番犬。キノコ狩りへ向かう。
ケルベロス「やあ、今回は番外編。それと番犬祭の一話目だな。よかったら見ていってくれ」
零雪原から帰還してはや二ヶ月。
その間。いつも通りマトイにちょっかいをかけたり、久しくもふもふさせてなかった魔王軍の部隊長にももふらせてやったりペンの話をしたりしていた。
そして、気づけば季節は秋へと移り変わる。
ああ、四季があることはつっこまないでくれ。あと時々のメタいネタも許してくれ。
ごほん。話を戻そう。そう、秋である。
春とは違う涼しい風。ほんのりと香る落ち葉の香り。秋晴れの澄み渡った空――
まではいいんだけどな。
「諸君! よくぞ集まってくれた!」
そう声を張り上げるのは、俺の親父のような存在であり一応魔王の魔王。本名は知らん。
そんな魔王の間には今、たくさんの人々が集まっている。
俺と、魔王軍幹部のシクルとパリス。あとさらっと初登場の魔王軍、炎のグレンと風のウィンとかもいるがその話は置いておいて、巨人族のベルとジミーにマトイ、鬼族のデイジーまで。あといつぞやのちびっ子もいるな。
あとは俺がもふらせてやったことのある町民やらもいろいろと、まあ大勢が集まっている。
「季節は秋へと移り変わった・・・・・・。皆、思い思いにそう感じていることだろう。そして、この呼び出しの意味もわかっているはずだ!」
魔王がそう力強く言い切り――
「あ、すんません。俺わかんないっす」
俺の隣のマトイの声でズゴッとこけた。
『なんだ。お前魔王街に住んでから何年だよ。六十年とかだろ?』
「そ、そうなんだけどよ。今までそんなイベントあるとか知らなかったし・・・・・・」
親父のやつ、教えてなかったのか。気の毒に。
『素晴らしいイベントだぞ』
「気になるなぁ」
「では、説明をしよう」
魔王が大げさにマントを翻し――ただけでなにもせずに語り出す。
すごいツッコミたかったけど我慢するか。
「今回のイベントは――ずばり、キノコ狩りである!」
おおぉ。と小さく歓声が上がる。いや、お前ら毎度参加してるだろ。なんだその演出。
「キノコか。それなら俺も地元でやったことあるが――」
「いいや、マトイ。おそらく貴様の想像しているそれとは全くもって違うぞ?」
にやり、と魔王が口の端をゆがめ、また説明をはじめる。
「キノコとは! あの菌類の美味しいものではない! 秋に《魔津の木》より出でし《鬼の子》! そう、これこそが――鬼ノ子である!」
「・・・・・・どういうこと?」
マトイが頭の上にはてなを浮かべて尋ねてくる。
やはり無駄に演出にこった親父の説明ではわからなかったか・・・・・・。
『まあ簡単に言うとだな。キノコの魔物だ』
「キノコの魔物?!」
『ああ。倒せば美味しいが案外強いぞ。・・・・・・お前戦えるのか?』
前に一度、こいつは剣も魔法も使えない(四話参照)と言っていたが・・・・・・。
「あ、剣も魔法も使えなくても拳があるからな!」
『勇ましい限りだな』
マトイが納得した様子を見て、魔王も次へと話を進める。
「で、だ。今年の出現状況だが――喜べ、松猛の大豊作だ!」
うおおぉ! と今度はさっきよりも喜びの声があがる。
・・・・・・松猛の大豊作か。なかなかいい年じゃないか。
「・・・・・・松猛ってなに? 人名?」
『松茸みたいな魔物だ。多分お前の想像通りだよ』
元の松茸に足と手をはやして巨大化させたらそれで松猛の完成だ。ちなみに、こいつはものすごく美味しい。そりゃもうびっくりするほど。
「制限時間は本日の日没まで! それまで存分に暴れろ! 狩れ! 狩った分はてめえのもんだ! さあ、向かうぞ!」
ぶわんと音を立てて、魔王の横に大きな魔方陣をアイーダが展開する。
「いざ! 《大森林》の中へ!」
鬼ノ子に飢えた人々が、魔方陣へとなだれこんだ!
ケルベロス「最後まで読んでくれてありがとう。どうだったか? あとの二本は、十九時と二十一時投稿だ。よければそっちも見ていってくれよな」




