・・・・・・誰だったけか。名前を忘れてしまった。水属性だったんだが・・・・・・。誰か知ってるやつがいたら教えてくれ。
まあとりあえず、騒がしいあそこは置いておこう。
そう思って前を向くと、そこにはハブられている幹部が一人。
「パリス。ぼっちか?」
「もう少しオブラートに包むことはできないのかい? それに、僕はハブられてるわけじゃない、望んで一人になったんだよ」
ふーん。望んで一人に、ねえ・・・・・・。
「ほんとか?」
「ほんとさ」
「でも本当は?」
「・・・・・・何も無いけど」
「でもって本当はどう思って」
「くだらない茶番は終わりにしよう」
「すまん」
パリスの手の上に現れた黒い球体を目にして、俺は速攻で謝る。
「まったく。まあ、あの幹部達はみんな若いじゃないか。だから、僕が入る隙はないね」
そう言う横顔は、どこか寂しそうだ。
そう、まるで・・・・・・。
「歳をとったおばさんみたいなこと言うな」
「うるさいな。僕がババアだっていうのは自分でもわかってるよ」
「じゃあボクっ娘ロリババアの名でよんでいいのか?」
「・・・・・・ケルベロス♪」
「調子に乗った。怖いからそれをしまってくれ」
さすがにボクっ娘ロリババアとは呼べないか・・・・・・。だが、もっとも手っ取り早い説明なんだがな。
「あ、ケルベロス。と、パリスじゃない」
そう声がしてその方向を向くと、上品にお皿の上にキノコを乗せたアイーダがいた。
「やあ、お嬢様」
「その呼び方はやめて」
「じゃあキュートなお嬢様でどうだい?」
「そ、そんなのあんまり嬉しくないんだからね!」
なんかすごい典型的なツンデレを見せつけられた気がするが・・・・・・。
「アイーダも狩ったのか?」
「ううん。あたしは面倒だったからパスしたわ。だって、魔法が聴きにくい上に見た目が気持ち悪いから」
そうか? まあ感じ方は人それぞれか。
「そういえばパリス。ちょっと面白い魔法を思いついたから、今度少し付き合ってくれないかしら?」
「ああ。いいとも。どんな魔法だい?」
「ええとね・・・・・・」
研究の話をしだしたのを見て、俺はそっと会話の輪から外れる。俺にはついていけないし、俺がいても邪魔だろう。
・・・・・・少し引っかかるものがあるがな。アイーダはどんな研究をしようとしているのだろうか。
「番犬様や」
「ん? ああ。デイジーさん。どうした?」
「少し手伝って欲しくてのう。こっちに来ておくれ」
そうして俺はデイジーに呼ばれ一度会場を出て、夕暮れ空の下に出る。
欠点の無いように思える鬼族からの頼み・・・・・・。いったいなんだろうか?
ちょっとしたトラウマを思い出して不安になっていると、その不安はさらなる驚きでかき消される。
「キノコをまとめたいのじゃが、一人じゃちょいと大変でのう」
そこには、紅い陽の光に照らされたーー鬼ノ子の山と、その下に敷かれたふろしきがあった。
つまり・・・・・・。
「これを、縛るわけか」
「そうじゃ」
「これを持ってけるのか?」
「もちろん。ちょっと本気を出せば何ともないわい」
ちょっと本気を出せば・・・・・・。俺には到底持ち上げられない重量に見えるが、ちょっと本気を出せば行けるのか・・・・・・。
本当に鬼族は恐ろしいな。
俺は巨大化の能力を使って、丁寧にふろしきでまとめ、縛る。
「ありがとうのう。じゃあわしはこれで」
「もう帰るのか?」
「ほっほ。老獪には家族と食べる飯が一番なのじゃよ。ではな」
「じゃあな」
そしてデイジーが重い荷物を背負ってーー跳んでいった。
恐ろしいな。老獪なんてものじゃないじやないか。
「はー。デイジーはまだまだ現役じゃねえか」
急に真横で聞こえた声に俺は大きく体をびくつかせる。
「お、親父か」
「おう。親父だ」
禍々しいオーラを引っ込めた紫肌の大きな男。それが魔王である。そして同時に、俺を育ててくれた親父でもあるのだ。
「母さんと食べてこなくていいのか?」
「カミラは今お友達の婦人方と会話中だ。むさ苦しい大男はいらないとよ」
そりゃ残念だったな。まあ母さんもいつも忙しそうだし、たまには友人と話したくもなるか。
「それにしても、お前も成長したな」
「なんだ、今頃」
「だって、ちょっと前まで城の前で寝てるかもふもふさせるだけの犬っころだったのに、今や人方になるわ任務をこなしてくるやら・・・・・・。ちょっと寂しくなっちまうよ!」
急に息子の成長を実感する親みたいなこと言われてもな・・・・・・。あ、こいつ俺の親か。
だがまあ、考えてみればそうだな。ちょっと前までぐーたらしてばっかりだった。
「俺的には前の方がいいがな」
「そうか? 親父としては今と昔を足して二で割ったぐらいがちょうどいいぞ」
それは遠回しに少しは仕事をしろと言っているのか。嫌だぞそんなの。昼寝の時間をとられてたまるか。
「ま、ちょうど良い褒美にはなったか? 今回の鬼ノ子狩りは」
「まあ食欲の秋だし、少し楽しみにしてたところはあったからな。普通に楽しかったよ」
「なら良かった」
そう言って笑う親父。こういうところを見ればまともなんだがな。少しテンションが高いともったいないことになるんだよ。
まあそこも含めての親父だが。
「じゃあ俺は会場に戻るか」
「お、じゃあその前にもふらせてくれよ」
「いやだむさ苦しい」
「お前にまでむさ苦しいと言われるか・・・・・・」
ショックを受けて棒立ちになる親父を置いて、俺は会場へと戻る。
しかもよくよく考えれば俺は今人の状態じゃないか。わざわざ解くのも面倒だ。
その日は夜中までパーティーのように騒いで食った。
そして酔ったパリスに人化を解く魔法を掛けられてもふられたことになったことは触れないでおこう。
マトイ「最後まで読んでくれてありがとうな! どうだった? 二足歩行を食べるのは気が引けるな・・・・・・。じゃ、またな!」




