表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/137

四十六話 番犬。報告をする

ケルベロス「やあ。今回は俺だ。やっとあの寒いところからおさらばできたな。じゃ、本編だ」

 光が晴れて、目を開けるとそこは見慣れた城の橋の前。俺の小屋がある番犬の持ち場。

 だが、どこか久しぶりに見た気がする。四ヶ月ぶりぐらいか? 本当は四日ぶりぐらいだが。

 というか、想像以上に早く終わったな。たった四日しか経ってないのか。まあ、かなり濃縮された四日だったが。

 そして、俺は橋を渡って城に向か


「ちょっと待ったー!」


 バーンと音が鳴るぐらいに勢いよく開かれたのはーー俺の小屋の扉。

 そしてそこから出てきたのは・・・・・・。


『知らない人だな。新キャラか?』

「違うぞ?! 俺だ!」

『誰だ』

「魔王だけど?!」


 ああ。そういえばそんなキャラもいたっけなぁ・・・・・・。

 まあ忘れられたぐらいだから別に大したキャラじゃないんだろう。


「待って。お前の目的がここにいるんだけど。俺に報告するんじゃないの?」

『ん? 母さんに言った方が効率的かなって』

「親父の扱い酷くない?!」


 なんかそんなセリフも昔聞いたことあったっけなあ・・・・・・。


『まあ茶番はこんなもんでいいか。報告いいか?』

「お、おう。急に真面目になられると困るんだが・・・・・・」


 知らんがなそんなもん。まあ、さっさと済ませようか。


『まず、雪山の調査報告だが。出現原因は不明だ。ま、問題は他にあってな』


 俺は一つ一つ思い出しながら説明する。


『その雪山の中には魔法陣があった。中には入らなかったが、推測するにそれは魔王街の郊外に出現した洞窟と同じで、《アイス》の元に繋がっていると見られる』


 きっとあれに入れば、すぐにシクルの元に行けたのだろうとも今思ったが、まあ別にそれはいい。


『で、その途中で未来から来たと言う二人組に出会う。片方の女はダイア。もう片方は名前のわからん男だ』


 未だ未知の多い二人組。きっとこれからも俺に関わってくるのだろう。


『そいつらの話によれば、五大凶王が何者かに洗脳され、魔界が滅亡するらしい』


 真偽の程は怪しいが、信じる他ないだろう。雪山と洞窟の件がある。


『で、最後にアイスとの邂逅だ』


 最も重要な報告。


五大凶王アイスと出会った。形状的には巨大な亀のような形をしていたな。まあ何事も無く、・・・・・・いや、やっぱりある。パリスの野郎が人化の薬を飲ませやがった・・・・・・。今は幼女化したアイスをシクルとパリスが面倒を見てる。以上だ』


 ・・・・・・こんなものか。

 なんとか噛まずに言えた。

 と、不思議なものを見る目で俺を見る魔王と目が合った。


『・・・・・・なんだ』

「お前、まともに報告できたんだなって」

『子供扱いすんじゃねえよクソ親父』

「クソ?!」


 そうショックを受けたようにうずくまる魔王を横目に、俺はため息を吐いて城の方を向く。

 まったく。帰ってきた途端にこれだ。驚きを通り越して呆れてしまうじゃないか。


『ま、いつも通りって感じだな』


 でも、楽しいな。こういうやり取りは。

 ・・・・・・いけない。四ヶ月も経つとこんなことでも感慨に浸ってしまうのか。気をしっかり保たねば・・・・・・。

 あとは、母さんに報告すればいいか。


「お帰り。ケルベロス」


 ・・・・・・タイミングがいいな。ほんとに。


『ただいま。マミー』

「ほんとに不思議な呼び方をするわよね。普通に母さんとかでもいいのよ?」

『今更恥ずかしいな。子供の時からの癖だ』


 なぜかこの呼び方がしっくり来てしまったのだ。


『ま、母さんって呼んでおこうか?』

「ふふ。どっちでもいいのよ」


 そう微笑むマミー・・・・・・母さんは、俺を見つめてまた笑う。


「初仕事。どうだった?」

『初仕事のくせして難易度が高すぎるな』

「それは不確定要素が多かったから仕方ないわよ。でも、しっかりやりきってくれて私は嬉しいわよ」


 そう言って俺の頭を撫でてくる母さん。

 ・・・・・・なんだか、こうされているだけで癒される。それに褒められて単純に嬉しい。

 まるで甘えん坊みたいじゃないか。齢三百歳の番犬のくせして。


「全部聞いてたから、あとは私たちの出番ね。あなた」

「ん? ああ。そうだな」


 二人が横に並ぶ。


「その未来から来た者達の話、俺達も聞いた」

『そうなのか?』

「ええ。そうよ。でも、多分ケルベロスの会った二人とは違う人ね。名前をリースと言ってたかしら」


 リース。確かに聞いたことがない。


「私たちも今、その犯人の特定と五大凶王との対話を試みてるのだけど・・・・・・」

「どうしてなかなか、現れてくれなくてな。無の砂漠に行ったが、サンドは現れなかった」


 あのサンドが? それは、かなり洗脳が進んでいるのか、それともサンドが制御して抑えてたのか・・・・・・。


「私たちも私たちなりに頑張るわ。だから、ケルベロス。あなたも頑張ってね」

『俺のことも聞いたのか』

「聞いたぞ? 魔界の救世主になるんだろう?」


 なんだか余計な名誉を受け取ることになりそうだな・・・・・・。

 だが、俺にしかできないと言ってたし・・・・・・。


『・・・・・・ま、それなりに頑張るよ』


 そう返して、俺は小屋へと向かう。

 なんだかいろいろあって疲れてしまった。安心したからか? まあ、それでもやはりーー


 魔王街っていうのは、いいところだ。


『おやすみ』

「ゆっくり休みなさい」

「おやすみ、なんて久しぶりに言うがな。おやすみ」


 ・・・・・・気が変わった。

 俺は、橋の前で丸まって、騒がしい魔王街の音に耳を澄ます。その雑音も、どこか心地よい。


 そして、寝ている俺の毛並みを誰かが触るのだろう。きっと。

ケルベロス「最後まで読んでくれてありがとな。どうだったか? こう、仕事を達成するのも気持ちのいいものだ。・・・・・・まあ、働かないのが一番楽だが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ